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小学校の採用倍率、1倍台が続出、全国平均は過去最低更新…教師人気は回復できるのか?

  • 2022.10.17
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教師の人気は回復できる?
教師の人気は回復できる?

学生の「教員離れ」が指摘される中、中央教育審議会(中教審、文部科学相の諮問機関)の特別部会が10月5日、教師の在り方に関する中間まとめを公表しました。9月9日の会合で部会長一任を取り付け、修正を加えたものです。

この日の会合では、2022年度公立学校教員採用試験の実施状況も報告され、小学校の採用区分を設けている57道府県・指定都市のうち約4分の3に当たる42県市で3倍を切り、17県市では1倍台という深刻な実態が明らかになっています。中教審では年内にも答申をまとめることにしていますが、これで本当に教師人気は回復できるのでしょうか。

3倍を切るだけで危機的状況なのに…

教員採用試験を巡っては、倍率が3倍を切ると優秀な人材が確保できなくなる、というのが採用担当者の経験則です。しかし小学校は全国平均で2019年度に2.8倍となってからも過去最低を更新し続け、2022年度は2.5倍という危機的状況です。

現在、第2次ベビーブームに対応して大量採用された世代の教師が大量退職して、その穴を埋めるために、教員を大量採用しなければならなくなっています。そんな中、学校現場の「ブラック職場」化が知られるようになり、ますます教職志望者は減っていきます。国立の教員養成大学・学部ですら平均教員就職率は65.2%にとどまり、関係者によると優秀な学生ほど「自分には務まらない」と民間企業に流れるようになっているといいます。

教職志望者の減少は、多くの学校現場で深刻化している「教師不足」の遠因にもなっています。もともと学校では産休や病気休職者の代替のため、一定数の非常勤講師を確保しておく必要があり、それを採用試験に落ちた「教職浪人」に頼ってきました。そんな人たちも正規採用されたり、常勤講師となったりしているため、代替要員が枯渇しているわけです。

一方で、授業では「個別最適な学び」と「協働的な学び」の一体的な充実が求められており、教える側にも変革が迫られています。そこで中教審は、教師に「新たな学びの姿」を求めて資質能力の高度化を図る一方、多様な人材も取り込みながら安定的に採用数を確保する方策を探るという、困難な課題を抱えました。

「働き方改革」も不可欠

中間まとめでは、教師に共通的に求められる資質能力として「特別な配慮や支援を必要とする子供への対応」「ICT(情報通信技術)や情報・教育データの利活用」を加え、教員養成や現職研修でしっかりと身に付けさせることを求めています。

また、これまで教職大学院の手法とされてきた「理論と実践の往還」を、学部の養成段階から行うとしています。学んだ理論を実際の授業に照らし合わせ、理論に即して振り返ることの繰り返しが必要になります。そうなると学部の早い学年から、頻繁に学校現場を体験することが不可欠になります。

教育実習は従来、4年生の前期か、3年生の後期に行われてきました。教員採用試験は、7月に1次試験、8月に2次試験、9~10月に合格発表・採用内定というのが一般的です。これでは早期化している企業の就職活動と両立することができず、ますます人材が民間に流れる要因にもなっています。

そこで中間まとめは、3~4週間という短期集中型の教育実習を、通年で決まった曜日に実施するようにしたり、一部を早い年次の「学校体験活動」(学校ボランティア)で代替させたりすることを提案。採用試験は、実施時期の早期化・複線化を検討するよう求めています。

正式な中間まとめの公表に先立つ9月29日、永岡桂子文部科学相は都道府県・指定都市の教育長を集めた会議をオンラインで開催し、教員採用試験に関する協議会を早急に立ち上げるとともに、正規教員の割合の数値目標を設定して計画的に採用することなどを要請しました。このように答申前から、対策は動き出しています。

ただし、中間まとめも指摘しているように、教師人気の回復には「学校の働き方改革」が不可欠です。

教育ジャーナリスト 渡辺敦司

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