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解熱剤を使うと治りが遅いってウソ?ホント?解熱剤について医師が答えます

  • 2022.11.6
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熱があるときに役立つ“解熱剤”。今回はちまたに溢れる解熱剤の疑問点を『医療法人長生会 江東豊洲はるそらクリニック』の土屋裕先生に伺いました。

熱があるときは解熱剤を使った方がいいのでしょうか。

人の体が発熱するにはそれなりの理由があります。発熱の3大原因は感染症、炎症性疾患、悪性疾患です。感染症には新型コロナやインフルエンザといったウイルス感染から主に細菌感染により引き起こされる肺炎や膀胱炎など様々なものがあります。炎症性疾患は関節リウマチなどが有名ですが、自分の体を守るべき免疫が誤って自分の体(関節など)を攻撃してしまい炎症を起こすものです。悪性疾患は乳がんや胃がん、肺がんといった臓器の癌や、白血病など血液の癌もあります。これらはいずれも発熱しますので解熱剤が使われることも多いですが、解熱剤の使用は根本解決にはなりません。感染症なら病原体を倒す抗ウイルス薬や抗菌薬(抗生剤)などの治療、炎症性疾患は免疫を抑える薬、悪性疾患は手術や抗がん剤などによる治療がそれぞれ必要です。熱があるからと熱だけ下げて我慢してしまうと、病気が見過ごされたり重篤になってから見つかったりすることもあるので注意が必要です。
一方解熱剤を使った方がいい場面として、熱の原因が風邪などと分かっていて発熱や痛みがつらい場合です。特に合併症のある方やご高齢の方では熱が出るとかえって食欲が落ちたり脱水になりやすかったりするケースもあります。その場合には解熱剤で熱を下げ、楽になるよう薬でサポートするのもありでしょう。
最近では新型コロナの流行のため、風邪だと思い熱だけ下げて様子をみていたら家族や職場に新型コロナを広めていた、なんていうこともよくあります。発熱があれば今なら気軽に解熱剤を使う前に、まず病院を受診するか市販の新型コロナ抗原キットで新型コロナのチェックを実施するのがいいでしょう。

熱を下げると治りが遅いと聞きますが、本当でしょうか?

体が発熱する理由の一つは、発熱により体の中の細菌やウイルスを倒す免疫細胞などの活性を高め病原体を排除しやすくすることです。このため、熱が出たらせっかく免疫を高めているのだから無理に熱を下げない方がいいという意見もあります。では、解熱剤を使って熱を下げてしまうとかえって本当に病気の治りが遅くなるかというと、実際にはそういった臨床データはなく、現時点では「解熱薬を使ったほうがいい」「使わない方がいい」とは一概には言えず、解熱剤の使用はケースバイケースだと思います。経過をみればやがて自然に熱が下がってくることが期待できる風邪などの発熱については、特に元気なお子さんではあえて解熱剤を使わずに咳止めや鼻水止めなどのお薬で経過をみることも多いですし、それが無難です。しかし先述の通り合併症のある方やご高齢の方、また熱や痛みがつらくどうしてもお仕事や家事に影響がある方については、注意しながら頓服で解熱剤を使って症状を緩和していくことは問題ありません。ちなみに最近多くの皆さんが打たれている新型コロナワクチンやインフルエンザワクチンでは、解熱剤を使うことで抗体がつきにくくなるといったデータはないので、熱や痛みがつらかったら使用していただいて結構ですし、厚労省もそのようにすすめています。ただし、解熱剤による副作用を減らす観点から、ワクチン前に予防的に解熱剤を使うのではなく、熱が高くなってきたら使うのが無難でしょう。

市販の解熱剤、病院から処方される解熱剤はどのように違うのでしょうか?

現在市販されている解熱剤には病院から処方されるものと同じ成分のものが数多くあります。バッファリンルナJ®︎、ノーシンAc®︎、ラックル®︎、タイレノールA®︎などは病院で処方されるカロナール(アセトアミノフェン)と同じ成分です。ロキソニンS®︎も病院で処方されるロキソニンと同じ量、同じ成分です。薬価は市販薬の方が割高なりますが(タイレノールA®︎300mg 1錠73円、カロナール300mg 1錠6.9円)、(ロキソニンS 1錠54円、ロキソニン1錠9.8円)、病院に行くと初診料や処方箋代がかかってくるので、解熱剤だけを処方される場合にはトータルでさほど値段は変わらないかもしれません。ただし、新型コロナやインフルエンザの検査を受けたり、咳止めや鼻水止めなど他の薬も併せてもらったりする場合には病院に行って薬をもらうメリットもあります。
市販薬には解熱剤の成分に咳、痰、鼻水、だるさをとる薬が少量ずつ入った総合感冒薬というものもありますので風邪の様々な症状がある人はそういったものを利用するのもいいです。しかし、総合感冒薬は解熱剤やそれぞれの成分量が少なかったり、必要ない成分が入っていたり(そのためにあえて成分量が少ない)することもありますので、症状が強い時には病院を受診するのが良いでしょう。

解熱剤のメリットとデメリットを教えてください。

解熱薬の役割は熱を下げ、体力が消耗しすぎないようにすることです。 高熱は少し下がるだけでも自覚的にはだいぶ楽になることも多いものです。ただ、発熱のつらさ、消耗具合は人によって大きく異なります。38度の発熱が出てもへっちゃらな人もいれば、37度前後でもすぐにヘロヘロに弱ってしまう人もいます。つまり、熱が出ても消耗がさほどなければ解熱剤は使用する必要はありませんし、消耗が強ければ解熱剤を使うメリットはあると思います。
解熱剤は時に副作用として皮膚に発疹などのアレルギーや、まれにアナフィラキシーが出ることもありますし、いつまでも使うと胃や肝臓、腎臓に負担がかかることもあります。また、気管支喘息に蓄膿、鼻茸といった持病をあわせ持った女性では解熱鎮痛剤の種類によっては喘息発作が誘発されることがあります。解熱剤の使用にあたっては使用上の注意をよく読み、不明な点は薬剤師や医師によく確認してください。また、解熱剤を漫然と飲み続けると、原因が改善されて熱が下がったのか、解熱剤で熱を下げているだけなのかがわからなくなってしまうこともあります。解熱剤の使用は頓服か、連日飲むにしても数日で一度使用をやめて症状が回復しているか確認してみるのがいいでしょう。

教えてくれたのは

土屋裕(つちや・ゆたか)先生

日本内科学会総合内科専門医、日本呼吸器学会呼吸器専門医、アレルギー専門医。昭和大学関連病院や海外での勤務を経て、2020年に『医療法人長生会 江東豊洲はるそらクリニック』(東京都江東区)を開業。新型コロナ流行当初からいち早く発熱外来や新型コロナワクチンを行い、日々発熱診療に従事している。

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