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あのちゃん、アーティスト“ano”としての連続リリース「蓄えたものをエンタメとして表現したい」

  • 2022.12.5

【音楽通信】第128回目に登場するのは、バラエティ番組でもひっぱりだこで若い世代を中心にカリスマ的人気を誇り、音楽活動では別名義で活動中のあのちゃんこと、anoさん!

家では洋楽のバンドサウンドを聴いて育つ

【音楽通信】vol.128

現在、音楽活動のほかにもタレントやモデルとしても活躍し、若い世代を中心にカリスマ的人気を誇る、あのちゃん。テレビのバラエティ番組でもひっぱりだこで、かわいらしい話し方から繰り出すキレのある受け答えや、やわらかい雰囲気に見えてライブではシャウトするなど、静と動のギャップも魅力です。

そんなあのちゃんは、「ano」名義でソロアーティストとして音楽活動をするなか、2022年10月に「普変」、11月に「ちゅ、多様性。」を配信リリースされたということで、お話をうかがいました。

――anoさんが幼少時に音楽にふれたきっかけから教えてください。

父がバンドをやっていた時期があったので、家にはいくつもギターがあって、アンプやピアノも置いてありました。家では洋楽がよく流れていましたし、幼稚園の送り迎えも洋楽のロックバンドの曲やヘビーメタルのような激しいサウンドが流れていた環境です。その頃はまだ物心がついていないから、音楽の良さをまだ理解できずに「うるさいなあ」と思っていましたね(笑)。

母もザ・ビートルズやクイーンといった洋楽が好きでしたし、兄も音楽をやっていたので、自分は音楽に苦手意識があって。洋楽には詳しくなるけど、逆にみんな知っている童謡や昔話は知らなくて、こんなになっちゃいました。

――ではいつ頃から音楽にご興味を持つようになったのでしょうか?

中学生ぐらいからです。そのときは部活に入らなくてはいけない学校に通っていて、先生にバスケ部に入りなさいと言われて無理矢理入って、だんだんと真面目にやるようになってスポーツに打ち込んでいました。でも、すぐやる気ないように見られてしまって、みんなの前で怒られたりするのも嫌で。不登校になって、部活も辞めて。

学校に行かずに家にずっといながらインターネットをしていたり、YouTubeを観ていたりするなか、音楽の動画も観ていろいろと知っていくと「面白いかも」と。家では音楽がずっと流れている環境だったこともあって、音楽は生活と切っても離せないものだと感じました。

――音楽の道を目指すようになった理由はなんでしょうか。

バンドの音楽をよく聴いていたから、バンドっていいな、と思いながら引きこもっていました。あるときTwitterに流れてきた「メンバー募集」に、バンドもできますって書かれていたので応募したら、ミュージシャンのメンバー募集ではなく、アイドルグループの募集で。受かると思わず応募したけれどバンドじゃないからと断っていたら、何十回も連絡をもらって、他のメンバーは審査をするなかで自分は「すぐ入ってくれ」と言われたので、そんな経験が初めてだったから、そこから活動を始めることにしました。

――その後、2020年9月から「ano」としてソロでの音楽活動をスタートし、2022年4月にデジタルシングル「AIDA」でメジャーデビューされましたね。ソロだと意気込みは違いましたか。

一度アイドルグループとしての表舞台を辞めていたので、ソロになったからといって、あまり意気込みはなかったです。ソロ活動は自分から出たものだけで音楽を作る感覚で自己満足だったから、誰かに届けようという気持ちはまったくなくて。一応リリースするものの、そこで多くの人から共感を得ようとは思っていなかったので、みんなからの反響が不思議な気持ちでしたね。

これまでも「あのちゃんがボーカルギターで、この大人を集めて」というようなお話は何度もあって。でも、最初から決められていると自分のしたいこととは違うから、「それってバンドじゃないな」って。ちゃんとそこは第三者の声無しで、自分たちで関係性を築いていきたかったから、結成するまでに時間がかかっちゃいました。

――バンドメンバーはご自身でお声をかけて?

そうです。ひとりに声をかけて、その子の知り合いにまた声をかけて……という感じで。ぼく、全然友達がいなかったから。「じゃあ、この仲間で組もうぜ」というのができないですし、大人の力を借りるのも嫌だし。それですごく時間がかかりましたが、かかったかいがありました。

――ギターはいつ頃から弾くようになりましたか。

ギターは、当時のグループにいた6年ぐらい前からですね。その頃は全然ギターも好きじゃなかったから、ライブのためにはがんばって練習するけど、普段は触りたくないというスタンス。それが、ようやくバンドを始めてから好きになって「こんなにギターを弾いて歌うのは楽しいんだ!」って、思えるようになりました。

