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予測できない驚きのディナー【星のや東京】秋の「Nipponキュイジーヌ ~発酵~」

  • 2022.10.28
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日本有数のオフィス街として知られる東京・大手町にある高級温泉旅館【星のや東京】。発酵食品とフレンチの調理法を融合させたコースディナー「Nipponキュイジーヌ ~発酵~」の秋メニューが登場しました。料理に合わせたお酒のペアリングも意表をついたセレクション。最後の最後まで楽しめます。

旨味を引き出す発酵食材が隠し味

味噌や醤油、お漬物や納豆など、古来より発酵食材に親しんできた日本人。世界的な賞を受賞してきた浜田統之総料理長が考案した発酵食材を活かした料理の数々は、星のや東京に宿泊するゲストだけが味わえる特別な体験です。お酒はお任せのペアリングでいただきました。

予測できない驚きのディナー【星のや東京】秋の「Nipponキュイジーヌ ~発酵~」

▲ダイニングはカウンター席のほか、10部屋の個室や半個室を用意

最初のお酒はシャンパンでもスパークリングワインでもなく、秋らしい洋梨のシードル「ラ・ガロティエール ポワレ」という意外性。この日のディナーは小さな予想外からの始まりです。爽やかな甘味とさり気ない洋梨の風味は、続いて運ばれる最初の料理「<丸> 竹炭チュイル/すっぽんのパートブリック包み」とのペアリングにもピッタリです。

予測できない驚きのディナー【星のや東京】秋の「Nipponキュイジーヌ ~発酵~」

▲フランス・ノルマンディで醸造された洋梨のシードル「ラ・ガロティエール ポワレ」から秋のディナーが始まります

さらに続く驚きが、ラグビーボール型の木の器。標高1,400mから1,800mに広がる長野県の清水牧場で生産された「バッカスチーズ」に竹炭を加えた、真っ黒な薄焼きのチュイルと、ピックに刺したすっぽんのパートブリック包み。香ばしく焼いたチーズに、シュワッと弾ける洋梨のシードルがよく合います。

予測できない驚きのディナー【星のや東京】秋の「Nipponキュイジーヌ ~発酵~」

▲ 「<丸> 竹炭チュイル/すっぽんのパートブリック包み」

<丸>に使われる特異な器は、旅館建設時に出土した大名屋敷の炭化した柱で、藩政時代に大老を多数輩出した名門酒井家の上屋敷の部材です。白い部分は新しい木材を使い、時代の重なりを表わします。

予測できない驚きのディナー【星のや東京】秋の「Nipponキュイジーヌ ~発酵~」

▲出土した庄内藩酒井家の屋敷の柱と、頭が片方に折り曲げられた四角い断面の和釘

冬眠前の秋が旬のすっぽんをミンチ状にしてべっこう醤油で味つけし、クレープ状のパートブリックで包んだ一品。パリパリの皮に、際立つ旨味と優しいほろ苦さを味わいました。出土した和釘は刀と同じ製法で作られ、数百年ものあいだ芯まで錆びないと言われるもので、鍛冶職人が打ち直してピックとして使います。

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▲「すっぽんのパートブリック包み」は、江戸時代の和釘を打ちなおしたピックでいただく、特別感のある体験です

ミンチにした肉と血を使ったフレンチ「ブーダンノワール」は、パートブリックに使われなかったすっぽんの部位を利用。レバーを思わせる、滋養あふれる力強い美味しさです。甘酸っぱい洋梨のピューレを下に敷き、小石に乗ってサーブされます。

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▲すっぽんを使った滋養あふれるブーダンノワール

小さな料理に秘めた多彩な味

「<石> 五つの意思」は、「酸味・塩味・苦味・辛味・甘味」の五味を、左から順に前菜、スープ、魚、メイン、デザートと、コース仕立てで表現。全てに発酵食材を使い、際立つ味と芸術的な盛り付けを楽しめます。

麹に漬けた東北伝統の三五八(さごはち)漬けを大根のピクルスで巻いた「かますのルーロー」を手始めに、トマト味噌を使ったルビー色の「ボルシチ」、糠漬けの秋刀魚で作った自家製バターをミンチの秋刀魚と合わせてほろ苦さを味わう「コロッケ」、実山椒の辛味がアクセントの「ブフ・オ・キャロット」、栗とレバーのペーストに、豆腐をもろみ漬けした熊本の発酵食材「豆酩(とうべい)」で甘じょっぱく仕立てたデザートなど、そのどれもが個性際立つ味つけです。

