1. トップ
  2. ライフスタイル
  3. 金継ぎとは?歴史や伝統技法としての魅力、初心者にもできるやり方を解説

金継ぎとは?歴史や伝統技法としての魅力、初心者にもできるやり方を解説

  • 2022.12.15

金継ぎとは

まずは、金継ぎについて理解していきましょう。日本が誇る伝統技術の金継ぎについて歴史や魅力を解説します。

金継ぎの意味

金継ぎ(きんつぎ)とは、欠けたり、割れたりした食器を天然の漆と純金粉で修理する日本の伝統技法です。破損した部分を漆で接着した後に、金で装飾します。

金継ぎの歴史

室町時代の茶の湯の頃から、金継ぎをしてきれいに修理するようになりました。金継ぎして直した部分を「景色(けしき)」と呼び、愛でて楽しんでいたと言われています。また、それよりも前の縄文時代には金継ぎと似た技術で修理された器も存在していました。

金継ぎの魅力

金継ぎによって修理された食器は、元のデザインとは違った味わいが楽しめます。破損した部分を隠すことなく金粉で目立たせるように修理し、デザインのように仕上げるのも金継ぎならでは。お気に入りの食器が破損したとしても永く使えるのが魅力です。漆や小麦粉など自然にあるものを使っている上、破損したものを再利用することはサステナブルにもつながっています。

身近になった金継ぎ

近年、環境に配慮したり限りある資源を大切にしたりなど、サステナブルな観点から金継ぎが注目を浴びたことにより、金継ぎの体験教室やキットの販売が増えています。キットには、本格的なものから合成樹脂で修理する簡易的なものまで、多様に販売されています。

金継ぎを行う前に用意するもの

金継ぎに必要な材料や道具は、ホームセンターで揃えることができます。初心者で初めて金継ぎに挑戦するのであれば、キットを使用すると便利です。まずは金継ぎの工程に入る前に道具や材料、事前の準備についてチェックしていきましょう。

金継ぎに必要な「道具」

・筆:細い線を書く用の代用蒔絵筆(まきえふで)と面を塗る用の 代用地塗筆(じぬりふで)
・毛棒(けぼう):金粉を蒔く時に使う
・耐水ペーパー:水を付けながら研磨する。番号が大きいほど目が細かく、600番、800番、1000番を使う
・小皿:漆を混ぜる時に使う
・ヘラやスポイト:小麦粉や水、漆を混ぜて接着するための麦漆を作る時に使う
・マスキングテープ :器を接着させる時に固定する
・削刀またはカッター:麦漆がはみ出た場合に削り落とす

漆かぶれから肌を守るために、必ずビニール手袋を着用してください。また、作業台が汚れないように新聞紙を敷くと良いでしょう。

金継ぎに必要な「材料」

・生漆(きうるし):接着させる時に使う
・絵漆(えうるし):赤色の漆。金粉を定着させるために塗る
・純金粉:粒子の細かい金粉。仕上げの装飾に使う
・砥之粉(とのこ):穴などの凹んでいる部分を埋める時の錆(パテ)に使う
・胴摺粉(どうずりこ):金を磨く時に使う
・磨き粉(みがきこ):金を磨く時に使う。胴摺粉より粒子が細かいため、仕上げに使用する
・テレピン油:漆を薄めたり、漆を拭き取ったりする時に使う
・小麦粉:接着用の麦漆を作る時に使う
・菜種油:金継ぎ部分を磨く時に潤滑剤として使う。サラダ油でも代用できる

専用キットを用意したほうが便利ですが、漆はチューブ入りなどでも市販されています。主に生漆、黒い漆、赤い漆の3種類を使うので、準備しておきましょう。

金継ぎを成功させる事前準備のポイント

金継ぎをきれいに仕上げるためには、すべての工程を落ち着いて行うことが大切です。また、漆の性質を理解し、扱い方を意識することで、より美しく仕上がるでしょう。最後に、金継ぎを成功させるための事前準備のポイントを2つ紹介します。

金継ぎの前に食器の汚れをしっかり落とす

金継ぎを始める前に、中性洗剤で食器の汚れを落とすのが重要なポイント。塩分や油分など、少しの汚れがあるだけでも食器は接着しにくくなってしまいます。そのため、きれいな食器に見えても作業を始める前には、中性洗剤を使って汚れを落として、しっかり乾燥させることが大切です。

漆の性質を理解する

漆は湿度がないと乾きません。温度20〜30℃、湿度70〜85パーセント程度が漆に適した条件です。漆を効果的に乾かすためには、ムロを用意すると良いでしょう。

ムロとは、金継ぎした食器を適した温度で乾燥させる、ビニールハウスのような役割を果たす部屋のこと。段ボールに湿らせたタオルを敷き、別の段ボールで作った高さ3〜5センチ程度の底上げ台を置けば完成です。梅雨時期などの高温多湿の環境は、漆が乾きやすいので様子を見ながら乾燥させましょう。

初心者でもできる金継ぎのやり方3ステップ

金継ぎの工程は大きく分けると3ステップに分かれます。2つに割れた食器を金継ぎする工程を紹介します。

1.接着する

1.水と小麦粉、生漆を混ぜてペースト状にした麦漆を食器の断面に付けて接着する
2.マスキングテープで仮止めをし、ムロに入れて密閉して乾かす

麦漆は、薄すぎると接着力が弱くなってしまうため、接着する際は厚めに塗ります。厚めに塗ってはみ出てしまった麦漆は、削る際に作業が大変になるため、きれいに拭き取りましょう。ムロに入れたら最低でも1週間、できれば2週間乾燥させます。また、ムロのタオルが乾燥したらその度に、霧吹きなどでタオルを湿らせてください。

2.穴埋めをする

1.マスキングテープを外して、はみ出している麦漆をカッターで削る
2.砥之粉、水、生漆を混ぜた錆(パテ)を作り、穴や凹んでいる部分を埋めて約1日乾燥させる
3.乾いたら錆をたくさん付けた部分を耐水ペーパーの600番で削り、錆全体も800番で削っていく

ひび割れを防いだり、乾かなかったりするため、錆付けは1ミリ程度を目安にします。深い穴を埋める時は、薄く埋めて1日以上おいて乾燥させ、また薄く埋めて乾燥させてを何度も繰り返すのがポイントです。耐水ペーパーで削る際は、錆が取れないよう力を入れすぎないように気を付けましょう。

3.仕上げる

1.装飾したい部分に黒い漆を塗り、1日乾かしたら1000番の耐水ペーパーで研ぐ。これを3回繰り返す
2.赤い漆を塗り、表面に金粉をのせていく
3.1日以上しっかり乾かす
4.胴摺粉で金色がメタリックになるまで丁寧に磨く
5.磨き粉できれいに磨き、中性洗剤で洗ったら完成

2の赤い漆を厚く塗ってしまうと、金粉が沈んでしまい表面が光らなくなるので、薄く均一に塗ります。もし厚く塗ってしまったら、15〜30分ほど待ってから金粉をのせると良いでしょう。金粉は思い切ってたっぷりのせるときれいに仕上がります。

お気に入りの食器を永く使うために金継ぎに挑戦してみよう

金継ぎは道具を揃え、やり方のポイントを覚えておけば初心者でも挑戦できます。破損したものを自分で修理し、再利用することは日本人が大切にしてきた「ものを永く大切に使う」という心を守るだけではなく、サステナブルにもつながります。時間と手間がかかる分、愛着が湧く金継ぎに挑戦してみてはいかがでしょうか。

元記事で読む
の記事をもっとみる