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「子や孫のためにできるだけ多くのお金と資産を残したい」FIREを実現したお金のプロがそう思う深い理由

  • 2022.10.22
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早期リタイアをして自由に生きていきたいと考える人は多い。ファイナンシャルプランナーの井戸美枝さんは「FIREで幸せになれるのは本人だけではありません。最も大きな恩恵を受けるのはその子供や孫たちなのです」という――。

※本稿は、井戸美枝『お金がなくてもFIREできる』(日経プレミアシリーズ)の一部を再編集したものです。

リビングルームで木製ブロックを使って遊ぶ子供たちと、見守る両親と祖父母
※写真はイメージです
嫌な人と顔を合わせることなく好きなように生きるには

FIREはFinancial Independence, Retire Early の略です。FIは経済的自立、REは早期引退、2つの考えを連ねたものです。ここまではご存じの方も多いでしょう。

実は、FIとREは関係していますが、まずはFI(経済的自立)を確立した後の選択肢の1つとしてRE(早期引退)があるという関係です。

Financial Independence――経済的自立、お金での独り立ち。

私がお金に目覚めたのは23歳のときです。

学校を卒業し正社員として働いたのですが、体を悪くして会社を辞めました。人間関係が辛く、会社で働くことができなかったのです。当時は両親と一緒に暮らしていたので生活に困ることはありません。しかし、「これから先どうしよう」と思い、嫌な人と顔を合わせたり嫌な場所に行くこともなく、自分の好きなように生きるにはお金はどれくらいあればいいのかを考え始めました。これが、Financial Independence(経済的自立)への出発点となったわけです。

いつでも早期引退ができるだけの金銭的な準備を

FIREを手に入れたいと思うなら、まずは自分自身をよく知ることです。

ごく限られた人だと思いますが、会社や組織団体のトップとなることに生きがいを感じ心身共にイキイキと活躍できる人には、FIREは問題にもならないと思います。

ほとんどの人は、若いときに自分自身を正しく捉えることはなかなか難しいものです。私も、自分自身を冷静に客観的に見つめることができるようになったのは最近のことです。人生まさに紆余うよ曲折、限りなく曲がりくねっています。そのためにも、まずはFI(経済的自立)の実践的な手法と知識を身につけ、いつでもRE(早期引退)できるだけの金銭的な準備をしておくことが重要となってくるのです。

「こんな会社、辞めてやる!」という踏ん切りをつけることができるのは、お金の裏付けがある場合だけ。なければ単なる冒険に終わってしまいます。

生涯お金に困らない3つの原則

ここで、生涯を通じてお金に困らないための3つの原則をお教えしましょう。それは、

①収入の範囲内で生活をする
②借金はしない
③この2つの原則を一生守り通す

です。

いたって当たり前のことですが、問題は、この原則を実践するのは一人ひとりの人間ということです。この世に自分という人間は一人だけです。性格や身体的特徴が異なるのと同様に、経済的自立、お金での独り立ちは、人によって「答え」は違っています。兄弟姉妹であっても、同じ「答え」はありません。ですから、FIは正確にはPersonal Financial Independence(PFI)――個々人固有の経済的自立なのです。

自分自身に合ったものは、自分の手でつくり上げるしかありません。そこで、他者の視点や指摘に耳を傾け、自分のことをより深く知り、自分に合った手法をつくり出していく必要があるのです。

家の購入を考えているカップル
※写真はイメージです
お金に対する「暗黙知」を反復練習

『お金がなくてもFIREできる』では、「ライトFIRE」の考え方、実践術を解説していますが、もうひとつ大きなメッセージをこめています。それは、富裕層と思われる方々が家族や親族、親しい人たちの間で共有しているお金に対する「暗黙知」に気づいてほしい、知ってほしいということです。

暗黙知とは、「暗黙」の了解事項です。たとえば、そのひとつにお金のことは人前では決して話さないということがあります。目指そうとしている「お金」を持っている人からまず学ぶべきは、この生活習慣と化している暗黙知です。

こうした暗黙知を持たない場合、意識して学び、生活習慣として日々の生活の中に無意識のレベルまで落とし込む必要があります。そのために有効な方法は、何度も繰り返す、定期的に見直しを行いながら身についたかを確認していくことです。

本書で紹介している事柄も暗黙知になるものですから、手元に置いて折りに触れては実践できているかを確認してください。

これは反復習得するしかありません。時間もかかりますが、身につけることができれば、生涯のものとなります。水泳と同じで、小さい頃から親がしつけてくれれば小学校に上がっても体育の授業で苦労することはありません。一方、泳げない子は小学校での努力が求められるわけです。泳げることによって海を怖がることもなく、水深30メートルの世界やヨット乗船など新たな体験をすることもできます。

