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「褒めるところが一つもない…」そんな部下をやる気にさせるすごい"承認フレーズ"

  • 2022.12.1

“心理的安全性”の高い組織をつくるにはどうしたらいいのか。ZENTechシニアコンサルタントの原田将嗣さんは「日頃つかう言葉を変えるだけでいい。大胆な改革もコストをかけた投資も不要だ」という――。

※本稿は、原田将嗣『最高のチームはみんな使っている 心理的安全性をつくる言葉55』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。

オフィスで働くアジアのビジネスウーマン
※写真はイメージです
「いろいろありがとう」は抽象的すぎる

メンバーに助けてもらったら、「お礼のフレーズを伝えれば十分」――そう思ってはいませんか。

ありがとうには「理由を具体的に言い添える」と効果的です。

注意したいのが「いろいろありがとう」「もろもろお世話になっています」と、理由をひとまとめにした抽象的な「なんとなくのありがとう」です。

もちろん無反応よりはいいですが、せっかくお礼を言われるのなら、抽象より具体の「ありがとう」が嬉しいですよね。何より「理由つき」でお礼を伝えられた人は、次回も「より理想的な行動」をとりやすくなるんです。具体例で見てみましょう。

「この間の○○の議事録、参加できなかった僕にも、箇条書きがわかりやすくて助かった。うまくまとめてくれて、ありがとう!」

こんな風に感謝を伝えてもらったメンバーは、例えば次に議事録をつくるタイミングで、「今回も箇条書きでまとめてみようかな」と思うのはもちろん、もっと読み手にとってわかりやすいまとめ方を模索するかもしれません。

メンバーの成長につながるフレーズ

この「理由つきの、ありがとう」の大切さについては、企業研修でもよくお話ししています。

人は、自分が行動した直後に、理由をつけて具体的に感謝を伝えられると、「毎日使いたい! されたことを再びやろう」「もっと上手にやろう!」と感じます。

「この行動をとればいいんだ!」という「アンテナが立つ」と表現してもいいかもしれません。アンテナが立つと、あなたが感謝を伝えた行動を、次回もやってもらえる可能性が、それも、より高い質・精度を目指してやってもらえる可能性が上がります。つまり、理由つきの感謝はメンバーの成長に貢献するのです。メンバーが成長すれば、チーム全体のパフォーマンスも、おのずと向上していきます。

私自身もメンバーには「時間のない中でお客さまに電話して、うまく調整してくれてありがとう」とか「カレンダーを確認して候補日を挙げてくれてありがとう。助かったよ」など、対面、電話、メール、チャットツールで、いつも具体的に理由をつけて感謝を伝えるようにしています。

「自分で考えてから相談して」は、なぜいけないのか

質問や相談を受けたときにも、まずは「質問ありがとう」「相談ありがとう」「確認ありがとう」と受け止めて、相談してくれたことを歓迎してください。

ここで「自分でどうしたらいいかをまず考えてから相談してね」という実はNGな接し方についてお話ししておきます。

「NGなの?」と驚かれる方もいるかもしれません。少し前までは「若手の問いにすぐ答えると、考える機会を奪ってしまう。まずは考えさせること」と説かれていたものです。

しかし、まずは相談そのものが増え、そのうえで「私は○○だと思いますが、どうでしょうか?」と相談の仕方が上手になっていくというステップを踏んだほうがうまくいきます。

人材育成にはまずは相談の「量」。徐々に「質」の向上を目指すということです。

また、型が決まっていて「正解」を教えたほうが速いもの(例えば、社内ルールや名刺交換のマナーなど)は、ただ正解を伝えたほうが効率よく学べます。

正解がなく、思考したほうがよいものも、知識や経験がないなかで闇雲に考えるよりも、一緒に考えるというステップを挟んだほうが、より速く成長できたりするものです。

「相談してくれてありがとう。一緒に考えようか。私だったら、これとこれが大事なことだから、こんな風に考えるかな~。○○さんはどう思う?」と受け止めて、考え方を提示したり、「じゃ、今の話をもとにたたき台つくってみてね」とフォローしていったりするといいでしょう。

会議を持つアジアのビジネスパーソンの手で
※写真はイメージです
発言しやすい場をつくる大切な因子

×「そんなのムリでしょ」
○「その視点はなかった! 詳しく教えて」

メンバーから新しいアイデアが出てきたときは、この「おかえし言葉」を使ってみましょう。

「常識」にとらわれず、メンバー一人ひとりの強みや個性、新しい視点や発想を受け入れ、「まとはずれ」をむしろ歓迎する“新奇歓迎”の因子は心理的安全性をつくる1つの要素です。

もしあなたが何かを提案して、「そんなの無理に決まってる」と頭ごなしに否定されたら……。

「せっかく発言をしたのに……」「これからは余計なことはしないで、黙って指示されたことだけやっておこう」という感情が湧いてくることでしょう。

このように自分の考えやアイデアが潰されたと感じると「新奇歓迎」因子は低下してしまいます。

「発言そのものが歓迎される」「新しい視点・アイデアが歓迎される」チーム、いわば「新奇歓迎」因子の高いチームは、メンバーが発言したあと「発言してよかった」と感じられる「おかえし言葉」であふれています。

この「その視点はなかった!」はそんな「おかえし言葉」の代表格です。

さらに「詳しく教えて」のひと言をそこにつけ足すことで、メンバーは出したアイデアを、思いつきを超えてより深く考え始めます。単なるアイデアが実現可能な解決策になるかどうかの分かれ道なのです。

