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オスが3種類いる鳥がいる!? 生物のオスとメスは「グラデーション」という新説。

  • 2022.10.17
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生物にはオスとメスという別個の性が存在するのではなく、オスとメスとはグラデーションのように、連続する特性なのではないか――近年、生物学者の間でこのような驚きの仮説が立てられている。

『オスとは何で、メスとは何か? 「性スペクトラム」という最前線』(NHK出版)は、性分化のメカニズムを研究している九州大学大学院教授・諸橋憲一郎さんが「性スペクトラム」(スペクトラム=連続体)の研究の最前線を解説した本だ。

近年LGBTQが話題になっているが、オス・メスと判別するのが難しい場合があるのは、実は人間だけではない。たとえば本書によると、エリマキシギという鳥には、縄張りを有するこげ茶色の襟巻きのオス、羽色に白い部分のある縄張りを持たない「サテライト型」のオス、さらにメスと形態がほとんど同じ「メス擬態型オス」と、なんと3種類のオスがいるそうだ。

さらにアカトンボには「オス擬態型メス」、ニホンカワトンボには「メス擬態型オス」が存在する。シギの場合もトンボの場合も子孫を残すための戦略ではあるが、興味深い性スペクトラムの例だ。

本書では他にも、何度も性転換する魚、「卵精巣」をもつモグラ、ホルモンで部下を操るネズミの女王など、さまざまな生物たちの性の様相を解説。そしてやがて導き出されるのは、「生物の性は生涯変わり続けている」「全ての細胞は独自に性を持っている」という驚きの事実だ。

最終章では「脳の性」に焦点をあて、性自認と性指向のスペクトラムについても論じている。多様な性に注目が集まっている今、生物学からの新たな視点として、ぜひ読まれるべき一冊だ。

【目次】
第1章 雌雄は果たして分けることができるのか?
第2章 性は生涯変わりつづけている
第3章 オス/メスはどのように決まるのか? ――「性決定遺伝子」の仕組み
第4章 オス化とメス化はどう進むのか ――「性ホルモン」の力
第5章 全ての細胞は独自に性を持っている
第6章 「脳の性」という最後の謎

■諸橋憲一郎(もろはし・けんいちろう)さん
1957年生まれ。九州大学大学院医学研究院教授。九州大学大学院理学研究科博士課程修了(理学博士)。九州大学大学院基礎生物学研究所教授を経て現職。「性スペクトラム」という新学術領域研究の第一人者として研究活動を行いながら、NHKスペシャル「男と女 最新科学が読み解く性」「人体 ミクロの大冒険」などの番組監修に携わる。本書が初の著書。

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