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物価高で「インフレ手当」を支給する企業が増加 その狙いは?デメリットはないの?

  • 2022.11.14
「インフレ手当」を支給する企業が増加
「インフレ手当」を支給する企業が増加

ロシアによるウクライナ侵攻や円安の影響で食料品や日用品、光熱費の値上げが相次ぐ中、「インフレ手当」といった名目で従業員に特別手当を支給する企業が増えています。一時金のような形で支給するケースもあれば、給与に上乗せする形で毎月支給するケースもあるようです。円安で経営が厳しい企業が増える中、なぜインフレ手当を支給するのでしょうか。経営コンサルタントの大庭真一郎さんに聞きました。

将来的に収益力が向上する可能性

Q.物価が高騰する中、従業員に対して「インフレ手当」を支給する企業が増えていますが、なぜでしょうか。

大庭さん「『インフレ手当』とは、物価高騰の影響を受ける従業員の生活費を補助する目的で、企業が特別に支給する手当の総称です。一時金という形式で、一回のみ支給するのが一般的です。

企業がインフレ手当を支給する理由は、生活費に対する従業員の不安を解消することで、会社に対する帰属意識を高めさせ、定着率の向上につなげるためです。労働条件に関して他社と差異化を図ることで、今後の人材採用で優位な立場に立つ可能性も視野に入れています」

Q.インフレ手当を支給することで、従業員の定着率向上の可能性や、今後の人材採用が有利になる可能性が期待できるとのことですが、支給によるデメリットはないのでしょうか。

大庭さん「インフレ手当を支給することで、人件費の負担が増加します。さらに、一時金という形式で支払う特別手当であっても、社会保険料の計算から除外できないため、社会保険料の算定基礎の対象となる4月から6月に支給した場合、翌年の社会保険料の負担が増加します」

Q.エネルギー価格高騰などの影響で、業績が厳しい企業が増えています。経営が圧迫されるリスクがあっても、将来的な収益性向上のために、インフレ手当を支給した方がよいのでしょうか。

大庭さん「そもそも、財務面で余裕のない企業が無理にインフレ手当を支給するのは論外です。インフレ手当は、財務の余力の範囲内にとどめる必要があります。

インフレ手当を支給することで、企業に一時的な財務支出が生じますが、これにより従業員の定着率が向上すれば、新たに人を採用するためのコストや、採用した人に対する入社後の教育コストを抑制できます。

従業員の帰属意識が高まることで生産性が向上し、また採用活動で優秀な人材を確保できれば、企業の事業競争力が高まり、将来的な収益性の向上が期待できます。

つまり、企業にとって、インフレ手当の支給は、今後に向けた投資だと考えることもできるわけです。その場合、インフレ手当の支給による経営の圧迫を懸念する必要はありません」

Q.以前から、政府は企業に対して「賃上げ」するよう求めています。インフレ手当の支給は、賃上げと同等の効果があるのでしょうか。それとも、インフレ手当の支給とは別に賃上げもすべきなのでしょうか。

大庭さん「政府が民間企業に賃上げを求める目的は、消費力を高めることによる経済の活性化です。これに関しては、毎月支給される賃金を対象としています。

一方、インフレ手当は一時的な対応であり、先述のように、一時金という形式で一回のみ支給するのが一般的です。さらに、従業員が今までの日常生活を維持するためのものでもあるため、政府の賃上げ要求とは性質が異なります。

毎月支給される賃金部分の賃上げに関しては、固定的なコストの上昇につながり、加えて現在の労働法上では企業の業績に応じて賃金を減額することは難しいため、慎重に対応すべきではないかと私は考えます」

オトナンサー編集部

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