――ご自身で作詞作曲をされることもありますし、anoさんは表現することがお好きなんですね。

そうですね。自分で曲を作るときは、ギターを弾きながら、同時に歌詞を並べていく作業が多いです。降ってくるといいますか。作曲者が他にいる場合は、そのメロディにぼくが歌詞を乗っけるパターンが多いですね。

新曲は「ぼくの曲にはいままでにない印象」

――2022年11月23日には、TVアニメ『チェンソーマン』(テレビ東京系 毎週火曜24:00)のエンディングテーマ「ちゅ、多様性。」を配信リリースされました。エンディングテーマは12組のアーティストが週替わりで担当し、anoさんは第7話を担っていますが、作詞は音楽プロジェクト「相対性理論」元メンバーで音楽家の真部脩一さんとの共作ですね。

はい、この曲は『チェンソーマン』でエンディングを担当する第7話を考えながら作りました。曲作りのときはまだアニメはできていませんでしたが、既刊されている漫画でアニメの第7話に当たる箇所を教えてもらっていたので何回も読んで、ストーリーとリンクしているようでしていないようなものを書きたくて。そこは真部さんが書いてきてくれた歌詞をぼくがぶち壊したりして(笑)、バランスを見ながら、書いていきました。共作は新鮮でしたね。

――軽快な「ちゅ、多様性。」のサウンドがあがってきての印象はいかがでしたか。

相対性理論の感じはありつつも、ぼくの曲にはいままでなかったような印象もあって、結果として新しく聴こえるというか。うまく曲ができてよかったな、と思いました。サウンドは、ちょっとポップにかわいく、でもカオスでというイメージが自分のなかにあって。その通りのものを真部さんが作ってくれました。

――真部さんとのタッグは、anoさんのご希望だったのですか。

前からお願いしてみたいなと思っていました。今回、好きな音楽家の方と組めたらいいなということもあって、他のアーティストの方の名前もあがっていましたが、ぼくは真部さん一択。真部さんからも、実は曲作りを一緒にしてみたかったと言ってくださいました。

――レコーディングや歌唱の際、意識した点はありましたか。

レコーディング中は、『チェンソーマン』の世界を意識して曲作りした部分もあったので、そのことや漫画を思い出して歌いました。ただ、意識的にというよりは、自然とその世界が浮かんでくる感じでしたね。

――前作は、10月に「普変」が配信されていますが、クリープハイプの尾崎世界観さんが手がけた疾走感あふれるナンバーです。

これまで尾崎さんの活動を見てきていて、自分も抱えている悩みが少しリンクするところがあると感じていました。ぼくの声やしゃべり方に対するアンチだったり、めんどくさいところにむかついていたり。そんなところも、尾崎さんは言葉選びが面白い人なので、すごくいい歌詞を書いてくれるんじゃないかなって。

本来は、あまり人に歌詞をまるまる書いてもらうことはないんです。でも、今回は全部やってほしくて、頼みました。学生時代からの経験や感情みたいな自分のいままでの経験や、昔書いていたブログなども、こんなに資料はいらないよというものも、尾崎さんに渡して曲を作ってもらいました。

――仕上がった曲を聴いてみていかがでしたか。

本当に自分のことを書いてくれてるなって思いましたし、すごく救われました。この曲を歌える、自分が持てる武器なんだと思うと、すごい贈り物をくださったなと。ぼくと向き合って生まれた歌詞になっています。

――11月25日に全国公開された映画『メイヘムガールズ』の主題歌として、anoさんが書き下ろされた曲「ンーィテンブセ」がいまスクリーンを彩っていますね。

そうなんです。音楽家のANCHOR(アンカー)さんの作業スタジオに入って、一緒に曲を作っていきました。ANCHORさんがピアノを弾いてくれたり、ぼくが「こういうメロディは入れられないですか?」と提案したり。そうやって作っていきましたが、ソロでは初めての作り方でした。

若い方がより共感していただけるような歌詞になっているんですが、毎日同じような生活を繰り返す大人の方にも共感してもらえるところはあるんじゃないかな。世の中は見えないものも多くあって、毎日同じことの繰り返しで、行ったり来たりしている人もいると思うんです。そういうなかで、気づいたら自分の心が限界で、自分を見失って生きてしまっている人たちが聴いてくれたらいいなって。大人になってしまうのはどうしようもないことですが、それでも世間に揉まれて自分を見失わず、あなたはあなたらしく生きてほしい、自分らしくいてと歌っています。

――リリースが続きますが、今後はソロのライブツアーのご予定はありますか。

やりたいですね。ソロでもツアーはやったことがなくて、コロナ禍でライブができない期間もありましたし、実際まだできていないので実現しないとなって。ファンの方もライブをめちゃめちゃ待ってくれているので、来年は実現できるようにがんばりたいです。

