1. トップ
  2. ライフスタイル
  3. 「投資した銘柄がことごとくマイナスに…」年末ギリギリにNISAの非課税枠消化に駆け込む人を待ち受ける悲劇

「投資した銘柄がことごとくマイナスに…」年末ギリギリにNISAの非課税枠消化に駆け込む人を待ち受ける悲劇

  • 2022.12.14

どんなに儲かっても非課税で投資できるのが「NISA口座」。ファイナンシャルプランナーの藤原久敏さんは「年末に非課税枠を消化しようと駆け込み投資をすると、NISA口座の落とし穴にはまることになります」という――。

NISA
※写真はイメージです
儲ければ儲けるほど、お得なNISA口座

残念ながら、私がNISA口座で購入した銘柄の多くは、マイナスになっております。

なぜ、そんな残念な状況になってしまったのか――。今回は、私が陥ってしまったNISA口座の落とし穴について、書いていこうと思います。

NISAとは少額投資非課税制度のことで、NISA口座で購入した株や投資信託からの収益(配当や値上がり益等)は、5年間非課税となる制度です(本来は20.315%課税)。

非課税となる年間投資額は120万円まで。

これは、120万円までの「収益」ではなく、120万円までの「投資元本」からの収益が非課税となるということです。たとえば120万円で購入した株式が1000万円に値上がりすれば、880万円もの収益が非課税となります。

この場合、本来なら約180万円もの税金がかかるところ(880万円×20.315%)、それが0円となるわけです。すなわち、儲ければ儲けるほど、非課税となる収益(ひいては払わなくても済む税額)は青天井という、非常に魅力的な制度と言えるでしょう。

※2024年から新NISA(1階部分20万円、2階部分102万円の非課税枠)に移行予定。さらに、NISA制度を恒久化して非課税で資産を保有できる期間も無制限にする検討がおこなわれている。

地盤ネットホールディングス、RIZAPグループを買った理由

そんな非課税メリットに魅了されてNISAを利用している私ですが、冒頭に書いたとおり、儲けるどころか、ことごとくマイナスが出ております。もし1000万円儲かったら、約200万円も節税になるのか……などと皮算用をしていた自分が恥ずかしいです。

そんなNISA口座での損失(失敗)の理由を挙げろと言われれば、最初に挙げるのは、「焦って、さほど吟味せずに買ってしまったこと」です。

保有銘柄のうち、たとえばゆうちょ銀行(▲5万円)は、配当利回りの高さに惹かれて購入。大江戸温泉リート法人(▲3万円)は、温泉旅館を運営するJ-REITという物珍しさだけで購入。

地震が不安だからというだけで地盤ネットホールディングス(▲2万円)を購入し、他にも株主優待目当てにRIZAPグループやMRKホールディングスなど(▲10万円)、低迷する低位株を、株主優待と値ごろ感だけで複数単位購入してきました。

いずれも、サッサと買わなければ……と焦ってしまって、かなり雑な投資判断をしてきたわけです。

予算計画をする女性
※写真はイメージです
年末に120万円の非課税枠を慌てて消化

ではなぜ、そんなに焦っていたのか?

それは、NISAの年間120万円の非課税投資枠は、次の年に繰り越すことができず、年内(12月31日まで)に使ってしまわないと消滅してしまうからです。私は毎年、その非課税投資枠を年末ギリギリまで使わずにたっぷりと残しており、年末に焦って消化するのが恒例だったのでした。

ちなみに、NISA口座を開設したからといって、年間120万円の非課税投資枠を使い切る義務はありません。10万円だけの投資でもいいですし、まったく投資しなくてもかまいません。

しかし私は、せっかくの節税のチャンス、使わないともったいないとばかりに、その非課税投資枠を必死に使い切ろうと(使い切れないまでにも、できるだけ消化しようと)していたのでした。それはまさに、有効期限の迫ったクーポンや割引券を、ただただ必死に使い切ろうとする人とまったく同じ心境でした。

IPO株で数百万円儲けた記憶が忘れられず

120万円もの非課税投資枠を、年末に焦って使うのではなく、1年間を通して計画的に使えばいいのでは……と思われたかもしれませんが、それができなかった理由が、「NISAの非課税投資枠を、IPO投資のために温存していた」ことでした。

IPOとは、新規公開株(新たに市場に上場する株式)のこと。

新規公開株を公募価格(上場前に購入できる価格)で購入し、初値(上場後に初めて成立する価格)で売却することで、かなりの確率で大きな利益が見込めることから、知る人ぞ知る投資法として有名です。もっとも、公募価格で購入するには抽選に当選しなければならず、これがかなりの高倍率なのですが。

かつて私は、このIPO投資で数百万円もの利益を上げてきたという甘美な記憶から、「NISA口座でIPOを購入すれば、NISAの非課税メリットを最大限活かすことができるはずだ」と目論んだのでした。

というわけで、私はそれまでの当選実績が多く、相性の良かった証券会社にNISA口座を開設し(NISA口座は一人一口座しか開設できない)、首尾よくIPOに当選したなら、そのNISA口座で購入しようと待ちわびていました。

