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地政学者が教える、これからの日本が中国に飲み込まれず、GDP世界第3位を維持する戦略とは

  • 2022.11.27

さまざまなメディアで報道される国際情勢の今。表面的にはわからないその「ウラガワ」を戦略学者が読み取ります。

Internationalの旗
※写真はイメージです
国家のパワーは3要素で決まる

現状、国際政治における国家のパワーは1位アメリカ、2位中国、そして3位が日本とされています。しかし、こんなに活気のない国が、本当に世界3位なのか……。日本人の私たちですら疑問に感じるところではないでしょうか。

そもそも地政学の観点からいうと、国家のパワーを決める要素は3つ。①人口、②経済力(GDP)、③軍事力です。アメリカは経済力と軍事力でナンバーワンですが、最近は中国の軍事力が追いついてきて、経済力も肉薄しています。人口はもともとアメリカの3、4倍。一方、日本の場合、人口は今のところ劇的に減っているわけではなく、経済力もまあまあですから、一応3位にいますが、軍事力ははじめからないので、国際的なパワーは弱めといえます。軍事力という点では、ロシアは抜きんでています。人口は日本より少し多いぐらい、経済力もイタリアと同程度ですが、その強大な軍事力で、ヨーロッパ中を脅かすのです。

そう考えると、日本がこれから何とかしなければいけないのは、経済力を上げることです。しかし、どうも日本はいまだにバブル時の成功体験に縛られて、人材育成にも失敗し、どんどんサイズが小さくなっています。今はギリギリ3位で踏ん張っているけれど、だいぶ疲れてきているのが実情です。

ただ個人的には、日本は「文化を売る」ところにポテンシャルがあると希望を持っています。今、アメリカではトヨタの「MR2」という1980~90年代の車が大ヒットしていますし、アニメやマンガなどのソフトパワーも依然として大きい。私の外国人の友人も日本に来ると、アニメやゲームの聖地巡りをして楽しんでいます。ですから日本は生かせるところは生かして若返りを図りながら、やはり中国に飲み込まれないようにしないといけないということです。そのためにはどうすればよいのでしょうか。

対中国には横の連携がカギ

歴史を振り返ってみると、イギリスが「太陽の沈まない国」といわれて、世界の覇権を握っていたのが1860年代。しかし70年ごろから、ドイツやフランスが力をつけてきて、元子分のアメリカも経済力が圧倒的になってきました。これはどうしたものかと思いあぐねたイギリスの立てた戦略が、1902年の「日英同盟」でした。ユーラシア大陸をなんとか押さえるために、極東で頑張っている日本と手を結ぶしかないと、なりふりかまわず対抗措置をとったのです。

日本もバブル崩壊から約30年が経過し、2010年に名目GDPが中国に抜かれ、家電などは韓国の後ろに下がっています。イギリスのやり方に従うわけではありませんが、日本もそろそろ何か本格的に戦略を考えなければいけない時期に来ているのです。

そこで戦略のひとつとして考えられるのが、インドネシア、タイ、マレーシア、オーストラリアなど、ミドルパワーの国と連携することです。なかでもオーストラリアは、中国と対峙たいじしていく仲間は日本しかいないと日本に対する期待はすごく大きい。

米中のような大国にはなれないけれど、米中の間をうまく泳ぎつつ、中国にヤバイことはさせない、でもマーケットはうまく使わせてもらう、というところを他国と連携できる立場にあるのが日本です。横の連携をしっかりとることで、中国に独り勝ちさせないということ。

ただ中国もこれから人口が減り、経済力も落ちていくことが予想されます。そこで横の連携ができていれば、やがて中国が落ち始めたときに、中国自身がそれを学び転換していくだろうと考えられます。

ただ落ち始める国というのは、冒険主義に出やすいといわれています。たとえばお金をこれから失うとわかっているなら、ギャンブルなど危険なことをする。リスクの高いことをし始めるのです。日本もバブル直後は、冒険主義をやるんじゃないかとアメリカに警戒されていましたが、アメリカが同盟国だったため、結局やりませんでした。しかし今の中国は完全に敵対していますから、どうなることやら。やはりミドルパワーの国と連携し、お互いに中国をしっかり監視していこうねという戦略を立てていくのが、地政学から考えてもベストな気がします。

奥山 真司(おくやま・まさし)
地政学・戦略学者
戦略学Ph.D.(Strategic Studies)。国際地政学研究所上席研究員。カナダ・ブリティッシュ・コロンビア大学卒業後、英国レディング大学院で、戦略学の第一人者コリン・グレイ博士に師事。近著に『サクッとわかるビジネス教養 地政学』(新星出版社)がある。

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