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『赤い袖先』のヒロインは今までの時代劇を超えた最高キャラだと評価したい理由

  • 2022.10.15

イ・セヨンが『赤い袖先』でヒロインにキャスティングされたことは、このドラマがイ・サンに愛された伝説的な宮女を描くうえで最適な選択だった。

そう思う根拠は、彼女が『王になった男』で演じた王妃の役があまりに印象的だったからだ。

同ドラマではヨ・ジングが国王と道化師の1人2役に扮して讃えられたが、同じように「国王に愛されなかった王妃」の悲哀を演じて絶賛されたのが、イ・セヨンの演技力であった。

「イ・セヨンならば、宮女の哀しみを巧みに表現してくれる」。そう期待していたら、まさにその通りの結果をイ・セヨンが出してくれた。

Blu-ray&DVDは10月5日(水)リリース。同日U‐NEXTで独占先行配信開始となる ドラマ『赤い袖先』(写真提供=NBCユニバーサル・エンターテイメント/©2021MBC)

実際、チョン・ジイン監督が『赤い袖先』のキャスティングで最初に思い浮かんだのが、イ・セヨンの起用だったという。それが成功した段階で、このドラマは傑作への道を歩み始めた。

しかも、撮影が始まってから、イ・サンを演じるジュノ(2PM)と宮女に扮するイ・セヨンの相性がとても良かった。いわば、『赤い袖先』を彩る名場面の数々は、2人の「あうんの呼吸」で生み出されたものだった。

その中でも、イ・セヨンは宮女ソン・ドギムを「意志が強い自立的な女性」として演じきった。この「自立」に大きな意味がある。

歴史的に言うと、ソン・ドギムは宮女という身分のままにイ・サンに二度まで求愛された女性だ。常識を考えれば、世孫(セソン/国王の後継者となる孫)に求愛された時点で側室にならざるを得ない立場である。

しかし、ソン・ドギムは応じなかった。

さらには、国王になったイ・サンから再び求愛されている。それでも、ソン・ドギムは当初、側室にならなかった(後には側室になったが……)。

史実では、同じ年で慕っていた王妃に子供がいなかったことに配慮して側室になることを拒絶したのだが、『赤い袖先』では王妃を史実のようには描いていなかったので、ソン・ドギムがイ・サンの求愛に応じなかった理由が明確にできなかった。

代わりに、彼女は「自分で判断できる自立した女性」として描かれた。これは現代的な解釈であり、厳格な身分制度に縛られていた朝鮮王朝時代にはありえない選択なのだが、『赤い袖先』ではイ・セヨンが示す「自ら行動する強さと逞しさ」が随所に見られて十分な説得力を持っていた。

Blu-ray&DVDは10月5日(水)リリース。同日U‐NEXTで独占先行配信開始となる ドラマ『赤い袖先』(写真提供=NBCユニバーサル・エンターテイメント/©2021MBC)

実際、「耐えて従う」という宮女の先入観をイ・セヨンは心に秘めた表現力で変えてくれたのだ。

それは、視線に宿る「意志の強さ」であり、口元に潜む「揺るぎない信念」である。そうした表情を多面的に見せられるのが、イ・セヨンが培ってきた演技力であり、脚本を昇華できる女優の心強さだった。

ドラマの中でソン・ドギムは多情な感性を持っていた。イ・サンのわがままな部分に腹を立てる気の強さ、イ・サンの優しさに身をゆだねる情愛、そして、女性としての幸せを願う儚(はかな)さ……それらをあますところなく見せてくれた。

一例を挙げよう。

『赤い袖先』でも屈指の名場面と言われるのが、ソン・ドギムがイ・サンに『詩経』を読んであげるところだ。

イ・ドクファが演じる英祖(ヨンジョ)に叱責されたイ・サンは謹慎処分となるが、ふすま越しにソン・ドギムがイ・サンの愛読書を読んでいく……この一連のシーンでソン・ドギムの情愛が本当に美しく表現されていた。

「もしイ・セヨンがソン・ドギムを演じなければ……」

そうなれば、もちろん他の女優が演じていたわけだが、そうであるならば『赤い袖先』がこれほど慈愛に満ちたドラマになったかどうか。

Blu-ray&DVDは10月5日(水)リリース。同日U‐NEXTで独占先行配信開始となる ドラマ『赤い袖先』(写真提供=NBCユニバーサル・エンターテイメント/©2021MBC)

彼女以外のキャスティングが想像できないほど、イ・セヨンは女優人生のすべてを注いでソン・ドギムを「強く、そして、繊細に」演じていた。

時代劇で描かれるヒロインは、身分制度に苦しめられた朝鮮王朝時代の女性たちの切ない願望を現代に伝えてくれる。それは、「自立して生きる」に他ならない。それを具体的に示してくれたという意味で、イ・セヨンが演じたソン・ドギムの生き方はかぎりなく希望に満ちていた。

文=康 熙奉(カン・ヒボン)

 

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