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いつも値引きしているような…アパレル業界「頻繁にセール」は印象?事実?企業に聞く

  • 2022.12.5
店によっては、常に「○%off」という値札が付いていることも
店によっては、常に「○%off」という値札が付いていることも

アパレル企業の多くが、店舗やECサイトで洋服のセールを実施することがあります。中には、常に「〇%off(オフ)」と宣伝している企業もあり、利益が出ているのか気になることがあります。実際に、アパレル業界ではセールが頻繁に実施される傾向にあるのでしょうか。SDGs(持続可能な開発目標)に関するファッションイベントを主催する「THAT’S FASHION WEEKEND」(東京都渋谷区)社長の菅野充さんに聞きました。

発売後、1カ月で値下げするケースも

Q.アパレル企業が洋服のセールを実施する時期やセール時の値引き率について、教えてください。以前、「最大80%off」と宣伝している店舗を見掛けたことがあります。

菅野さん「ブランドによって違いますが多くの場合、春夏向けの商品は7月から、秋冬向けの商品は翌年1月からそれぞれセールが始まります。ただ、売れ行きの悪い商品の在庫をなるべく余らせないために、近年は早めに値下げをする傾向にあり、年々セールの開始時期が早くなっています。

企業やブランドによりますが、セール期間中は定価の30〜50%引きで販売するケースが多いようです。近年、ECサイトで安く服を購入することができるようになったため、『定価の10〜30%引き』ではなかなか顧客に響きにくくなっているかもしれません。『80%引き』の場合、原価割れしているため、恐らくシーズンを過ぎた商品だと思います」

Q.売れ行きの悪い商品を早めに値下げする傾向にあるとのことですが、やはりアパレル業界ではセールが頻繁に行われているのでしょうか。

菅野さん「セールを頻繁に実施する傾向にあります。できるだけ定価で販売するよう挑戦していますが、なかなか難しい状況です。

頻繁にセールを実施する理由は、多くのアパレルメーカーやアパレル小売店が過剰在庫に頭を抱えているからです。実際に販売をしてみないと、何が売れて何が売れないのかが分からないのが難しいところですね。

そこで、先述のように店頭で売れ行きのよくない商品を売り切るために、早めに値下げをするようです。さらに多くの企業が過剰在庫分を販売するために、アウトレット専用サイト(シーズンが過ぎた商品などを安く販売するサイト)を開設するケースが近年増えています。

できる限り在庫を残さないため早めにセールを仕掛け、それでも余ったら、アウトレットサイトやファミリーセール(自社の従業員やその家族、取引先の関係者に商品を安く販売すること)で販売しますが、全生産数の数%は最後まで売れ残ってしまうのが現状のようです。

ただ、アパレルに限らず、コンビニエンスストアのフードロス、アーティストのファングッズの売れ残りなど、どの業界も同じような状況を抱えていると思います」

Q.新商品を定価で販売する期間は、どの程度なのでしょうか。

菅野さん「定価での販売期間は、2カ月くらいだと思います。ただ、売れ行きが悪ければ、発売後、1カ月もたたないうちに値下げすることもあるようです」

Q.アパレル企業は、セールを頻繁に実施しながら、どのように経営を維持しているのでしょうか。

菅野さん「アパレルメーカーやアパレル小売店の多くは、利益率がとても低く、赤字のブランドも多いので、経営維持はとても難しい状況です。そこで、商品の原価を下げることや、利益率の低い店舗を減らしECサイトに力を入れることなどで、経営維持のために試行錯誤しています。

例えば、セレクトショップ(複数のメーカーやブランドの商品を販売する店)は、原価の安いオリジナル商品の割合を増やしています。

また、数年前に比べてSDGsに対する意識が高い企業が増えており、最近はサステナブルファッション(天然素材やリサイクル素材を使用するなど、地球環境に配慮して衣服を製造すること)を意識している企業がほとんどです。

こうした企業は、最初からすべての商品を量産するのではなく、さまざまな商品を少数だけ製造して店頭で販売し、売れ行きのよい商品のみを量産する仕組みを採用するなど、できるだけ在庫が余らないよう工夫しています」

Q.近年はECサイトでの販売に力を入れるアパレル企業が多いように感じますが、売り上げが伸びる可能性はあるのでしょうか。アパレル企業がECサイトで洋服を売るメリット、デメリットについて教えてください。

菅野さん「ECサイトの運営が順調なアパレルメーカーは、売り上げが圧倒的に伸びています。メリットは店舗のように固定費、人件費がかからず、利益率が上がることです。一方、ブランドの世界観を伝えることや、ファンづくりが難しいというデメリットがあります」

Q.このままアパレル業界でセールが頻繁に実施される傾向が続いた場合、主にどのような弊害があるのでしょうか。

菅野さん「顧客がセールに慣れてしまい定価での販売が難しくなるので、メーカーや小売店の利益率が下がります。2020年には多くのアパレルブランドが廃業したり、店舗の大量閉店が発生したりしています」

オトナンサー編集部

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