“アイ・メッセージ”で対話が始まる

相手(You)にかける言葉は、「アイ・メッセージ」(I Message)と「ユー・メッセージ」(You Message)の大きく2種類に分類できます。

日本語では主語が省略されることも多いですが、「私は~と思います」「私は~と考えます」のように「私は」から始まるのが、アイ・メッセージです。

この「その視点はなかった!」も主語を省略せずに表記すれば、「私には、その視点はなかった」と自分を主語にしています。

客観的真実や絶対的正解の提示ではなく「自分から見ると、こう思う」という意味になるため、相手と意見が異なる場合も「あなたは間違っている」という否定的なニュアンスで伝わることが少なく、「あなたはこう考え、私はこう考える」という、視点の違いから対話をスタートさせやすいのが、アイ・メッセージです。

会議を持つアジアのビジネスパーソン
※写真はイメージです
ユー・メッセージは反発を受けやすい

一方、アイ・メッセージの対義語がユー・メッセージです。「あなたはこうだよね」「あなたの意見は良い・悪い」というように、判断や評価を伝える言葉です。一般論や「真実」の観点から判断や批評する意味を持ち、言われたメンバーから(たとえ口には出せなくても)「そんなことない」「いえ、私は……」と否定や反発されやすいものです。

また、アイ・メッセージは「自分はこう思う」と、他人のせいにできない「発言リスク」をとっています。アイデアの発信者が「私はこうしたほうがいいと思います」と「発言リスク」をとっているのに、ユー・メッセージで自分の立場・スタンスを明確にせず、発言リスクもとらない状態だと、そこからは“対話‟は生まれにくいでしょう。

あなたは、アイ・メッセージで伝えていますか?

「上司が言うから……」や「会社はこう言っているから……」ではなく、自分を主語にした「私はこう思う!」を増やしていきましょう。

心理的安全性に不可欠な「4つの承認」を使い分ける

心理的安全性に不可欠な「承認」には、4種類:「①成果承認」「②行動承認」「③成長承認」「④存在承認」があります。

心理的安全性をつくるうえで、この「承認」とその使い分けは極めて重要です。

①成果承認(結果承認)

一番よくある承認です。行ったことの結果や成果を認めること。

「目標・予算達成への評価」「プロジェクト成功への称賛」などは、「成果承認」を具体化したものです。本人の努力やプロセスを見ていなくても、数値や結果だけ把握すればできる承認である一方、期末などの結果が出たタイミングで、結果を出せた人にしかできないのが「成果承認」です。

例:「今期の目標が達成できたね、おめでとう!」「素晴らしい企画書だね!」

②行動承認

「行動そのもの」を承認することです。成果がまだはっきりしない段階で、成果につながりそうな行動や、望ましい行動を増やすことができます。

行動承認は、結果・成果・質を褒めるものではありません。意見の良し悪しや挑戦の結果ではなく「発言・挑戦」という行動そのものへ、即座に承認を伝えます。

例:「会議の新しい進め方、ナイスチャレンジ!」「意見を言ってくれてありがとう!」

③成長承認

時間軸を広くとって、そのメンバーの過去と現在を比較し成長を認めることです。成果がなかなか出ないとき、人は正しい方向へ進んでいるのか不安になり、足が止まってしまいます。「成長承認」では、「正しい方向に成長できている」ことを伝えられます。行動の質と量、そして速度が向上したことに言及し、伝えるだけで大丈夫です。

例:「サービス説明、格段に上手になったよ!」
「企画書、このスピードで仕上げるとはコツを掴んだね!」

④存在承認

「そこにいること、そのもの」を認めることです。

さすがに「うちにいてくれてありがとう」「会議にいてくれてありがとう」と直球で伝える必要はありませんが、「存在承認」のコンセプトとしては、そういうことです。

相手をしっかり認識したうえでの会釈や名前を呼んで挨拶、相手のちょっとした変化への声かけなどが相当します。

特にキャリアが浅かったり、行き詰まっていたりするメンバーは、「存在承認」があると「自分はここにいていいのだ」という安心感を得られます。

例:「○○さん、おはようございます」
「あれっ、ちょっと元気ない? 大丈夫?」

褒めるところがない場合は…

「承認しましょう」と言うと、苦い顔でこう返されることがあります。

「褒めるところが、本当にないんですよ……」

原田将嗣『最高のチームはみんな使っている 心理的安全性をつくる言葉55』(飛鳥新社)
原田将嗣『最高のチームはみんな使っている 心理的安全性をつくる言葉55』(飛鳥新社)

熱心なリーダーであればあるほど、そうかもしれません。

これは実は承認の落とし穴で「①成果承認」を重視しすぎたときに陥りやすい罠です。

芳しい結果や成果を出し続けるのは、誰にとっても容易なことではありません。

ですから「①成果承認」だけでは「褒めないリーダー」になってしまいます。心理的安全性を高め、意見を言い、助け合い、チャレンジに満ちたチームをつくるためにも、「②行動承認」「③成長承認」「④存在承認」に目を向けることが大切です。

特にオススメしたいのが「②行動承認」に目を向けることです。相手が何かやってくれたとき、「おかえし言葉」で即座に反応。承認のシャワーを浴びてもらいましょう。

「③成長承認」については、定期的なふりかえりや、1on1の場で役に立つでしょう。

原田 将嗣(はらだ・まさし)
プロコーチ、ZENTech シニアコンサルタント
スターツグループで営業・人事・コンプライアンス部門での経験を経て、2020年プロフェッショナルコーチとして独立。現在はZENTechシニアコンサルタントとして心理的安全性を切り口にコンプライアンス意識の浸透・ダイバーシティの醸成や、デジタルトランスフォーメーションの土台となる組織づくりを支援。「組織・チームで使う言葉」をテーマにした研修を行っている。

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