「ano」の世界観をたくさんの人に知ってもらいたい

――テレビなどでもご活躍を拝見していますが、『水曜日のダウンタウン』(TBS系 毎週水曜 午後10時)と『ラヴィット』(同局 毎週月〜金曜 午前8時)の合体企画で、大喜利芸人さんが遠隔操作する内容の際、あのさんのパフォーマンスに感嘆しました。バラエティ番組やお笑い芸人さんとの相性がとても良いように感じられます。

バラエティと合っているのかどうか自覚はないんですが、なんでぼくにオファーが来たのかをまず考えて、そのときどきにできる限りのことをしているだけなんです。音楽活動をするとき、テレビ番組に出演するとき、モデル活動のときなど、意識して分けているわけではなくて。それぞれ求められることが違うので、そのときに対応しようとする自分が自然と出ている感じですね。

――期待に応えようとがんばるという?

たとえば『水曜日〜』の企画だったら、単純に「面白そうだな」って。でも、オファーがあるからといってなんでもやるわけではありません。いままでは誰にも期待されていないと思っていたので、期待に応えようもなかったんです。あの企画にはそうそうたる芸人さんがいましたし、生放送ですし、ちょっとでも間違ったことを言ってしまったらどうしようというプレッシャーはありましたね。でも、そんな感じで楽しんでいました。

――ananwebの取材用に、あのさんご自身でメイクされて、衣装も決めていらっしゃったそうでありがとうございます。こだわりのメイクやお気に入りのファッションはありますか?

できる限り、メイクはいつも服装に合わせています。今日は衣装が淡いから、いつもよりはガーリーな感じなので、なるべくリップの色も薄めにしていて。メイクや服は毎日違う系統を着るので、こだわりといえば、その日着たい服を着ることぐらい。逆に、“こういう服しか着ない”と、そこで自己表現をする人も多いと思うんです。

でも、ぼくはわりとなんでも着て、それを自己流にすることが好き。ガーリーな服にスポーツブランドを合わせたり、羽織にロリータのブラウスを合わせたり。全部が違うジャンルだけど、毎日着たいものは違いますし、そのなかで遊ぶのが好きなんです。毎回「印象が違う」と言われるんですが、「それでいいや」って。自分を持っていれば、服が違っても、ブレなければいいと思っています。

――とても華奢なあのさんですが、普段の食生活のご様子や美容法などはありますか。

やっぱり、代謝も上がって健康にいいというところでは、お水をいっぱい飲んでいます。もともと炭酸水やジュースが苦手で、必然的に水をよく飲むから好きなんですよね。食事はすごく偏食家で、白米があまり好きではなく(笑)。前に偶然オートミールを食べたら、白米より好きな味だったんですよ。だから気に入ってオートミールをずっと食べていたら、実は食物繊維も豊富で、ダイエット食品としても使われていると知って、ラッキーって(笑)。肉ではササミが好きなんですが、自然とヘルシーなものなんですよね。

でももともと偏食しがちなので、ドーナツを食べたいと思ったら1か月ずっとドーナツを食べ続けたり、一度に3つも4つも食べたりするので、意識していることがわりと少ないかな。好きなものを食べて、これで健康になれるんだったらいいなって思います。あとは、なるべくお化粧しない時間を作っていますね。肌が荒れやすくて、敏感肌なので、極力お仕事以外の時間は、メイクを落としています。

――いろいろなお話をありがとうございました。では最後に、今後の抱負をお聞かせください。

ライブがしたいのはもちろんですが、「ano」としての世界観をもっとたくさんの人に知ってもらいたいですね。それこそバラエティをやらせてもらうようないろいろな経験を積みながら、得たものを音楽と融合できたらいいなと。今後、自分のなかに蓄えたものをエンタメとして表現できたら、もっと世界が広がるな、面白そうだなって思います。

取材後記

儚げな印象もある、あのさんは、エンターテインメントの場にとてもしっくりくる逸材として、存在感を発揮していますよね。テレビウォッチャーでもあり、ダウンタウンが好きな筆者は、バラエティ番組での、あのさんの爆発力に魅了されています。今回はananwebでの「ano」さんの音楽活動についての取材ということで、音楽的なルーツから新曲への想いまでうかがうことができました。“自分”というものをしっかりと持つキュートなanoさんの新曲をみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。

写真・北尾渉 取材、文・かわむらあみり

ano PROFILE
2020年9月より「ano」名義でソロアーティストとして音楽活動を開始。
2022年4月、アニメ『TIGER & BUNNY 2』(Netflix)のエンディングテーマ「AIDA」でメジャーデビュー。ソロ活動以外にも、4人組バンド「I’s」のボーカル&ギターとしても活動中。10月に「普変」、11月に「ちゅ、多様性。」を配信リリース。

音楽活動のほか、タレント、女優、モデルとマルチに活躍中。

Information

New Release
「ちゅ、多様性。」

2022年11月23日配信

写真・北尾渉 取材、文・かわむらあみり

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