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58歳おひとりさま・貯蓄500万円…年金は60歳から受け取って大丈夫?

  • 2022.12.17
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年金をもらう年齢が近づいてくると、老後のライフプランが気になる人も多いでしょう。公的年金の受給は基本的には65歳からですが、最短で60歳からの繰上げ受給や最長で75歳までの繰下げ受給も選べます。しかし、年金で生活費をまかないきれなければ、不足分は貯蓄を取り崩すことになります。

60歳以降に独身の女性が年金を繰上げ受給して生活するのは可能でしょうか。公的なデータをもとに試算してみました。

■58歳独身、貯蓄500万円の女性の場合

58歳の独身で貯蓄500万円の女性の例を考えてみましょう。この女性が60歳で仕事を辞めて年金を繰上げ受給するとしたら、どのような資金繰りになるのでしょうか。

●繰上げ受給の年金はいくら受け取れる?

年金を繰上げ受給すると、繰上げた月数に0.4%を乗じた減額率で年金額が計算されます。60歳から受け取る場合の減額率は24%で、65歳からの月額が7万円の人なら5万3,200円に減ってしまい、減額された年金額は一生涯変わりません。

厚生労働省の『厚生年金保険・国民年金事業年報(令和2年度)』によると、厚生年金を繰上げ受給した女性の平均年金月額は6万5,434円(国民年金含む)です。国民年金だけの場合、男女別のデータがありませんが、繰上げ受給全体の平均受給額は4万3,371円に減ってしまいます。

●老後の生活費はいくらかかる?

受け取る年金額に対して、生活費はいくらかかるでしょうか。

総務省の『家計調査/家計収支編(単身世帯)2021年』によると、60歳以上の女性単身世帯の月あたりの消費支出の平均額は14万2,606円でした。そのうち、住居費は1万3,824円です。

女性の単身世帯の持ち家率は60歳以上では50%を超えるため、住居費には家賃が含まれていないと考えたほうがよいでしょう。老後に賃貸住宅で暮らすつもりの人は、家賃分の見積もりも必要です。

●年金だけではまかないきれない生活費はいくら?

年金収入と支出から、毎月の収支を見ていきましょう。

国民年金を60歳から受け取る場合の収支は▲9万9,235円、厚生年金と国民年金を60歳から受け取る場合は▲7万7,172円です。

この不足分を500万円の貯蓄から充当すると、国民年金だけならば約4年(50.3ヵ月)、厚生年金と国民年金の両方ならば5年超(64.8ヵ月)で底をつきます。

■年金の繰上げ受給が大丈夫かNGかは条件による

上記の試算は、60歳以降は働かず、年金と貯蓄の取り崩しだけで生活するという前提で行なっています。その場合は、数年で貯蓄が底をつく結果となったわけですが、60歳以降も働いて収入を得られれば結果は変わります。

●収入が多すぎると年金がカットされる

定年以降に働くとしても、厚生年金に加入して働く場合、年金月額と賃金月額の合計が47万円を超えた分の金額の半分が年金月額からカットされます(国民年金は全額支給)。

たとえば、毎月受け取る厚生年金(基本月額)が10万円で総報酬月額相当額(賞与も含めた年収の12分の1)が40万円の場合、1万5,000円が支給停止になります。繰上げ受給で減額された年金の一部がカットされるのは避けたいところです。

パートなどで厚生年金に加入せずに働くならば支給停止にはならないので、繰上げ受給するならば働き方の選択も重要です。

●繰上げ受給後に障害者になると障害年金を受給できない可能性がある

年金の繰上げ受給は取り消せないため、さまざまな注意点があります。

その中でも特に重要なのが障害年金の請求です。繰上げ請求をした日以降は、事後重症などによる障害年金の請求ができません。事後重症とは障害認定日に症状がなかった人が後から状態が悪化してしまうことで、通常は障害年金の等級に該当したときから請求できます。

そのため、持病のある人などは繰上げ請求について慎重に検討する必要があります。

■さまざまなパターンをシミュレーションしてみよう

60歳近くになると、年金をいつから受け取るか、いつまで働くかを真剣に考える人が増えます。まずは、自分の希望するプランを考え、実現可能かシミュレーションしてみましょう。

たとえ実現できない場合でも、優先すべき点と譲れる部分を検討すれば、次善のプランが作れるでしょう。

文・松田聡子(ファイナンシャル・プランナー)
明治大学法学部卒業後、証券システムのITエンジニア、国内生保の法人コンサルティング営業を経て2007年よりファイナンシャル・プランナーとして独立。コンサルティングのほか、企業型確定拠出年金導入企業へのセミナー講師、マネーサイトへの執筆などを行っている。

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