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牛乳マニア必見!ソムリエさんに牛乳を飲み比べてもらいました

  • 2022.12.3
牛乳マニア必見!ソムリエさんに牛乳を飲み比べてもらいました

テイスティングのプロが牛乳を飲み比べ

同じ牛乳でも、品種、育て方、エサの違いがその個性を育む。2人はもちろん、その差を感じ取っていた。寒さに強いホルスタインは「ミルキーで、口の中にきれいな甘味が残る」、ジャージーは「アタックに甘味をあまり感じないため、爽やかな飲み口。でも、中盤から風味がグッと出てくる」、また、木次乳業が先駆けとなったブラウンスイスは「サラッとしているが、甘味、つまり旨味が強い」といった具合だ。

今回登場願った牛乳で多かったのはジャージー系。大越さんが一番好きだという髙村武志牧場の山吹色のジャージー牛乳(1)もその1つだ。また、1種のみもあれば、何種かをブレンドして理想の姿を目指すハイブリッド型も。

では2人はどんなふうに見ていったのか。牛乳テイスティングのポイントは「甘味と塩みにある」と大越さん。この甘味と塩みの出方によって、風味も味わいも感じ方が変わってくるという。例えば、山本牧場の養老牛放牧牛乳(2)。

山吹色のジャージー牛乳
1本900㎖850円/ジャージー種は国内の乳牛の0.6%、約10,000頭の稀少種。九州での一大生産地、阿蘇・小国地方にある牧場ではジャージー牛乳本来のコクとクリーミーさを追求。乳牛には自家生産の牧草にこだわり、飲み水用にもイオン水装置を導入。65度30分殺菌、ノンホモジナイズ。乳脂肪分5%以上。販売は〈黒川温泉 山のいぶき〉。大越/一番好き。かすかに塩キャラメルのニュアンス。本多/クリーミーなのにすごくさっぱりしてますね。
養老牛放牧牛乳
1本900㎖1300円/ホルスタインを中心に、マイナス30度近くなる冬も完全放牧。有機牧草を中心に少量の道産ビートパルプ(テンサイの搾りかす)を与えている。季節ごとの風味に対応し、ラベルも変化。写真は「放牧草飼養:夏」グリーンラベル。「貯蔵草飼養:冬」は赤ラベルになる。65度30分殺菌、ノンホモジナイズ。乳脂肪分は日々変動。大越/風味は強く、甘味より牧草由来の塩味を感じる。本多/チーズっぽい塩味のような風味があります。

「牧草のミネラル分が強いせいか、甘味よりも塩のような味わいを感じる。そのおかげで、全体のキレがよくなっている」。また牛乳は「クルミのようなナッティな香りが特徴」だが、「牛乳らしさ」は、この香りの強弱で表せるという。

本多さんが好きだった山田牧場のノンホモ低温殺菌牛乳(3)は、「牛乳感大」。つまり、「すごくナッティ」ということだ。

「この中で一番ナッティ。その割に余韻があまり強くないから、飲み口爽やか。ゴクゴク飲んで牛乳の風味が味わえますね」と大越さん。「香りが強いんです。色も白みが強い。風呂上がりに飲みたい感じ」と本多さん。

バリスタでもある本多さんは、「シックス・プロデュースの四季のめぐみ(4)は冷たいラテ向き」というふうに、コーヒーとの相性もこまめにチェック。

ノンホモ低温殺菌牛乳
1本900㎖648円/明治、大正と「牧童」(酪農事業を牧場から請け負う人)として全国の牧場で修業した山田豊次郎が昭和初期に京都で創業。現在は滋賀・信楽で酪農を営む。ホルスタインには非遺伝子組み換え飼料を与え、毎日音楽を聴かせ、搾乳後14時間以内に敷地内プラントで商品化。65度30分殺菌、ノンホモジナイズ。乳脂肪分3.5%以上。大越/18本中、最もナッティな風味を感じますね。本多/一番好き。牛乳感が強く、懐かしい味わい。
四季のめぐみ
720㎖× 2本2,100円/牛舎のない自然放牧スタイル。春から秋は牧草地の青草、冬は干し草や熊笹、竹の葉などを与えている。自然の中で暮らすホルスタインから搾られる牛乳は季節で風味が変化。やや黄味がかった色は、草花に含まれるβ−カロテンやビタミン、ミネラル成分の色合い。63度30分殺菌、ノンホモジナイズ。乳脂肪分3.5%以上。大越/生クリームのように濃度があってきめこまやか。本多/干し草の香り、ミネラル分を感じます。濃厚。