お金の知恵も「遺産」になる

「子供にはお金を残すな、自分のためにお金は使い切れ」と言う方がいらっしゃいます。

けれども私は子や孫のために残せるのならできるだけ多くのお金や資産を残そうと思っています。そして、それ以上に大切なことは、子や孫がお金に関する知恵を身につけることだと思っています。お金の暗黙知です。

泳げることや車を運転できることと同じで、お金の知恵を身につけていることは大きなメリットを持ちます。お金についての暗黙知は、幼い頃からの躾の一部として身につけているのが理想だと私は考えています。

人生では往々にして、条件反射的な対応が必要な瞬間があります。適切な判断と実行が求められる緊急時や非常事態時に、自然と反射的な対応ができることは、何物にも代えがたいほど重要なものです。お金に関する知恵もこれにあたります。

この暗黙知を幼い頃から身につけることができれば、目には見えませんが、これほどの遺産はないと思います。

FIREの恩恵を最大に受けるのは子や孫

さらに、FIREを自分一人のものだと限定すると、「まあ、ここまででいいか」と自分自身に妥協してしまう可能性が大きくなります。しかし、将来のある子や孫のためとなると、向き合う心構えから異なってきます。妥協することもほぼなくなるでしょう。

「お金を増やす、増えるのは時間との関数」です。資産をつくり出すには当然、時間がかかります。実は、資産家の家に生まれるということは、その資産をつくり出す時間を祖父母や父母が費やしてくれたということで、祖父母や父母の時間をお金という形で受け取っているのです。生まれたときからFIREを考える必要のない人は、自由気ままに過ごすことができる「時間」をお金という形で受け取っているのです。

木製ブロックに「FIRE」の文字
※写真はイメージです

FIREの恩恵を最大に受けることができるのは、実は子や孫だということに気づいていただきたいのです。FIREを目指して生きるということは、実は、次の世代を担う子供たちの未来、新しい未来を生み出すことができる可能性を膨らませているということなのです。

自分だけのFIREは、ある意味、切ないものです。目標がレベルダウンしたり、FIREそのものも必要ないと思ってしまうかもしれません。

今の自分と違う人生を子供に託すことも可能

一方、今の自分と違った人生、その人生を子供に託すことができるとすれば、それは未来を実感すると同時に共有することにもなります。

井戸美枝『お金がなくてもFIREできる』(日経プレミアシリーズ)
井戸美枝『お金がなくてもFIREできる』(日経プレミアシリーズ)

もちろん、子供たちの人生がどのようなものになるかはわかりません。しかし、少なくとも子供がお金の心配をしない時間を過ごせるということは、自分とは異なった人生を歩んでもらえるということです。そのことをちゃんと子供たちにも伝えておくべきでしょう。

このように考えると、FIREが対象とする人生というスパンは、5年、10年というものではなく、30年、50年、孫や孫の子までなら100年という単位です。

過去に希望は見出し得ませんが、まだ見ぬ未来へは希望を見出すことができます。

子や孫に限定する必要はありません。あなたが大切と思うすべての人が対象となります。そして、できるならFIREに関することを大切な人たちに伝えていただきたいです。FIREは隠してするようなことではないからです。

RE(早期引退)の例外が「天職」

私は、自分の好きなこと、自分の心と体に合う仕事で、お金を得られる仕事を「天職」と考えています。ほんの少し心身のしんどさがあっても好きだからできる仕事です。天職についている限りは、RE(早期引退)はありません。死ぬまで仕事をしていればいいだけです。

そこで思い浮かぶのが、平均寿命が30歳ほどといわれる江戸時代に88歳まで第一線で画業活動を続けた葛飾北斎です。彼は生涯現役で最先端を走っていました。

そうはいっても、天職を見つけ出せない、つくり上げられないのがほとんどの人でしょう。まずは、全身全霊をかけてFIREに取り組み、その過程の中で天職を得ることができればいいのです。実は、私は現在、天職につけているのかなと感じています。しかし、現在の自分に至るまでには、FIREは不可欠でした。

井戸 美枝(いど・みえ)
ファイナンシャル・プランナー(CFP認定者)
関西大学卒業。社会保険労務士。国民年金基金連合会理事。『大図解 届け出だけでもらえるお金』(プレジデント社)、『一般論はもういいので、私の老後のお金「答え」をください 増補改訂版』(日経BP)、『残念な介護 楽になる介護』(日経プレミアシリーズ)、『私がお金で困らないためには今から何をすればいいですか?』(日本実業出版社)など著書多数。

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