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「脱いだら脱ぎっぱなし」何度言っても片付けない子どもに親がすべきたった一つのこと

  • 2022.12.8

何度言っても片付けない子どもにはどう接すればいいのか。現役の小学校指導教諭、庄子寛之さんは「口出ししたくなる時こそ、子どものやる気を引き出すチャンス。3つのポイントを押さえながら、口を出さずにただ見ることで変化が生まれる」という――。(第1回/全3回)

※本稿は、庄子寛之『子どもが伸びる「待ち上手」な親の習慣』(青春出版社)の一部を再編集したものです。

洋服が大量に散らばる部屋に立つ女の子
※写真はイメージです
口を出さず、「ただ見る」

うちの子は毎日服を脱ぎ散らかして、片付けません。
「片付けなさい!」
「昨日も片付けてなかったわよ」
「何度言ったら分かるの!」
と怒ってばかりです。
時には褒ほめていますが、うまくいかず、自己嫌悪になります。
どうすればいいのでしょうか?

叱りたくない、褒めなきゃと思っているけど、つい怒ってしまう。ほんとは怒りたくないのに! という気持ちは、多くの親御さんにあるのではないでしょうか?

ここで大事なことは、むやみに口を出さず、「ただ見る」こと。

毎日言われているなら、子どもだって親を怒らせたくてやっているわけではありません。ついつい忘れてしまうのです。

ポイント①「人はすぐには変われない」ことを理解する

そもそも脱ぎ散らかすことが習慣化してしまっていて、抜け出せないのでしょう。大切なことは、ポイントの1つ目「人はすぐには変われない」ことを理解することです。

習慣というのは厄介で、無意識のうちにさまざまなことをしてくれます。毎日靴を右足から履いて、自転車のペダルを踏んで……なんて意識していませんよね。

人は一日の中で無意識にたくさんのことをしています。我が子にとって、服を脱ぎ散らかすことはその一つなのでしょう。

一度叱ったところですぐには直らないものです。そこを叱り続けると、「ぼくは直そうとしているのにできないだめな子だ」と無意識に思うようになり、子どもの自己肯定感が下がります。

自己肯定感が下がると、子どものやる気や自信がどんどん下がってしまいます。

服をしまうことができるようになることと引き換えに、「ぼくはどうせできない子だ」と思ってほしいという親はいませんよね?

一度言ってもできない我が子を見たときには、「人間だから、すぐには変われないんだ。私だってこんなところあるもんな」と、子どもに注意する前に考えてみてください。

そして、ここでポイントの2つ目、「やらない権利を認める」のです。

ポイント②やらない権利を認める

まずはだまされたと思って、どんなことにも子どもにはやらない権利があると思いながら接してみてください。

「えっ、服を脱ぎ散らかすのを、この先もずっと認めろってこと?」と思うかもしれませんが、そうではありません。

そもそも服を脱ぎ散らかすことで、我が子の人生にどう影響するのでしょう。ここで言わないと、子どもは一生服を脱ぎ散らかしてしまうのでしょうか。

逆に、ここで言えば、この先は必ず脱いだ服を洗濯カゴに入れる子に育つのでしょうか。

きっとそんなことはないですよね。

ですので、とにかく、今はやらない権利を認めましょう。

じっと我慢をしてただ見る

あなたにとって最初はじっと我慢をしてただ見ることになるかと思います。

脱ぎ散らかすのが課題だとしたら、脱いでいる瞬間の我が子をどれだけ見ていますか? どうやって脱ぎ散らかしていますか? 脱ぎ散らかした後、何をしていますか? 我が子が脱いでいるとき、親であるあなたは、どこにいて、何をしているのでしょう。

そう、私達親は、よく見ているようで、実はあまり見ていないのです。

あなたが我が子に「やらせたい」と思っていることがあるとしたら、まずはやらない理由に興味をもって、その行動をただ見ることです。

一回ではありません。継続して見るようにします。

忙しくてそんなことできないと思うかもしれませんが、だまされたと思って3日間だけでも続けてみてください。その中で必ず変化が見えてきます。その変化を見逃さないように、ただただよく見ましょう。

