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神秘的なスイスの山々を舞台に一人の女優の葛藤を描く『アクトレス~女たちの舞台~』

  • 2015.10.30
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スイスのエンガディン地方で見られる“マローヤのヘビ”現象をご存知ですか? この地域特有の気象現象で、初秋の早朝に現地を訪れた人は、運が良ければ、マローヤ峠をヘビが這っているような奇妙な雲を見ることができます。 今回は、エンガディン地方の景勝地、シルス・マリアを舞台にした、公開中の映画『アクトレス~女たちの舞台~』を紹介します。「マローヤのヘビ」という舞台に出演して成功した大女優が、題名の由来となった気象現象が起きる場所を訪れる物語です。

かつて一世を風靡した大女優、マリア・エンダース(ジュリエット・ビノシュ)。彼女は、新人だった頃に自分を発掘してくれた劇作家のヴィルヘルム・メルヒオールが功績を称えられる授賞式に出席するため、スイスのチューリッヒに向かいます。

ここ数年、公の場に姿を見せていないメルヒオールは、前もって賞を受け取ることを拒否。そのため、マリアが代理で賞を受け取ることに。さらに彼は、マリアを世に送り出した舞台「マローヤのヘビ」にちなんで、シルス・マリアまで来るように彼女に指示してきます。

ところが、移動中の列車の中で、マリアはマネージャーのヴァレンティン(クリステン・スチュワート)から、メルヒオールが亡くなったと知らされます。

メルヒオールの訃報に衝撃を受けるマリア

マリアはショックを受けつつも、授賞式に出席。その夜、新進演出家のクラウス(ラース・アイディンガー)がマリアに面会を求めてきます。舞台「マローヤのヘビ」のリメイクをやるので、マリアに出演してほしいと頼むクラウス。ただし、今回のマリアの役柄は、かつて演じた20歳の主人公シグリッドではなく、シグリッドに翻弄され、自殺する40歳の会社経営者ヘレナの役でした。

シグリッドへの思いが強いマリアは、依頼を受けるか悩みますが、ヴァレンティンは彼女にヘレナを演じるべきだと勧めます。

複雑な思いを抱える中、舞台の練習を始めるマリア

シグリッド役に選ばれたのは、ハリウッド映画で活躍する19歳の女優、ジョアン・エリス(クロエ・グレース・モレッツ)。ヴァレンティンはジョアンが良い女優だと褒めますが、マリアは自分がもう若くないことを突きつけられたように感じて、複雑な心境を抱きます。

それでも、「マローヤのヘビ」に出演するための役作りと練習には、シルス・マリアで過ごすことが一番だと考えるマリア。ヴァレンティンを相手にセリフの練習を重ねながら、“マローヤのヘビ”現象を見られる日を待つのですが…。

神秘的で美しいシルス・マリア

シルス・マリアは、高級山岳リゾート地で知られるサン・モリッツからバスで20分ほどのところにある、標高1815mの小さな集落。車の入場が規制されているため、静寂が保たれています。神秘的な湖・谷・山々の織りなす美しい風景は、日常とはかけ離れた別世界のようです。

トーマス・マン、ヘルマン・ヘッセ、ジャン・コクトー、マルク・シャガール、マルセル・プルーストといった多くの作家や詩人・芸術家たちが、創作のインスピレーションや安らぎを求めてシルス・マリアを訪れたとか。なかでも、晩年をここで過ごした哲学者ニーチェは、この地で数多くの重要な作品を着想。現在、彼の滞在した家は記念館になっています。

マリアを演じているジュリエット・ビノシュは、ヨーロッパやハリウッドで活躍する国際派の女優で、本作では彼女自身を彷彿とさせるような有名女優のマリアを演じているのが興味深いです。人気若手女優のクリステン・スチュワートとクロエ・グレース・モレッツの好演も見どころです。

“マローヤのヘビ”現象は、マリアの心をどのように動かすのでしょうか? 女優たちの熱演と、シルス・マリアの雄大な景色に圧倒されながら、ぐいぐいと引きまれる映画『アクトレス~女たちの舞台~』。本作を観た後は、シルス・マリアを訪れて、“マローヤのヘビ”を自分の目で見たくなることでしょう。

『アクトレス~女たちの舞台~』

10月24日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテほか全国順次公開

(c) 2014 CG CINÉMA – PALLAS FILM – CAB PRODUCTIONS – VORTEX SUTRA – ARTE France Cinéma – ZDF/ARTE – ORANGE STUDIO – RTS RADIO TELEVISION SUISSE – SRG SSR

配給:トランスフォーマー

公式サイト:http://actress-movie.com/

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