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年利122%もあり得る?「節電」を“投資”として考えてみた

  • 2022.12.12
「節電」が“投資”になる?
「節電」が“投資”になる?

電力各社が電気料金の値上げを発表しました。政府の支援策による一時的な値下げもありますが、家計の負担増は避けられそうにありません。また、冬場は電力需給が逼迫(ひっぱく)する時期でもあり、政府は節電を呼びかけています。世間を見渡せば、物価は上昇しているのに給料は上がらず、銀行の金利もすずめの涙ほどです。そこで今回は少し視点を変えて、節電を「投資の一種」と考えて、節電によって、どのくらいもうかるのか考えてみたいと思います。

LEDへの「投資」

もしあなたの家に白熱電球や蛍光灯があるなら、ある程度のお金をかけてでも、すぐにLED(発光ダイオード)照明に交換すべきです。どのくらいの投資効率があるのか、いくつかの具体例で考えてみましょう。

例えばトイレの60W(ワット)の白熱電球を同等の明るさの6.9WのLED電球に交換したとします。その差は53.1Wです。4人家族の1日のトイレの使用時間は1時間程度だそうです。消費電量の差は53.1W×1時間×365日÷1000≒19.4kWh(キロワットアワー)となります。最後に1000で割るのはWh(ワットアワー)を電気代計算のしやすいkWhに変換するためです。

電気料金は電力会社によってさまざまですが、少し前の資料では1kWhあたり平均約27円とのことです。しかし、電力会社によっては40%を超える値上げを発表していますので、これからは、少なく見積もっても1kWhの電力は30円を超えそうです。そこで、仮に1kWhあたり30円で計算してみると、トイレの電球交換によって年間582円の電気代節約になります。

60W型のLED電球(消費電力は6.9W)は650円のものが通信販売で見つかりましたので、この価格を計算に使ってみましょう。LED電球の寿命は4万時間程度なので、年間365時間の点灯だと100年以上持つ計算です。ただし、100年後までの投資を考えるのは現実的ではないし、100年後も同じトイレを使っている可能性は低いので、ひとまず10年先までで考えます。

650円で買ったLED電球は10年間交換する必要はなさそうです。一方、白熱電球の寿命は1000~2000時間程度なので、10年間で3回ぐらいは交換が必要です。60Wの白熱電球の値段は100円前後なので、白熱電球を使い続ける場合には、先ほどの電気代の差額に加えて10年間で300円の追加コストがかかります。

つまり650円の投資額に対して、10年間で節約できる金額は、電気代582円×10年+電球代300円=6120円となります。今ここで650円のLED電球に投資をして10年間に節約できるコストを年利に直すと、なんと94%にもなります。

もう一つ例を挙げてみましょう。リビングの68Wの蛍光灯式のシーリングライトを33WのLED式に交換したとします。その差は35Wです。リビングの明かりを1日8時間つけたとすると、年間の消費電力の差は35W×8時間×365日÷1000=102.2kWhとなります。1kWhあたり30円で計算すると3066円、シーリングライトは調光機能の有無などで値段に幅がありますが、比較的安価なものは3000円程度で手に入ります。

点灯時間は先ほどのトイレの8倍ですが、それでも10年間で4万時間には達しないので、この場合もLED式のシーリングライトは10年間交換の必要がありません。一方、蛍光灯の寿命は6000~1万2000時間程度で、1日8時間使うとやはり3年に1度程度の交換が必要になります。価格は2000円前後です。

従って、蛍光灯を使い続けた場合には、電気代3066円×10年+蛍光灯代6000円=3万6660円の追加コストがかかります。今ここで3000円のLEDシーリングライトに投資して節約できる10年間のコストを年利に直すと、122%という信じられない数字になります。

冷蔵庫やエアコンでも

ここで行った計算は、はなはだ大ざっぱではありますが、電気代が高くなるほど、照明の使用時間が長いほど、電気代削減の効果は大きくなります。しかも、小まめに電気を消すとか、点灯時間を短くするといった「節約の努力」をする必要がありません(もちろん、努力をすればさらに効果的です)。金額は微々たるものかもしれませんが、数ある投資の中で、これほど確実で高利回りの投資は他にないかもしれません。

照明のLEDへの交換は、かなり割のいい投資ですが、冷蔵庫やエアコンなど比較的消費電力の大きい家電も、ここ10年~20年程度で消費電力が大幅に少なくなっています。だから、もしあなたが古い冷蔵庫やエアコンなどを使い続けているようなら、この機会に交換を考えるとよいかもしれません。

冷蔵庫やエアコンなどは、今使っているものの年代によって、かなり投資効率が変わってきますが、計算の考え方は先ほどと同じです。読者の皆さんもぜひ、いろいろな電気製品の買い替えによって、どのくらい得をするのか計算してみてください。

筆者がいくつかのパターンで計算してみた結果では、冷蔵庫やエアコンなどは値段が高いので、残念ながら10年で購入額を回収するのは難しいようです。しかし、条件次第では、購入額の半額程度は回収できる場合があります。また、これらの家電は消費電力が大きいので、真冬に心配されている電力逼迫の緩和や、発電時の二酸化炭素削減には大きく貢献できそうです。月々の電気代もLED照明に比べて大きく下がります。その上、新品の冷蔵庫やエアコンが手に入るのですから、検討する価値は十分にあると思います。

数百円から始められて、いいことずくめの「節電投資」、まだの人はぜひやってみてください。

近畿大学生物理工学部准教授 島崎敢

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