予測できない驚きのディナー【星のや東京】秋の「Nipponキュイジーヌ ~発酵~」

▲「<石> 五つの意思」は季節ごとに素材や味が変わる「星のや東京」の名物料理

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▲2番目の塩味(えんみ)は、球体にトマト味噌とベーコンを合わせたボルシチが入り、口の中でトロリとしたスープが広がる一品

4番目は可愛らしい容姿にひそむ【辛味】。牛肉とニンジンを煮込んだフランスの家庭料理「ブフ・オ・キャロット」を、指でつまめるほど小さく表現。ニンジンが巻かれた牛テールには、大豆を麹菌で15か月ほど発酵させた浜松の「浜納豆」で旨味を加え、実山椒の辛味がちょっとシビレるアクセント。

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▲小さいながらも多彩な味が凝縮した【辛味】「ブフ・オ・キャロット」

<五つの意思>とのペアリングはワインではなく、意表を突いた日本酒。杉玉発祥として知られる奈良県の大神神社の門前で1660年に創業した今西酒造の「みむろ杉 木桶菩提もと 南木桶壱号」。吉野杉の木桶を使い、桶ごとの味のちがいをウリにします。香りが高くたいへん美味しいお酒ですが、主張しすぎることがなく、多彩な味が複雑に入れ替わる<五つの意思>によく合いました。

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▲<五つの意思>にペアリングした「みむろ杉 木桶菩提もと 南木桶壱号」

意表を突かれるペアリングのお酒

<五つの意思>に続く2皿の魚料理とメインディッシュは、どれも趣向を凝らした味。そこへペアリングするお酒も驚きの連続です。

脂ののった戻り鰹の3種類の部位を、それに合わせて味つけを変えた酒盗のソースで味わう「<逢> 鰹の藁焼き」。右から、脂の乗った鰹の腹は、鰹の酒盗と茄子を合わせたさっぱりめのソースで。中央の赤味には、にんにくとグリーンオリーブを使った酒盗のペースト。左は血合いも含んだ背の切り身を醤油漬けにして香ばしく味を付け、梅肉と粒胡椒を酒盗のソースに混ぜて、赤紫蘇のような香りのスパイス「スマック」と共にいただきます。

予測できない驚きのディナー【星のや東京】秋の「Nipponキュイジーヌ ~発酵~」

▲「<逢> 鰹の藁焼き」は3種類の部位をちがう味つけで

魚料理と言えば白ワインですが、鉄分を多く含む赤身の鰹には赤ワインをチョイス。魚料理が合う赤ワインとして、黒葡萄のマスカットベリーAにこだわる山梨のワイナリー、ドメーヌ・ヒデの「べべ 2019 マスカットベーリーA」をペアリング。酸味がしっかりたつ新鮮な味わいに、オーク材の古樽を使った複雑なニュアンスが加わり、酒盗ソースの鰹にベストマッチです。

予測できない驚きのディナー【星のや東京】秋の「Nipponキュイジーヌ ~発酵~」

▲赤身の鰹の濃厚な味わいに合わせた赤ワイン「べべ 2019 マスカットベーリーA」

2枚重ねた平目は、ホウレン草や糠漬けにしたポルチーニ茸を巻き、海老とホタテのムースで包み、発酵バターを使ったパイ生地で包み焼き。そこへ、乳酸菌の酸味が効いた古漬けのエシャロットを加えたバターソースをかけて完成です。ほっこりとした平目に、バターの風味やポルチーニ茸の香り、魚介のムースや酸味の強いソースなど、味のグラデーションを楽しめます。

予測できない驚きのディナー【星のや東京】秋の「Nipponキュイジーヌ ~発酵~」

▲魚料理はパイ生地で包んだ「<包> 平目のアンクルート」

白身魚の平目なら白ワインで行くところを、さらにシャンパンという踏み込み方。フルーティでふくよかな味わいの「ボランジェ スペシャル・キュヴェ」が供されます。シャンパンは乾杯酒という固定観念に囚われず、コースの中盤で、ホクっとした白身魚にシュワッと弾けるアクセントを生む意外性。007ジェームズ・ボンドが愛するシャンパンとしても知られ、ペアリングにちょっとしたアクションシーンを加えます。