飲み比べた牛乳たち

ノンホモ低温殺菌牛乳
1本780㎖210円〜/自由に動き回れるフリーストール牛舎で約200頭のホルスタインとブラウンスイスを飼育。牛の寝床は完全発酵によって生まれるEM菌により、悪玉菌を繁殖させないようにした牛の糞。これにより、健康な牛の乳を搾る。63度30分殺菌、ノンホモジナイズ(脂肪を砕き、均質化する作業をしていない)。乳脂肪分3.6%以上。大越/中盤から広がっていくような甘さが特徴的です。本多/好みのタイプ。フーッと甘味が消える余韻あり。
千本松牧場牛乳ビン
3本セット4,450円/牧場全体が鳥獣保護区指定を受け、野鳥やリス、ムササビなどが暮らす自然豊かな環境。乳牛(ホルスタイン)の主食は自家製の堆肥をまいて土から育て、年に2〜3回刈り取った栄養豊富な牧草。そのほか遺伝子組み換えをしていない配合飼料を与えている。搾りたての生乳は65度30分殺菌、ホモジナイズ。乳脂肪分3.5%以上。大越/ココナッツやバニラの甘い風味があります。本多/練乳っぽいクリーミーさ。濃厚だけど上品です。
元山牧場牛乳
1本900㎖454円/北海道酪農の発祥の地、八雲町で4代続く歴史ある牧場。内浦湾を見渡す丘陵にあり、道内では比較的気候が温暖なため、ホルスタインが食べる牧草などもよく育つ。ビタミン、ミネラル、タンパク質豊富。脂肪が浮いてくるのでびんをよく振ってから注ぐとよい。65度30分殺菌、ノンホモジナイズ。乳脂肪分3.5%以上。大越/ホルスタイン種のキャラクターがはっきり。本多/ミルキーでストレートな味わいが好ましい。
ジャージー牛乳
1本200㎖194円/1968年、佐賀市内で1頭の乳牛から酪農をスタート。97年に神埼郡脊振村(現・神埼市)に移転。乳牛は春夏秋は脊振山麓の標高600mの牧草地で、雪が降る冬場はフリーバーン牛舎の中で、夏に刈り取った干し草を食べて育つ。ほかにホルスタイン牛乳もあり。共に65度30分殺菌、ノンホモジナイズ。乳脂肪分4.5%以上。大越/甘味は強い方ですが、味としては軽い方向性。本多/さっぱりしていますが、後味に乳脂肪を感じる。
森林ノ牛乳
1本500㎖748円/365日、森林の中で乳牛を自然放牧。牛が森に生える下草などを食べて牛乳を出し、蹄で倒木や枯れ枝がならされ、人々が森林の管理をしやすくなる。そんな「森林酪農」を提唱。乳牛はすべてジャージー種。季節ごとに牛のエサとなる森の草木が移り変わり牛乳の味も変化。63度30分殺菌、ノンホモジナイズ。乳脂肪分3.5%以上。大越/爽やかな味わいで口あたりがなめらか。本多/濃厚なパンチがあるのに後味はさっぱり。
みるくの黄金律
1本900㎖918円/牧場は家畜福祉と循環型農業を目指し、乾草自由採食、敷きワラにコーヒーやココアダストを使い、環境に配慮した作りになっている。朝搾りの牛乳はホルスタインの爽やかさ、ジャージーのまろやかさ、ブラウンスイスの後味のよさを活かすブレンド。週2回200本限定販売。65度30分殺菌、ホモジナイズ。乳脂肪分3.6%以上。大越/牛乳としてのバランスが非常にいいですね。本多/これでカフェオレを作ってみたくなりますね。
木次ノンホモ牛乳
1本900㎖713円/1978年、日本初の低温殺菌牛乳の流通化に成功。原乳は斐伊川流域に点在する酪農家から集めたものを使用。空気と水がきれいな奥出雲の家庭的酪農で育つホルスタインから質の高い生乳が生まれる。日々変化する生乳の生菌数や細胞数を検査、安定した品質を保つ。72度15秒殺菌、ノンホモジナイズ。乳脂肪分3.6%以上。大越/サラッとしているのに牛乳の甘味があります。本多/甘さが舌先に残るんですが、全体的にサラッ。
特別牛乳
720㎖×5本3,450円/「特別牛乳」とは「搾りたての牛乳を加熱殺菌処理しなくても安心、安全にそのまま飲める」と国の認証を受けた無殺菌牛乳または低温殺菌牛乳のこと。ジャージー牛の特別牛乳はこの白木牧場のジャージー牛乳のみ。毎日、放牧する20頭のジャージー牛から牛乳を搾る。65度30分殺菌、ノンホモジナイズ。乳脂肪分4.6%以上。大越/ファーストアタックは爽やかでスマート。本多/きれいな余韻で風味が上品に残ります。
小林牧場物語 さわやか牛
1本1000㎖453円/牧場は札幌市と江別市の境目、野幌森林公園に隣接。約20年前に牛を鎖でつながないフリーストールという牛舎のスタイルを採用し、牛にストレスを与えないよう飼育している。のんびり育ったホルスタインの乳はクリームが浮くので飲む前にボトルをよく振った方がいい。85度30分殺菌、ノンホモジナイズ。乳脂肪分3.8%以上。大越/飲み心地がよく、ナッティで軽いタッチ。本多/生の牧草を食べている感じがしますね。
四季むかしの牛乳
1本720㎖777円/「健康な牛からおいしい牛乳」をモットーに掲げる。提携酪農家により、24時間365日自然放牧飼育されたホルスタインとジャージーから搾った生乳を使用。夏は牧草を食べるため淡泊な、冬は干し草を食べるため濃厚な味わい。牛乳から季節の変化を感じることができる。63度30分殺菌、ノンホモジナイズ。乳脂肪分は日々変動。大越/コクは控えめで、キャラメルの風味がします。本多/黄味の強い色の割にサラッとしてますね。
本多康志さんと大越基裕さん
左:本多康志 右:大越基裕グラスを回し、色を眺め、口に含んでは味を確認する。

profile

大越基裕〈銀座レカン〉シェフソムリエ

北海道札幌の実家の隣が牧場だったことから、毎日新鮮な牛乳を飲んで育った、筋金入りのミルク通。豊かなボキャブラリーで牛乳の特徴を表現する。好みの牛乳は甘さ控えめでバランスのいいタイプ。

profile

本多康志〈ファロ資生堂〉フロアキャプテン

約10年前にソムリエの資格を取る前は、バリスタとしても活躍。+コーヒーでカフェオレに向くのか、+エスプレッソでカフェラテに向くのか、そんな視点でも牛乳を語れる、違いがわかる銀座の男。

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