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世界のトップモデルが食べることだけをポストするアカウント”Models That Eat”が面白い

  • 2022.12.15

2015年のあるインスタのポストが忘れられない。

スレンダーな体形が魅力のスーパーモデル ミランダ・カーが、全裸と思われる格好でハンバーガーを食べているものだ。ミランダは、「ショーの後はご馳走を食べたいの。バランスが大事。8割の健康食と2割の不健康食がルール」とキャプションを添えている。

モデルの食事=サラダというイメージが覆された瞬間だった。

それからしばらく経って『Models That Eat』というインスタアカウントに出合った。ニューヨークベースのモデル フィービー・ポジョが、自分とモデル仲間がショーやキャスティングの合間に食事をする様子を記録する、いうなれば写真日記アカウントだ。

「モデルは食べないけど、実は食べている」という物語を語るために、半ば冗談から生まれたものだとポジョはのちに説明している。

遊び心で始めた写真日記は、やがてモデルたちが食べ物やボディイメージとの関係についてオープンに話す安全な空間へと進化する。今ではYouTubeチャンネルで業界のリーダーにインタビューしたり、デビュー展を開催するために世界中を旅して東京に行ったり。その中で、食とボディーイメージは常に彼女の作品の焦点だ。

モデルの食生活や個人的なストーリーを探求したコンテンツは、素敵な洋服やライフスタイル、そして見た目だけではないモデルたちのリアルな物語と、驚くほど素晴らしい食の世界を垣間見ることができる。

モデルは食べない?

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ニュージャージーの郊外で生まれ育ったポジョはどこにでもいる普通の女の子だった。特筆すべきことと言えば、サッカーが大好きな背の高い女の子だったということ。(デートしてきた男の子たちはほぼみんなポジョよりも背が小さかったんだとか)

そんなポジョの人生が大きく変わったのは、11歳の時。ファッション雑誌の編集者である友達のお母さんに、風邪を引いた友達の代わりにChild to work day(「子供を職場に連れて行く日」、米国の子どもたちが仕事の世界を垣間見ることができる日)に連れて行かれた。カフェテリアで“少し多めの(!?)マックアンドチーズ”を食べていた時に、teen vogueの編集者にモデルとしてスカウトされた。そして「楽しい体験ができそうだから」とモデルになった。

当時のファッション業界において「The モデル」といった風貌を持ち合わせていた、いわゆる天性のモデルだったポジョは、雑誌やファッション・ウィークなど活動の場を広げていく。

楽しい活動の中で、ポジョはある違和感を覚えるようになる。それは、モデル同士でも食べ物とボディーイメージについての会話は親しい間柄でないとできないということだ。それがそのままメディアにも反映されていると感じたという。例えば、仕事の話をすると「モデルなの? じゃあ食べないのね」と言われることも珍しくない。中指を立てて「ええ。食べるわ。食べている写真だってあるわよ」という感じで、16歳のポジョはModels That Eatをスタートした。

モデルとしてネガティブな影響を世の中に与えている?

仲間内ではじめたアカウントは徐々に世間の注目を集め、コミュニティーに参加していないモデルや一般人からフォローされるように。たくさんのポジティブなフィードバックをもらいリラックスした雰囲気のアカウントだったけれど、あるモデルから届いた一通のDMがポジョの心を動かすことに。

「Models That Eatのアカウントを作ってくれてありがとう。わたしの摂食障害の回復を目指すきっかけになったわ」

もちろん嬉しかったけれど、ポジョは摂食障害ではないし、このアカウントは摂食障害を克服するためのアカウントではない。ただ単に彼女やモデル仲間が食べたいものをポストするだけのもの。そして、このことをきっかけに、これはただの遊びではなくてもっと深いものなのかもしれないと、社会的な意味を意識するようになっていく。

じっくり観察していくと多くの人が「モデルは美しさを食べないことでキープしている」と思っていたり、またみんなモデルがどんな食生活を送っているのかにすごく興味を持っていることに気づいた。

モデルになりたかったわけでもそのために努力していたわけでもないポジョは、もともと背が高く、太りたくても太れない体質。世間が抱く「モデルは食べない」という妄想やモデルのボディイメージと、実際にモデルとして世間的な成功を収めている自分のセルフアイデンティティーのギャップに思い悩んだ。「モデルは世の中にネガティブな影響を与えているのか」と考えるように。

そしてポジョ自身にも、食事と上手く向き合えない時期が訪れる。18歳で世界的なエージェンシーにスカウトされパリに行ったときのこと。到着してすぐに体重を量られ、寸法を測られ、部屋に連れていかれたら、「太っている」と告げられた。BMIは健康的とされる値より低いにもかかわらず。肌も悪い、爪も悪い、と言われ、もしまともに相手にしてもらえるようになりたかったら、もっとうまくやれと、曖昧な言葉で言われた時、怒りがこみ上げてきた。

食事制限ではない食とのハッピーな付き合い方

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Models That Eatでは、ポジョのモデル仲間が登場し、モデルの食との付き合い方やボディーイメージについて話している。

「健康になるための食」「きれいになるための食」「痩せるための食」と今は、本当にたくさんの数の食事法がある。いくらポジティブな目的とは言え、食との付き合い方というと、一般的に「あれはダメ」「これは良い」といった食事制限になりがち。

一方で、どういうふうに、どれくらいの量を食べましょうと伝えていないのは、Models That Eatの最大の特徴と言える。

あくまでも食を楽しんでいる瞬間、食べ物について話しているモデルの姿を見るだけ。「どんな食事をしたらそんなスタイルになるの?」なんて話はしない。それが、食事への前向きな見方をもたらすとポジョは考えるから。

そして、そんなコンテンツが世の中とモデルとの間のギャップを埋めることにつながる。モデルの食べ物やボディーとの関係についてより透明性があって正直な世界、つまりありのままの自分(「モデルだって食べる」「摂食障害の経験を語る」など)を語ることができ、それをわたしたちが目撃することができたら、見られるモデルも、モデルみたいになりたいわたしたちにとっても、不自然なギャップはなくなる。

Models That Eatというコミュニティーメディアを通じて、わたしたちが見るもの、感じるものを変える力があることは明らかだ。モデルが、ボディポジティブ、フードポジティブなど、ポジティブな変化を生み出すことができれば、業界のサブリミナルな問題にも大きな変化がもたらされるはず。

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