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【ドイツ】「あれ?運休?」→電光掲示板には「この電車は運休しません」。“衝撃”の鉄道事情とは

  • 2023.1.27

ベルリン在住のライター、河内秀子です。

東京からこの街に移り住んでから、はや20年以上。だんだん慣れてきたのが鉄道の遅延です。日本の電車で数分の遅れに謝罪のアナウンスが入ると、逆に驚いてしまうほど。

今回は、昨年最大遅延率を更新したドイツ鉄道のお話です。

ドイツの鉄道は時間に正確…?

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筆者撮影

「ドイツ人が真面目で時間に正確」というイメージは、どこから出てきたものなのでしょうか。その真偽は謎ですが、鉄道に関していえば、ドイツはあまり時間に正確ではありません。

昨年ドイツ鉄道は定時運行率史上最低という不名誉な記録を作ってしまいました。1月から11月までの間、長距離での定時運行は平均で約65.6%。特に格安乗り放題チケットがあったために、大混雑が起こった6〜8月までの夏場の遅延がひどく、長距離列車の5分の1以上が15分以上の遅れ。

ドイツ西部、8月では長距離列車の半数以上が遅延していたそうです。筆者も見返してみたところ、2022年に50回近くドイツ鉄道で移動していたのですが、きっちりと定刻に目的地に到着し、乗り換えも無事にできた本数は数えるほど。遅延どころか、予定していた便がいつの間にか消えていたので、急遽飛行機で移動したこともあれば、予定の駅に停車しなかったこともあり、駅で頭を抱えたことも1度や2度ではありません。

5分遅れでも“定時運行”

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そもそも何をもって「定時運行」とするのか、その概念自体、ドイツと日本では大きな違いがあるのです。

ドイツ鉄道では遅れた時間が6分より少なく目的地に到着した場合は「定時運行(pünktlich)」とされます。つまり5分の遅延は遅延ではないのです。ドイツ鉄道のグラフを見ると15分以内の遅延は「定時」とすることもあるようです。

一番の問題は乗り継ぎがある場合。乗り継ぎがよくない場所では、一本乗り逃すとドミノ倒しのように次々と遅れていって、叫びたくなることもしばしば。

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筆者撮影。ドイツの鉄道はドイツ鉄道ほぼ一択。競争相手が少ないのもサービス低下の理由かも?これは格安列車「フリックストレイン」

ちなみにドイツ鉄道は、目的地駅到着が60分以上遅れた場合は、申請して受理されればチケットの額面の25%、120分以上からは50%が戻ってきます。しかしお金よりも失われた時間を返して欲しいのが本当のところです。

昨年、事故でバスが振替輸送をしている小さな町へと旅した時、ドイツ鉄道が遅延したためにバスに乗り遅れ、無人駅で立っていたらやるせない気分になってきました。しかし周りを見回してみるとドイツの人たちは慣れっこなのか、怒ってもしょうがないと諦めているのか、ただ無言で次のバスを待っていました。

電車が遅れても文句は言わない!

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筆者撮影

筆者のようにドイツ在住歴も長くなってくると、定刻で駅に電車が到着するだけで幸せな気分になることができます。駅の電光掲示板を見上げて遅延情報が出ていないだけで、今日は運がいいぞと思ってしまうほど。

オーバーだと思いますか?いやいや。ドイツ鉄道の面白いアナウンスを取り上げるTwitterアカウントで、ドイツ鉄道の電光掲示板の「この電車は運休しません!」という表示が取り上げられたことがあるくらいなのです。いや、運休しないのは当然でしょう、と思う方は多分まだドイツを知らない(かもしれない)。

またある時には、ドイツ鉄道が故障でストップしてしまった時に、乗車していたバンドがサッと楽器を取り出して駅で演奏をはじめ、ほかの乗客の怒りを和ませた話が別のTwitterで紹介されました。

「ドイツ鉄道さん、故障で停車するときは車内に歌手のいるバンドを同乗させてください!」

まとめ

列車の故障や不測の事故で起こる遅延に対して、鉄道のスタッフを怒っても、事態が良くなるわけじゃないんです。だからかドイツ鉄道が遅延のアナウンスを行っても、車内で声を荒げている人はほとんど見かけません。

到着できればなんとかなる。ドイツ鉄道は、皆さんを諦観の境地に連れて行ってくれるでしょう…やれやれ。

 

※記事内の情報は筆者購入時および記事執筆時点の情報です。
※記事内で紹介している投稿は投稿者の掲載の許諾を得ています。
※参考文献:独ZEIT Online Deutsche Bahn war 2022 häufig unpünktlich、独ZDF Auswertung 2022: So unpünktlich war die Bahn noch nie zdf.de



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筆者:河内秀子(Twitter
東京都出身。2000年からベルリン在住。ベルリン美術大学在学中からライターとして活動。

イラスト: vaguely(Instagram / HP
編集:TRILLニュース