毎日脱ぎ散らかしている中にも、必ず変化が見られます。

これがポイントの3つ目「小さな変化を感じ取る」です。

ポイント③小さな変化を感じ取る

着替える前にテレビを見ていて、急いで着替えてまたテレビを見るから脱ぎ散らかしているんだな。

そもそも、このテレビはなぜおもしろいと思っているのだろう。

何も言わないで見ていると、片付けることもあるんだな。

いつもはここに脱ぎ散らかしているのに、今日はここにまとまって置いてあるな。

……などなど、どんどんちょっとした変化が見えてきます。

片付けがちゃんとできていなくても、プラスの変化には声をかけます。

「服ここにまとめてあるじゃん。すごいじゃん」
「ここで、洗濯カゴまで持っていくと、100点だね」
「今日は朝起きてすぐ着替えたじゃん! 寒いのにさすがだね」

声をかけるときのポイントは、我が子が服を脱ぎ散らかさないようになってほしいという思いを捨てて、素直に行動の変化を認める言葉がけをすることです。

ただただよく見ることを意識し、お子さんにそれが伝われば、子どもにも変化が生まれてきます。その変化に気づけるようになれば、子どもは少しずつ自分から片付けるようになっていくものです。

よく見続けると、よいところが見えてくる

もちろんすぐには変わりません。変わるのは明日かもしれないし、1年後かもしれません。とにかく興味をもってただ見ましょう。

たとえ脱ぎ散らかすことがすぐには直らなくても、我が子の違うよいところが見えてくるはずです。

人間は承認欲求の強い生き物です。子どもたちは、どんなときでも親の承認を求めています。褒められたくて仕方ないのです。

人はすぐに変われないことを自覚しながら、ささいな変化に目を向ける。できていないことに関しては、我が子のやらない権利を意識して言わない。ただよく見て、小さな変化を感じ取る。

「我が子だから」言ってしまう

ただ見るというのは、思っているよりも大変な作業です。ついつい言いたくなってしまいます。

でも、それが家族ではなくて職場の方だったら言いますか?

まあ、職場で脱ぎ散らかしている人を見ることはないと思いますが(笑)。

職場のとなりの人が、片付けができなくてデスクの上がぐちゃぐちゃでも、ちゃんと仕事をしていれば「片付けたほうがいいですよ」とは言わないはずです。

我が子だから言ってしまうのです。

我が子だからつい口に出して指摘してしまうことを、指摘しないでただ見るクセをつけましょう。小さな変化を感じ取ろうと「ただ見る」のです。

まずは、「やらない」「言うことを聞かない」我が子の気持ちに寄り添いましょう。

そして、あなたがそれを意識することができたら、片付けなかったときにただイライラをぶつけるだけだったあなたと子どもの関係にも変化が出てきます。

叱る母親と耳をふさぐ少女
※写真はイメージです
我が子のことを、どれだけ理解しているか

ただ見るときのポイントを「我が子が服を脱ぎ散らかしてしまう」場面から考えてみましたが、あれこれ口を出さずにただ見ることの重要性は、なんとなく分かっていただけたのではないでしょうか。

できるかどうかは、もちろん別。焦らず、読み進めていってくださいね。読みながら日々実践することで、誰でも必ずできるようになります。

さて、「ただ見る」についてお話ししましたが、みなさん我が子のことをどれくらい理解できているでしょうか。

「私のお腹の中から生まれたんだから、なんでも分かります」という方もいるかもしれませんが、「毎日見てるけれど、理解できない行動をとるときもあるんですよね」「私の子だけれども、私と違いすぎて、分からなくなることがよくあります」という方も多いのではないでしょうか。

私もそうです。我が子のことを分かっているようで、やはり別の人間。ついつい、自分が子どもの頃と比較してしまいますが、同じようにはいかない。分からないことが多いものです。

