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『せかいでさいしょに ズボンをはいた 女の子』【今日の絵本だより 第323回】

  • 2022.10.11

kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。 こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。

『せかいでさいしょに ズボンをはいた 女の子』 キース・ネグレー/作 石井睦美/訳 光村教育図書 1650円

10月11日は、国際ガールズ・デー。 女の子の公平な権利や選択の自由、平等な社会参加を呼びかける日です。 『せかいでさいしょに ズボンをはいた 女の子』は、今から190年前、女の子はズボンをはいてはいけなかった時代のアメリカに生まれた、メアリー・エドワーズ・ウォーカーのお話です。

その頃、女の子が着ることができたのは、重くて暑くて、窮屈なドレスだけ。 男の子はいつもズボンで、身軽に飛んだり跳ねたり。 それがおかしなことだなんて、みんな思っていませんでしたが、メアリーだけは違いました。 ある日、メアリーがズボンをはいてみたら、なんて自由なんでしょう。 飛んだり跳ねたり、逆立ちも、でんぐり返しもできちゃいます。

「これはいい!」 喜んでズボン姿で町へ駆け出したら、大騒ぎ! 誰も「いいね」なんて言ってくれません。 「メアリー・ウォーカー! ズボンなんか はいて、こうかいするぞ」 みんなが指差して非難して、卵まで投げつけられました。 「するもんですか!」 と言い返したメアリーですが、家に戻ると、やっぱりしょんぼり。 落ち込むメアリーに、お父さんはこう話してくれました。 「にんげんって、あたりまえだと おもっていたことが かわってしまうのが こわいんだよ」

翌朝。 一晩悩んだメアリーですが、意を決してズボンをはいて、学校へ出かけます。 男の子の服ではダメだ、と教室の前で立ちふさがる大人に、胸を張ってこう言いました。 「男の子の ふくを きているんじゃないわ」 「わたしは わたしの ふくを きているのよ!」 そして、教室のドアを開けると……。

原題は「MARY WEARS WHAT SHE WANTS」。 後に大人になったメアリーは、ズボンをはいていることを理由に何度も逮捕され、そのたびに「わたしはわたしの服を着ているのです」と言ったそうです。 当時の女性としては異例の医学部を卒業後、南北戦争で女性初の軍医として活躍し、生涯を終えるまでずっと、ズボンをはき続けたメアリー。 世の中の「あたりまえ」に立ち向かってくれた女の子、頼もしい先輩に、ぜひこの絵本で出会ってください。

選書・文 原陽子さん はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。

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