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東京五輪汚職で元理事「4回目」の再逮捕…逮捕って何回でもできるの?弁護士に聞く

  • 2022.11.6
高橋治之元理事(2020年3月、AFP=時事、代表撮影)
高橋治之元理事(2020年3月、AFP=時事、代表撮影)

東京五輪・パラリンピックを巡る汚職事件で、大会組織委員会の元理事、高橋治之容疑者が10月19日に再逮捕されました。逮捕は4回目となります。「再逮捕」という言葉自体はよく聞きますが、4回目というのは、あまりないような気がします。同一人物を何度も逮捕することに問題はないのでしょうか。佐藤みのり法律事務所の佐藤みのり弁護士に聞きました。

事件の数だけ再逮捕可能、1つの罪には1回のみ

Q.そもそも、「逮捕」の法的根拠を教えてください。

佐藤さん「『逮捕』の法的根拠に関するものとして、まず憲法があります。憲法33条は『何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲(裁判官)が発し、かつ理由となっている犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない』と定めています。

それを受けて、刑事訴訟法は、逮捕に関するさまざまなルールを定めています。逮捕には、現行犯逮捕(刑事訴訟法212条、213条)、緊急逮捕(刑事訴訟法210条)、通常逮捕(刑事訴訟法199条)という3つの種類があります」

Q.「再逮捕」は一般に、どういった場合に行われるのでしょうか。

佐藤さん「一般に、ニュースなどにおいて、『再逮捕』という言葉は、『ある罪で逮捕された容疑者が、別の罪で逮捕された』という意味で使われています。

『再逮捕』が行われるのは、例えば、殺人事件などの重大事件で、すでに証拠が固まっている死体遺棄罪の容疑でまず逮捕し、後から殺人罪の容疑で再逮捕するようなケースがあります。死体遺棄罪の容疑で逮捕し、身柄を拘束することで、容疑者の逃亡や証拠隠滅、自殺などを防ぐことができ、その間に捜査を進め、殺人罪で逮捕するに足りる証拠を集めるという方法です。

他にも、次のようなケースがあります。

・覚せい剤の所持について逮捕し、その間に尿検査などをして使用の事実が明らかになれば、後から使用の容疑で再逮捕するケース

・オレオレ詐欺のように被害者が多数いる事件では、基本的に被害者の数だけ犯罪が成立するため、被害者Aさんに対する容疑で逮捕した後、別の被害者Bさんに対する容疑で再逮捕するケース」

Q.再逮捕は何度でもできるのでしょうか。

佐藤さん「再逮捕の回数には、法律上制限はありませんので、いくつもの罪を犯した容疑がある場合、事件の数だけ再逮捕することは可能です。ただし、実際には、多くても4、5回程度になると思われます」

Q.何度も再逮捕できるとすると、延々と身柄を拘束して取り調べをすることが可能となります。問題ないのでしょうか。

佐藤さん「1つの罪について逮捕・勾留できるのは、原則1回だけです。刑事訴訟法上、逮捕・勾留によって身柄拘束できる時間は、最長23日間というルールが定められており、延々と身柄を拘束して取り調べをすることは禁じられています。同じ罪について何度も逮捕・勾留できるとすると、法律で身柄拘束できる時間を定めた意味がなくなってしまうため、1つの罪について何度も再逮捕することはできません。

先述したように、ニュースなどで報じられる『再逮捕』は、容疑者が2つ以上の事件の容疑をかけられた場合に、前に逮捕した容疑とは別の容疑で逮捕することです。例えば、A罪で逮捕され、B罪で再逮捕された場合、A罪に関する取り調べは、A罪での身柄拘束期間に限って行うことができ、B罪での身柄拘束期間中に、B罪について取り調べず、A罪について調べ続けるといったやり方は許されないと考えられています。

従って、『再逮捕』が繰り返されたとしても、それぞれの罪について、法定された期間内で取り調べができるだけであり、それを超えて1つの罪について延々と取り調べが可能となるわけではないため、人権侵害にはあたらないと考えられています」

Q.再逮捕の回数が多くなるのは、どういった場合でしょうか。

佐藤さん「再逮捕の回数が多くなりがちなのは、被害者の数が多い事件や、組織的な事件などでしょう。先述したオレオレ詐欺のような犯罪の場合、被害者の数も多く、大きな犯罪組織が絡んでいることが多いため、全容解明に時間がかかります。

そこで、ある被害者に対する容疑で逮捕した後、別の被害者に対する容疑で再逮捕し、捜査の時間を稼いだり、新たに判明した被害者の被害について取り調べたりすることがあります」

オトナンサー編集部

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