無意識の「当たり前」が親と子を苦しめる

そもそもなぜ、自分の子どもの頃と比較してしまうのでしょう。

それは「我が子」だからです。

私は教師をしていますが、教師として接するクラスの子ども達は、冷静によさを見つけることができます。しかし、我が子になるとできなくなることがあります。

どうやら、無意識の中に、「自分の子だから、自分が子どもの頃にできたことはできる」と考えてしまっているようです。皆さんも同じではないでしょうか。

我が子ならできる。

つまりそれが、あなたにとっての無意識の「当たり前」になっています。この無意識の「当たり前」が、親も子も苦しめる原因です。

この「当たり前」があるからこそ、私達親は、よくない習慣を見つけたらすぐに叱ってしまうのです。子どもの言い分などをまったく聞かずに。

そんな「当たり前」の思い込みから抜け出すためには、「教える」でも「褒める」でも「叱る」でもなく、「ただ見る」ことに尽きます。

なぜなら、繰り返しになりますが、私達親は子どものことをよく見ているようで、実はよく見ていないからです。

好きなもの、好きな理由を知っているか

たとえば、次の質問にすぐに答えられますか?

我が子の好きな食べ物はなんですか? なぜそれが好きなんですか?
我が子の好きなアニメは? なぜそれが好きなんですか?
我が子の好きな時間は? なぜそれが好きだと分かるのですか?

まず、好きなことシリーズの3つの質問を出しました。

「そんなこと、我が子なんだから答えられますよ!」

親であれば誰でも答えられそうな簡単な質問です。

好きな食べ物がスパゲッティーだとしましょう。きっと、そこまでは分かる方が多いと思います。それはなぜですか?

小さい頃、好きになるきっかけには、どんなエピソードがあったかご存知ですか? 学校では、それが出てきたら、どれだけ食べているか知っていますか? あなたの前では食べているけど、学校では食べていないなんてこともよくあることです。

好きな理由を知っていますか?

子どもは言葉足らずです。きっと聞いたら「なんとなく」なんて答えが返ってきます。

「なんとなくじゃなくて、具体的に教えて!」

なんて言い続けると、子どもは適当にその理由を言うようになります。

これをきっかけに、「話したくない!」と、ますます距離が出てしまうということもあるでしょう。

言いたいことをぐっと我慢して、言わない権利(やらない権利)を認めましょう。

続けると、無意識にできるようになる

聞かずに、ただ見ましょう。我が子の好きなものに、興味をもって見ましょう。

庄子寛之『子どもが伸びる「待ち上手」な親の習慣』(青春出版社)
庄子寛之『子どもが伸びる「待ち上手」な親の習慣』(青春出版社)

意識してただ見るのです。

すると、細かな違いに気づいてきます。

スパゲッティーを食べているときは、とにかくおいしそうに食べる。野菜嫌いなのに。

ミートソースは好きだって知っていたけれど、カルボナーラはもっと好きなんだ。食べさせたことなかったのに。給食かな?

口にソースがついていることを気にするようになったな。昔は、口にいっぱいつけていたのに。どこで習ったんだろう。だれかに言われたのかな?

ここまで感じ取れたら、ポイント3の「小さな変化を感じ取る」ができている証拠。これを最初は意識的に繰り返し、3週間続けて行えれば、無意識にできるようになります。

まずはここまでのことを意識してみましょう。

親子の関係が、がらっと変わることと思います。

我が子は、日々成長しています。

雰囲気、表情、昨日との違い、我が子の細やかな変化に目を向けてみましょう。

そして、親であるあなたが良い悪いを判断せずに、ただ変化を感じ取ること。

それを意識するだけで、どんどん小さな変化を見つけられる目をもてるようになります。

あなたにも我が子にも笑顔が増えていくのです。

庄子 寛之(しょうじ・ひろゆき)
東京都公立小学校指導教諭
大学院で臨床心理学科を修了。道徳教育や人を動かす心理を専門とする。学級担任をするかたわら、「先生の先生」として全国各地で講演を行っている。最近では、教育関係者だけでなく、企業や保護者向けにも講演。担任した児童は500人以上、講師として直接指導した教育関係者は2000人以上にのぼる。元女子ラクロス日本代表監督の顔も持ち、2013年、U-21日本代表監督としてアジア大会優勝、2019年、U-19日本代表監督として日本ラクロス史上トップタイの世界大会5位入賞を果たす。著書に『叱らない技術』『withコロナ時代の授業のあり方』(ともに明治図書出版)、『オンライン学級あそび』(学陽書房)など著書多数。

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