すなわち、当選したIPOを購入するべく、NISA口座では投資をせずに、その非課税投資枠をずっと空けて待っていたのでした。

実践する投資家が急増した「NISA+IPO作戦」とは

しかし、いくら待っても、まったく当選しません。

前述の通り、IPO当選は高倍率ではあるのですが、それでもかつては、私はちょくちょく当選し、大きな利益を上げていました。しかし、私がこの「NISA+IPO作戦」を実行しはじめた頃には、このIPO投資の魅力は世間に知れ渡り、さらに高倍率となり、滅多に当選するものではなくなっていたのでした。

そんなわけで、IPOにはまったく当選しないまま、アッと言う間に年末を迎え、NISAの非課税投資枠はたっぷり残ったまま……といった状況となってしまうのでした。

そして、この非課税投資枠は、次の年に繰り越せないことは、前述の通り。

そんなわけで、年末ギリギリになってから、少しでも非課税投資枠を消化しなければと焦って、とりあえず気になる銘柄を、バンバン買い物カゴに放り込むかの如く、購入するのでした。ただでさえ年末はドタバタしているわけですから、銘柄の吟味など、ほとんどないままに。

今回の失敗をまとめると、「NISAの非課税メリットを最大限活かすべく、NISAをIPO投資のために活用しようとするも、IPOにはまったく当選しないまま、気が付けば非課税投資枠をたっぷり残してしまい、年末に焦って、たいした吟味もせずにドタバタ購入してしまった(その結果、損失が続出)」ということです。

さらに言えば、NISAの非課税メリットを意識し過ぎるあまり、「投資すること」自体が目的となってしまい、「銘柄の吟味」は二の次になってしまっていたわけです。

真に反省すべきは、損失ではなく“雑な対応”

無論、しっかり吟味して買ったからと言って、儲かるとは限りません。

むしろ、たいして吟味もせずに、適当に買った銘柄の方が、ラッキーパンチで暴騰することがあるかもしれません(残念ながら、私の場合は、そんなラッキーパンチなどほとんどありませんでしたが)。

ですので、NISA口座で購入した銘柄が上がったか下がったかは結果論に過ぎず、反省すべきは、「損失が出たこと」ではありません。今回の失敗で真に反省すべきは、しっかり吟味して、そして納得して購入しなかった(できなかった)ことなのです。

しっかり吟味しての投資であれば、その結果如何にかかわらず、その経験を次に活かすことはできるはずです。しかしそれが焦って雑な投資の場合、ノウハウは蓄積せず、次に活かすことはできません。

また、しっかり納得しての投資であれば、たとえ損失が出ても、それは自己責任として、自身で消化できるはずです。しかしそれが焦って雑な投資だと、ただ悶々と後悔するだけで、精神衛生上よろしくないことが多いものです。

実際、私はNISA口座での損失を見るたびに、「早まったなぁ……」としか思うことができず悶々とし、その損失から得るものはほとんどありませんでした。

1年間を、しっかり区切って行動する

そんな失敗を活かし、今では、年末に焦ってドタバタすることがないよう(しっかり吟味、納得して投資できるよう)、非課税投資枠は計画的に消化していくように心がけております。

たとえば、3月までにIPO当選がなければ、その時点で非課税投資枠30万円分(年間120万円×3カ月/12カ月)の消化を意識するといった感じです。もちろん、数字は目安であって、多少の誤差は気にせず、その時点で興味・関心のある銘柄を、じっくり吟味しております。

もし、その時点で気になる銘柄がなければ、無理に投資はしません。

期限が迫り、ドタバタする年末だと難しいことですが、計画的に、1年間単位で捉えれば、無理なくできるわけです。一般に、NISAをはじめ、1年区切りの制度が多いですが、年末に慌てるのではなく、自分でしっかり区切りをつけて、節目節目で考えることの大切さを、あらためて痛感した次第です。

余談ですが、実は、「年末に焦って、雑な判断をしてしまった」という失敗は、NISAだけでなく、ふるさと納税や、事務所の必要経費計上でもやらかしたことがあります。

いろいろなことで、1年間トータルの数字がハッキリ見えてくるのは、年末です。

なので、ついつい年末まで引き延ばして、年末に一気にやろうとしてしまうわけですが、それで(年末のドタバタもあって)焦ってしまい、雑に捌いてしまうことは、投資に限ったことではありません。ですので、今回の失敗(教訓)は、投資以外にも大いに役立てたいところです。

藤原 久敏(ふじわら・ひさとし)
ファイナンシャルプランナー
1977年大阪府大阪狭山市生まれ。大阪市立大学文学部哲学科卒業後、尼崎信用金庫を経て、2001年に藤原ファイナンシャルプランナー事務所開設。現在は、主に資産運用に関する講演・執筆等を精力的にこなす。また、大阪経済法科大学経済学部非常勤講師としてファイナンシャルプランニング講座を担当する。著書に『株、投資信託、FX、仮想通貨… ファイナンシャルプランナーが20年投資を続けてみたらこうなった』(彩図社)など。

元記事で読む
の記事をもっとみる