1. トップ
  2. ライフスタイル
  3. 「大量の紙袋と釘3000本…」実家の親が、ため込んだ不用品をあっさり手放してくれる"キラーフレーズ"

「大量の紙袋と釘3000本…」実家の親が、ため込んだ不用品をあっさり手放してくれる"キラーフレーズ"

  • 2022.12.21

高齢の親が家にため込んだ不用品を片づけるにはどうすればいいか。お片づけ習慣化コンサルタントの西崎彩智さんは「捨てようね、というアプローチはお勧めしません。反対に、『何を残そうか』と声をかけてみてください」という――。

買いだめしている大量のトイレットペーパー
※写真はイメージです
片づけられない人は不安感が強い

前回は実家の片づけについて、お話ししました。実家の片づけに悩む方には「自分も片づけられないけれど、親もとんでもない。大量に物をため込んで片づけが進まない」と話す人が多いですね。

実際、目白大学の研究(※)でも、親の片づける姿勢は子どもに大きく影響を及ぼすことがわかっています。つまり片づけられない親の子どもは、高確率で片づけられない。育った環境がそうさせているということです。

※目白大学心理学研究第14号「大学生の片づけ行動に及ぼす両親の影響―片づけ要求と片づけ態度からの検討―」(2018.3)

ただ今の70~80代、戦中戦後生まれの親は、物がない時代に育ったので、物をたくさん持つことが豊かであるという価値観で生きてきた人が多い。そういう人が年をとると、物がなくなることに対する不安感が非常に強くなるのです。

12ロール入りのトイレットペーパーが10個…

私自身の話をすると、両親ともに施設に入り、空き家になった実家を片づけていたら、12ロール入りのトイレットペーパーが10個以上出てきました。

実家は2階建ての7LDK。ウォークインクローゼット、物置、倉庫のある家に、2人で暮らしていました。

田舎なので、いちばん近いコンビニエンスストアに行くにも車で5分かかる。スーパーにも車でしか行けないので、ないと困るし、あっても邪魔にならないということで、トイレットペーパーの買い置きが山ほど出てきたわけです。

そのほか、ボックスティッシュやラップ、ビニール袋などのストックも大量に出てきました。

買いだめする親の根底にあるのは、体の調子が悪くなったら買いに行けないから、今のうちに買っておかなきゃという不安感です。片づけられない人は、やはり不安感が強いのです。

結局、トイレットペーパーやボックスティッシュなどかさばるものは、近所の人に配りました。ラップなどは持って帰って、最近ようやく使い切りました。

3000本の釘、毎日打ったとして何年で使い切る?

弊社のスタッフの話です。お父さんはDIYが趣味。実家に帰ったら、釘が3000本ぐらい出てきました。これはいい釘だ、というものに出合うとつい買いたくなるようです。

「お父さん、その釘、毎日打ったとして何年で使い切る?」って聞いた瞬間、お父さんはその釘を一気に処分したそうです。

数値化すると、本人にも自覚が芽生えるようですね。

実家に、大量にあるものといえば紙袋。誰かに何かをあげるためにとってあるけれど、いったい何人にあげるの? というぐらいたくさんある。

ストックしてある紙袋
※写真はイメージです

来客用のティーカップや座布団もそうですね。うちに何人来るの? 法事をうちでやる予定ってないよね?

そんなふうに数字で考えたときに、片づけはスムーズに進みます。

片づけている高齢者は生活の質が違う

「片づけはコミュニケーション」ですから、ぜひ実家の片づけは親と一緒に進めてほしいです。でも片づけようと言うと、親は死を意識して拒否感を示すのはよくあること。あとから、やるから放っておいてと。

そうでなくても親の物が多すぎたり、片づけても親がまた買ってきたり、実家の片づけというのは、往々にして進まないのが現実です。

とはいえ親が元気なうちに、ある程度片づけておかないと困るのは子どものほう。前回もお話ししたように、遺品になると捨てにくくなるからです。

そこで親への説得として効果的なのが、親に人生のステージが変わったことを伝えることです。生前整理で物を捨てることを押しつけるのではなく、暮らしをコンパクトにサイズダウンすることのメリットを伝える。子どもは、その手伝いをするというスタンスを示します。

