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ちょっとした調べ物に、キチンと答えを出すには? 国会図書館秘伝「調べる技術」

  • 2022.12.7

ググっても答えが出なかった時、次にするべきことって?
図書館に行かなくても使える秘伝の検索術を、調べ物のプロが伝授!

2022年12月9日、近代出版研究所所長・小林昌樹さんの『調べる技術 国会図書館秘伝のレファレンス・チップス』(皓星社)が発売される。

初めて言語化されたプロのノウハウ

小林さんは、国立国会図書館で長年レファレンス(調べ物)業務に従事し、近代出版研究所を設立。図書館史、近代の出版史、読書史を専門とする、いわば調べ物のプロ。

本書は、そんな小林さんが長年培ってきた調べ物のノウハウ(レファレンス・チップス)の中から、一般の人にも使える知識をピックアップした実務マニュアルだ。

実は、小林さん曰く「レファレンスという文脈では類書がほとんどない」。この世にはどんなツールがあり、どんな優先順位・用途でそれを使うべきなのか。物を調べる時に必要なこうした知識は、調べ物のプロであるベテラン司書が「当たり前に」「無意識に」持っていたが、当たり前のものであったがゆえに、今までほとんど言語化されてこなかったという。

小林さんによれば、本書はこんな人に向いている。

・仕事でちょっとした調べ物をする人。編集者、翻訳家、校正者、記者。
・趣味で好きなことを調べている人。趣味人。在野研究者。
・理系的なことを調べるのではなく人文社会的なことを調べる人。
・専門以外のことも調べようと思い立った専門家、学者。
・日本の風俗/習慣や社会に興味がある人。日本研究者。
・引っ込み思案で質問をしづらい人。
・調べ物をしたいのに図書館に出かけづらい人。
・閲覧系の司書。
・AND検索やOPACなど一通りの調べ方を知ってはいる人。

引っ込み思案で質問をしづらい人にとって、その道の専門家に話を聞いたり、当事者にインタビューしたりすることはハードルが高い。趣味で好きなことを調べている人は、専門家がアクセスできるような貴重な資料にはアクセスできなかったりする。本書は、Googleなどの広く公開されているツールを使った、スマホでもできるオープンな調べ方も紹介している。

「自分の知らないこと」に答えられる

時間と記憶力に限界がある以上、個人の知識量には上限がある。しかし、自分の外部にある知識の在りかと引き出しを知っていれば、その制約はなくなる。小林さんはそんなレファレンス司書の強みを「自分の知らないことに答えることができる」ようになること、としている。

この司書の強みは、「特に職業的専門家がいない知識ジャンルや、質問の出どころと答えの在りかのジャンルがズレる事柄、そもそも答えがあるのか無いのかわからない質問」などに発揮されるという。

「私は15年ほど国会図書館でレファレンス業務に従事したので、だいたいのところがわかった。今回、本書で私が開陳するスキルはそういった種類のスキルである」

ベストセラー本『独学大全』の著者・読書猿さんは本書について、「私が私淑する『探しものの魔法使い』が書いた司書の奥義(暗黙知)を公開した本です」としている。

本書のノウハウを学ぶことで、今まで答えを見つけられなかった疑問や、時間がなくて調べられなかったことにも決着をつけられるかもしれない。

■目次
はじめに
第1講 「ググる」ことで、我々がやっていること――世界総索引でアタリをつける
第2講 答えを出す手間ヒマを事前に予測する――日本語ドキュバースの三区分
第3講 現に今、使えるネット情報源の置き場――NDL人文リンク集
第4講 ネット上で確からしい人物情報を拾うワザ――人物調査は三類型で
第5講 見たことも、聞いたこともない本を見つけるワザ
第6講 明治期からの新聞記事を「合理的に」ざっと調べる方法
第7講 その調べ物に最適の雑誌記事索引を選ぶには
第8講 索引などの見出し語排列で落とし穴を避ける
第9講 Googleブックスの本当の使い方
第10講 NDL次世代デジタルライブラリーは「使える」――その注意点とともに
第11講 「として法」――目的外利用こそ玄人への道
第12講 答えから引く法
第13講 パスファインダー(調べ方案内)の見つけ方
第14講 レファ協DBの読み方――レファレンス記録を自分に役立つよう読み替える
同じ魔法が使えるようになるために――あとがきに代えて

■小林昌樹さんプロフィール
こばやし・まさき/1967年東京生まれ。1992年慶應義塾大学文学部卒業。同年国立国会図書館入館。2005年からレファレンス業務に従事。2021年退官し慶應義塾大学でレファレンスサービス論を講じる傍ら、近代出版研究所を設立して同所長。2022年同研究所から年刊研究誌『近代出版研究』を創刊。専門は図書館史、近代出版史、読書史。編著に『雑誌新聞発行部数事典: 昭和戦前期』(金沢文圃閣、2011)などがある。『公共図書館の冒険』(みすず書房、2018) では第二章「図書館ではどんな本が読めて、そして読めなかったのか」を担当した。

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