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田中圭さん、「先のことを考えると、正解か分からなくなっちゃう」

  • 2022.10.10

テレビや映画などに数多く出演する一方、舞台への出演も欠かさない田中圭さん(38)。11月3日から東京で上演される舞台「夏の砂の上」では、職をなくし妻に家出された男を演じます。ほぼ毎年舞台への出演を続ける田中さんに、仕事に対する思いや選択に迷った時の対処法などを伺いました。

舞台は役者として初心に帰れる場所

――田中さんが初めて出演された舞台は「死ぬまでの短い時間」(2007年)でしたが、その時の気持ちは今でも覚えていますか。

田中圭さん(以下、田中): 詳しい気持ちはもう覚えていないですが「死ぬまでの短い時間」は地方公演も含め全部で60公演くらいあったので「長い!」と思っていたかな(笑)。それに初舞台だったので、とにかく緊張していました

僕、舞台自体は好きですが、やっていて楽しいとはあまり思えなくて。もちろん充実感もあるし、芝居をしている喜びはあるのですが「すごく楽しいな」とは今もあまり思わないんです。

――「舞台に立つのは楽しいと思えない」とのことですが、2020年を除くと、田中さんはほぼ毎年舞台に出演されています。映像作品でも見ない日がないほどお忙しい中、舞台出演を欠かしていないのは?

田中: そうですね。役者として初心に帰れる場所でもあるし、お芝居と向き合う時間が一番長いのが舞台。やっぱり役者が一番ぜいたくな時間を過ごせるし、修行の場でもあります。「1年に1本、舞台をやる!」と自分に課しているところはあるかもしれないです。

朝日新聞telling,(テリング)

演出家との出会いで、「考えや意識が変わった」

――今年で俳優になって22年です。この間、変化はありましたか?

田中: 細かいことで言えば色々あると思うのですが、人や作品との出会いで少しずつ変わってきていると思います。特に僕の場合は舞台で、そのときの演出家の方との出会いで、役者としての考えや意識が変わりました。
今作の栗山さんも確実にその一人だし、鈴木(おさむ)さんや、熊林(弘高)さん、白井(晃)さん――。そういう方たちと出会って、たくさん刺激を受けました。

――「夏の砂の上」の栗山さんのように、一度出演された作品の縁で再びタッグを組むことが多い印象があります。

田中: 舞台だけじゃなく映像作品でもそうですが、お世話になった監督や、自分が好きな演出家の方から「また一緒にやろう」と声をかけていただくと僕は断れないです。もちろん声をかけていただけるのはすごくうれしいし、出演する機会を与えてもらえるのはとても光栄です。

朝日新聞telling,(テリング)

始めるのは今でもいいし、明日でもいい

――telling,の読者の女性の中には「やりたいことが見つからない」「やりたいことがあっても一歩踏み出せない」という方も多いです。

田中: 「やりたいことが見つからない」って、まったくもって悪い事じゃないです。今はネットなどで世界の情報や色々な動画を見ることができるし、YouTuberみたいに我が道を突き進むことも難しくはない。やりたいことが見つかった時に初めてどうするかを考えればいいと思います。

例えば、「自分は毎日、ただ仕事をしているだけ」と思って悩む人がいるかもしれないけど、それって悪いことじゃない。むしろすごく素敵なことだと思います。仕事だけの日々の中で楽しみを見つけたり、生きがいや、やりたいことができたりした時に初めて迷うわけじゃないですか、「今の生活を守るべきか」と。
ゼロからやる覚悟とか、分からない場所に飛び込む怖さはすごく分かるけど、20代30代のうちは怖がることも、悩むこともしなくていいと思うし、僕は「やりたいことが見つかれば、思いきってやっちゃえ!」って思います。

――「やりたいことが見つからない」人への具体的なアドバイスはありますか?
田中: 今日や明日のうちに興味があることを思いっきりやってみるとか、今まで手を出していなかったことを1週間続けてみる。それで、どっちが楽しいかな? どっちが後悔しないかな? という自分の気持ちを確認したうえでチョイスしたらいいと思います。

本当は何歳になってもそういう選択ができれば一番いいと思う。だけど、やっぱり年を取ると、自分が積み上げてきたものや、守らなきゃいけないものもできてきているだろうから、飛び出すことは余計に勇気がいるんです。なので、僕は20代や30代のうちはやりたいようにやっていいと思います。どうせいつか、失敗も成功も話のネタになる日が来るので(笑)。始めるのは今でもいいし、明日でもいい。

朝日新聞telling,(テリング)

人生は選択の連続

――遠い未来のことまで考えすぎてしまうから不安になってしまうのでしょうか。
田中: すごく先のことを考えると、何が正解か分からなくなっちゃうじゃないですか。それに、将来のことをどれだけ考えても、結局自分の考えた通りに物事って進まないことが多いですよね。だから、遠い先のことを考えても、あまり意味がないと思っています。中には、計画通りに道を進んで行って「すごいな」みたいな人もいますが、僕はあまり先のことを考えられない。
どっちが本当にいいかは分からないですけどね。

――田中さんがこのお仕事をしていく中で、進むべき道を悩んだり、迷ったりしたことはありましたか。
田中: 細かい話で言ったら色々ありますが、仕事に関わる選択は僕個人だけの話ではないので。そもそも人生って選択の連続じゃないですか。

――選択を迷った時、決め手となるのはどんなものですか?
田中: “楽しそう”とか、僕みたいに“前にお世話になった縁で”でも何でもいいと思うんです。でも、その選択をしたのなら、思いっきり楽しむべきだと思います。
僕も、いざやるまでは「嫌だな」と思う時もたくさんあるけど、「嫌だ」と「後悔する」
は違う。だから、やるって決めたら楽しむ。そうしないともったいないですから。

僕はいつも、自分が後悔しない方を選ぶ。「やりたい方」で考えてしまうとどっちもしたくなる性格だから、「したい」という感覚じゃなく、「これをできなかったら絶対に後悔する」っていう方を選択するようにしています。

■根津香菜子のプロフィール
ライター。雑誌編集部のアシスタントや新聞記事の編集・執筆を経て、フリーランスに。学生時代、入院中に読んだインタビュー記事に胸が震え、ライターを志す。幼いころから美味しそうな食べものの本を読んでは「これはどんな味がするんだろう?」と想像するのが好き。

■家老芳美のプロフィール
カメラマン。1981年新潟生まれ。大学で社会学を学んだのち、写真の道へ。出版社の写真部勤務を経て2009年からフリーランス活動開始。

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