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ウソorホント? 「ローズヒップティーは風邪に効く」説の真相

  • 2015.11.11
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こんにちは。エッセイストでソーシャルヘルス・コラムニストの鈴木かつよしです。

ついこの間まで半袖のシャツで仕事をしていたことが信じられないくらいめっきり寒くなった今日この頃。 筆者の周りにも風邪をひいてしまい、ツラそうにマスクをしている方が大勢いらっしゃいます。

ところで、毎年この季節になると思い出すのが一昔ほど前にマスコミを通して大流行した、「ローズヒップティーを飲むと風邪を予防できる」という説です。結局その真偽のほどは紹介されないままローズヒップブームの終息とともに聞かれなくなってしまいましたが、本当はどうだったのでしょうか?

●そもそもローズヒップティーが風邪に効くと言われるようになった理由とは?

筆者の記憶では2002年の秋ごろから2003年にかけて、わが国では明けても暮れても“ローズヒップ”という言葉を聞かない日はないくらい、テレビやラジオがローズヒップの効用について取り上げて紹介していました。

そういったいわゆる“ローズヒップ神話”の論点は、大きく言って3つの点に集約されていたように思います。

1……美肌効果ならびにアンチエイジング効果

2……ダイエット効果

3……免疫力アップによる風邪などの感染症予防効果

以上の3点です。

このうち、2の“ダイエット効果”についてはローズヒップティーに含まれる“ティリロサイド”というポリフェノールの成分を摂取することによる内臓脂肪や皮下脂肪を減らす“脂肪減少効果”をその論拠とするものですが、1の美肌効果と3のウイルス感染症や細菌感染症を予防する効果については、ローズヒップに多く含まれる“ビタミンC”の存在をその論拠としたものであったように思います。

つまり、“ローズヒップ神話”は裏を返せば“ビタミンC神話”もであるとも言え、その背景には1954年にノーベル化学賞を、1962年にノーベル平和賞を受賞したアメリカ合衆国の生化学者で医療研究者のライナス・ポーリング博士の存在があります。

ポーリング博士が1970年代以降に主張した『分子矯正医学』の代表的な療法である『メガビタミン療法』では、ビタミンCを大量に摂取することで免疫力が高まり、風邪もがんも治せるというユニークな理論を展開したわけです。そのことが記憶に新しい欧米社会では、「ビタミンCを豊富に含んでいるローズヒップティーを飲むことで免疫力を高め風邪を予防しがんさえも治せる」といった“都市伝説”が定着したと考えられます。

●では、本当はローズヒップティーを飲んでも風邪に効果はないのでしょうか?

それでは、本当のところ、ローズヒップティーを飲むと風邪を予防できるのか、それともそのような説は根も葉もないでたらめだったのでしょうか。この問題に関して、大阪で美容外科クリニックを開設する医師の西川浩氏という方が興味深いコメントをされています。

『(ポーリング博士が1994年に93歳でなくなって以降)医学界の趨勢としては、ビタミンCを摂取しても風邪の予防にはならないと結論付けられてはいます。ただ、日頃から1グラムくらいの大量摂取をしていたり、風邪の引き始めに大量に摂取すれば、平均して半日ほど風邪が早く治るとされています。

(中略)ポーリング博士ほどの科学者ですから、論理的には筋が通っていることを主張されてたと思います。(中略)一般の人にビタミン摂取によるセルフケアというか、医者に頼らずに自分の健康を守るという意識を芽生えさせたことは、(ポーリング博士の)大変な功績のようにも思えます』(西川浩・美容外科医師/心斎橋中央クリニック院長)

ビタミンCを豊富に含んだローズヒップティーをたくさん飲むように心がければ、風邪の“予防”ではなく風邪の“治療”に一定の効果があるという説は、論理的には正しい、ということになりますね。

さらに西川医師はこのようにもコメントしています。

『農林水産省の外郭団体が発表しているのですが、成人の血中のビタミンCの濃度を、だいたい、35%上げるのに、リンゴであれば、1.5個(含まれるビタミンCは約3.2mg)必要で、サプリメント(アスコルビン酸)であれば、なんと、500mg必要になると言うのです。驚くべき効率の差なんです。(中略)だから、(ビタミンCは)野菜や果物、要するに食べ物から摂取しなければならないということですね』(西川浩、前出・美容外科医師)

つまり、ビタミンCをサプリメントで摂取するよりも、ビタミンCを豊富に含んだローズヒップの実を食べたりローズヒップをお茶にして飲んだりして、食べ物・飲み物からビタミンCを摂取する方が、うんと効率よく血中のビタミンC濃度を上げることができるということですね。

●正しくは「ローズヒップを飲む(食べる)と風邪の治りをある程度早めることができる」

日本食品分析センターによると、ローズヒップが100g中に含有するビタミンC成分は942mgで、ゆず(果皮)の150mg、アセロラジュース(10%果汁)の120mg、レモン(全果)の100mgをはるかに上回っています。しかもローズヒップはその豊富に含有するビタミンCがビタミンPによって守られているために加熱されてもビタミンCが破壊されにくいという特徴を持っているため、お茶にして飲んでもビタミンCがたっぷり摂取できるというわけです。

ひと昔前に大流行した「ローズヒップティーを飲むと風邪を予防できる」という都市伝説は、「風邪のひき始めにローズヒップティーをたっぷり飲めば、風邪の治りを早めることができる」というふうに言い換えるのであれば、「本当だった」と言ってもいいのではないでしょうか。

●ライター/鈴木かつよし(エッセイスト)

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