実際、片づけている高齢者と片づけていない高齢者の生活の質は、明らかに違います。

家が片づいていないと、洗濯物を遠くに干したり、必要な物が見つからず、うろうろしたり、やることがいっぱい。人を呼べる状態ではないので、どんどん孤独になってしまう。「おじいちゃんとおばあちゃんの家は、汚いからイヤ」と孫が行きたがらないという話もよく聞きます。

また、どこにどんな食品を置いたかわからず、それを探すのが面倒くさくて、ちゃんと食べなくなる。生活環境や栄養状態が悪化しているのに、それを改善しようとしない「セルフネグレクト」は、まさに片づけられない人に、あてはまる言葉なのです。

一方、片づけていると、ムダな時間が減って、やりたいことが実現できるし、健康に割く時間も増える。人が集える家になって、地域の交流も増えていきます。良いことずくめなのです。

捨てるかどうかの選択権は親にある

ただし親に対しては、そのメリットを伝えるだけでなく、大前提として心に留めておいてほしいのは、親の気持ちに寄り添うこと。やはり体調のこともありますし、生まれ育ったバックボーンも違うので、私たちの基準で進めてはいけないということです。

基本は親の話を聞いてあげる。「何か困ったことはない?」「困ったことがあったら言ってね」というのが第一歩です。そのうえで効果的な声かけをご紹介しましょう。

【図表】実家の片づけOKワード&NGワード

親に無理強いさせないために、まず「座ったままでいいよ」と声をかけます。またポイントは「捨てよう」ではなく「残そう」。たとえば同じようなフライパンが出てきたら「これ、どっちが使いやすい?」と聞くと、必ずどちらかを選びます。何を残すかを検討するための選択肢を提示することがポイント。

また近所なら「うちも粗大ゴミを出すけど、一緒に出すものある?」と言えば、ゴミが出しやすい。さらに、今は使わない仕事道具などが出てきたら「お父さんが頑張った証だもんね」といったん褒めて、手放してもらう。

「じいじのかっこいい服は残そう」。これも残したい物を選ばせるための声がけです。

これらは、すべて選択権は親にあり、何を捨てるかは親に委ねるための言い方になります。

親子で話し合い
※写真はイメージです
絶対に言ってはいけない4つのワード

反対に絶対に言ってはいけないNGワードもあります。

実は私も親に対して「お風呂が汚い」と言ってしまって失敗しました。でも親は、もう目がよく見えていなかったんですよね。また「あとに残る人が困るから処分してよね」というのも言ったことがあり、寂しそうな親を見て、言ってはいけなかったと深く反省しました。

他にも、「押し入れや引き出しを開けることはないでしょう」とか、「二人暮らしなのにこんなに持ってどうするの」などもNG。逆の立場だったら、そんなことを言われたら心がかたくなりますよね。

実家の片づけは親が楽に生きるため

子ども自身が「最後の後始末は、自分がしなければいけない」と強く思いすぎると、言ってはいけないことまで言ってしまうので、気をつけたいものです。

実家の片づけは、今生きている親がより楽に生きるため。ですから捨てるのではなく、何を残すかを互いに話し合うことがいちばんです。

ただし片づけは体力がいるので、子ども一人でやろうとしないこと。きょうだいや自身の子どもにも手伝ってもらいましょう。また過去の蓄積があるので、一度にやろうとしないことも大切です。

繰り返すようですが、片づけは最高のコミュニケーションツールです。ぜひ親子で思い出話をしながら楽しく片づけてほしいと思います。

構成=池田純子

西崎 彩智(にしざき・さち)
お片づけ習慣化コンサルタント Homeport代表
1967年生まれ、岡山県出身。大学卒業後、住宅メーカーのインテリアコーディネータとして従事。結婚し、20年専業主婦を経験したが離婚。その後はヨガスタジオの店長としてスタジオに通う多くの女性のさまざまな相談に応じる。2015年、得意の片付けを生かして起業。お片づけ習慣化強化講座「家庭力アッププロジェクト」修了生は全国で1500名を上回る。

元記事で読む
の記事をもっとみる