予測できない驚きのディナー【星のや東京】秋の「Nipponキュイジーヌ ~発酵~」

▲魚料理にシャンパンを合わせた「ボランジェ スペシャル・キュヴェ」

秋のメインディッシュは「<薫> 牛フィレと茸のコンソメ」。炭火で焼いて香りをまとわせた和牛は柔らかなミディアムレア。海老芋や高温で熟成させた黒ごぼうをはじめ、杏茸やアミガサタケなど、付け合わせも風味豊か。そこへ、牛肉をベースにキノコや徳島特産の赤黒い豆味噌「ねさし味噌」を使った旨味たっぷりのコンソメスープが、南部鉄器の鉄瓶から注がれます。

予測できない驚きのディナー【星のや東京】秋の「Nipponキュイジーヌ ~発酵~」

▲付け合わせも主役級の味。「<薫> 牛フィレと茸のコンソメ」は、一皿で様々な味を楽しめます

牛フィレとのペアリングは、ジャンボール・ミュジニー村のブルゴーニュワイン「プルミエ クリュ レ グリュアンシェール」。2014年物のヴィンテージワインで、ミディアムフルの辛口。やや強めの酸味と柔らかな余韻が、豊かな味わいのコンソメスープに浸る牛フィレや付け合わせを引き立てます。

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▲牛フィレとのペアリングは2014年物の「ジャンボール・ミュジニー プルミエ クリュ レ グリュアンシェール」

デザートにも仕掛けあり!

“にごる”という字を据えたデザート「<濁> ぶどう」は、どぶろくを使ったアイスクリームとぶどうのグラニテ(シャーベット)。この日のぶどうはピオーネとシャインマスカットが使われ、さっぱりした甘みが口の中に広がります。

予測できない驚きのディナー【星のや東京】秋の「Nipponキュイジーヌ ~発酵~」

▲初めのスイーツはお口直しの「<濁> ぶどう」

そして<濁>の意味が明かされるのは、日本酒の原型とも言われる濁り酒のどぶろく。洗練されたフレンチデザート然としたぶどうのグラニテに、どぶろくを合わせるのは想像の範囲外!

予測できない驚きのディナー【星のや東京】秋の「Nipponキュイジーヌ ~発酵~」

▲シャーベットのペアリングは福岡県 山口酒造場の「庭のうぐいす 鶯印のどぶろく」という意外性

しかも、シャーベットはそのまま食べてもいいのですが、半分食べたらどぶろくを注ぐ“禁じ手”を披露。ぶどうのフルーツ感あふれる甘酸っぱさに、どぶろくの乳酸菌の甘酸っぱさが重なるうえ、アルコールの風味もまみえ、複雑な味わいの大人のデザートに深化。

そこへさらに“シークレットのひと手間”が加わって、驚きと美味しさが頂点に。デザートまで愉しませる、サプライズ満載のペアリングでした。

最後の品はモンブラン。“白い山”という意味の原点に立ち返り、ゆり根とホワイトチョコレートをペーストにした真っ白なクリームが使われます。ナイフを沈めると、中からベルガモットとかぼすで香りづけしたアールグレイのソースがあふれ出ます。

予測できない驚きのディナー【星のや東京】秋の「Nipponキュイジーヌ ~発酵~」

▲純白の山を思わせる「<百> ゆり根のモンブラン」。栗よりもまろやかでソフトな味わいを満喫しました

予測できない驚きのディナー【星のや東京】秋の「Nipponキュイジーヌ ~発酵~」

▲最後のお茶は、クロモジ茶と抹茶から選べます

味噌や酒盗、納豆といった日本の伝統的な発酵食材をつかった奥行きのあるフレンチは、斬新で芸術的。予測不能で驚きに満ちたペアリングも【星のや東京】ならではの遊び心とおもてなし。「Nipponキュイジーヌ ~発酵~」秋のディナーを、ぜひ味わってみてくださいね。<text&photo:湯川カオル子 予約・問:星のや東京 https://hoshinoya.com/>

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