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ティモンディ前田裕太「サンタクロースが怖い」【僕のあまのじゃく#72】

  • 2022.12.25

僕のあまのじゃく#72

ティモンディ前田裕太さんの人気コラム【前田裕太の乙女心、受け止めます!】がリニューアル。

◁◁

ガラリと雰囲気を変えて、毎週変わるお題に沿って、前田さんに自由に言葉を紡いていただくフリースタイルエッセイ【僕のあまのじゃく】をお楽しみください♡

前田裕太(まえだ・ゆうた)
PROFILE:1992年8月25日、神奈川出身。グレープカンパニー所属のお笑い芸人ティモンディのツッコミ、ネタ作り担当。愛媛県の済美高校野球部に所属した同級生・高岸宏行が相方で、2015年1月に結成。2人の野球経験を活かした『ティモンディベースボールTV』の登録者数は23万超え。ar web連載『僕のあまのじゃく』では、フリースタイルエッセイを毎週お届け中。

テーマ:クリスマス

人肌恋しい季節だなんて言葉があるけれど、本当にそうだろうか。

単に気温が低いだけだろうに。

人の肌に触れたいのであれば風呂場で自分を抱擁すれば良いではないか。
寂しさの自家発電だ。

元来、クリスマスは恋人と過ごす文化ではないのだ。
気に食わない。
back numberや数多のアーティストがクリスマスソングで愛だ恋だ歌っているけれど、世間の風潮に惑わされるべからず。

そんなクリスマスに、キリストと何も関係のない恋人たちが贈り物をし合っているのも意味が分からない。
気に食わない。

本来贈り物を渡し合う風習は、キリストが生まれたときに東方の三賢人が異国から贈り物を持ってやってきたことに由来するらしい。
そりゃ誰かが生まれたら贈り物を渡すのは当然だ。
私の誕生日を祝うなら私にプレゼントを渡すべきだし。
ただ、キリストを崇拝してもいない人達同士での物の贈呈をし合うのも許容しかねる。

浮つくな!

クリスマスは最高の日、なんて時もあった

その点、サンタクロースが子供にプレゼントを贈る風習というのは、ルーツから見ても符合しているものであって、良いと思う。

小学生の頃だ。

クリスマスは、何故がサンタさんが家に来てプレゼントを置いていくし、何故か家族でケーキも食べれるビッグイベントだった。

当時、欲しいと思っていた物のうちの何かが起きると枕元に置いてあるのは嬉しかった。

クリスマスは最高の日で、毎日でも来てほしいと思うハッピーデイ。

ただ、私は親から「タダより高いものはない」ということを言われたことがあった。

お金を払って得たものは、対価であってお互い対等なまま。

けれど無料で物を貰った場合、金銭には代えられない”恩”と呼ばれるものを背負うことになる。
こちら側が何も提供していないのに何かを貰うならば、同等だと思えるようなものや行為を返さなければ、報いたとは言えない。
受けた恩は返せ、という教育を受けてきて、それは私のアイデンティティを形成する上で大きな要素の1つになった考え方だけれど、裏を返せば”タダで物を気軽に貰うな”気をつけろ、という意味にもなる。
その、タダより高いものはない、という言葉が印象的で、未だにその言葉を思い出したりすることがある。

そういう意味で、何もしていないのに毎年律儀にプレゼントを置き続けてくるサンタクロースは、ある意味で怖かった。

何故サンタは見返りもないのにプレゼントを渡しにくるのか親に疑問を投げかけると「裕太が良い子にしていたからだよ」と私に言った。
けれど、サンタクロース本人がどういう意図で贈り物を渡してきているか分からないと思って納得はできなかった。
別に私の誕生日でもないのに。

いつか、忘れた頃に赤い服装をした大男たちに囲まれて「さあ、精算の時間だ」と告げられ、ソリに設置された鉄格子に閉じ込められてトナカイで運搬されるのではないか、と恐ろしく思ったことがある。
何せタダより高いものはないのだ。

小学3年生のクリスマスの朝、枕元にピカチュウのぬいぐるみがあった。

当時はゲームボーイのポケモンを気が狂うほどやっていた当時の私からすると、喉から手が出るほど欲しかった物。
それが、別に何をした訳でもないのに枕元に置いてあった時、いよいよ怖くなった。

こんなことが、対価なしに貰えるなんて考えられない。

お年玉は、親戚の人が「私があげたくてあげているんだよ」と言ってくれたけれど、サンタの内心は分からない。
分からないことは恐ろしいし、何よりタダでこんなものが貰えるなんて恐ろしい。

隣を見ると、まだ寝ている弟の枕元にもマリルというポケモンのぬいぐるみが置いてあった。

そこで閃いた。

今年のサンタさんのプレゼントはパスさせてもらおう、と。
当時は利子という言葉を知らなかったけれど、借りをずっと作っている状態が健全ではないというのはなんとなく分かっていた。
借りを増やすのはこれでおしまいだ。

そう思って、こっそりと自分のピカチュウを寝ている弟の枕元のマリルの横にそっと置いた。

これでサンタの悪魔から脱することができる。

その分、弟は私の借りまで背負うことになるけれど、それはもう私の弟に生まれて運が悪かったと思ってもらうことにしよう。
ごめん、私の代わりにサンタに拉致されることになるかもしれないけれど、許してくれ。

親に「今年はサンタさん、弟にプレゼント2つあげたんだね」と言うと、それはお前の物だよ、と言われて、サンタからの呪縛からは逃れられないのか、と絶望したのを覚えている。

こう考えると、子供にサンタクロースがプレゼントを贈る文化は、良いものとは思えないな。
クリスマスの文化は無くなるのが一番だ。

読者諸兄姉は、もし今後私が失踪した時は、とうとうサンタの精算を迫られたのだと思っておいてもらいたい。

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