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『ボタンちゃん』【今日の絵本だより 第333回】

  • 2022.11.22

kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、 ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。 こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめして いきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。

『ボタンちゃん』 小川洋子/作 岡田千晶/絵 PHP研究所 1430円

11月22日は、ボタンの日。 『ボタンちゃん』は、ちょうどこの日にぴったりの一冊。 白くてまん丸のボタンの女の子、ボタンちゃんが主人公のお話です。

ボタンちゃんは、アンナちゃんのとっておきのブラウスの、一番上にとまっています。 いつも一緒のなかよしは、ボタンホールちゃん。 ところがある日、ボタンちゃんをブラウスにとめていた糸が切れてしまって、 「あらあ。たすけて」 ボタンちゃんはコロコロコロと、子ども部屋の床を転がってしまいます。

そしてたどり着いたのは、薄暗いおもちゃ箱の裏側。 どこからか、小さな泣き声が聞こえてきます。 泣いているのは、アンナちゃんが赤ちゃんの頃に握っていたガラガラでした。 「こんなところでぼくはひとりぼっちです。」 と、ガラガラは、涙を流して嘆きます。 自分のカシャカシャという音で、泣き顔から笑い顔になった、小さな赤ちゃんのアンナちゃん。 あのアンナちゃんは、もう自分のことなど忘れてしまったのでしょうか、と。

「アンナちゃんはもう、 あなたがいなくても大丈夫になったのよ」 ボタンちゃんは、ガラガラに教えてあげました。 「自分で涙をふけるようになったの。 赤ちゃんのアンナちゃんを、 いっぱい笑わせてあげた、あなたのおかげね」 それからもボタンちゃんはお部屋を転がって、アンナちゃんのよだれかけや、ホッキョクグマのぬいぐるみ、タンスの裏やベッドの下に忘れられた、かつてのお友だちに出会います。

小さな子のそばにいつもいて、それでも、いつまでも一緒にはいられないものたち。 成長の喜びと、見送る側のせつなさと、大好きな持ち主への尽きせぬ思いと。 運よくママに見つけられ、元の場所、ブラウスの一番上に戻れたボタンちゃん。 でも、お話はそれからもまだ続きます。 忘れられたものたちのさみしさだけではない、誇らしさと心強さ。 「あなたのおかげね」 胸がいっぱいになるようなお話の続きを、ぜひ本を開いて確かめてみてください。

選書・文 原陽子さん はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。

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