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田中圭さん、舞台「夏の砂の上」に主演 「この作品にはすごい何かが住んでいる」

  • 2022.10.9

田中圭さん演じる主役の小浦治と、彼を取り巻く人々の間で交わされる何気ない会話から、心情を細やかに映し出す舞台「夏の砂の上」。11月3日からの東京公演を皮切りに、兵庫、宮崎、愛知、長野で上演されます。本作への意気込みや見どころについて、田中さんに聞きました。

――今作で演出を担当される栗山民也さんとは、「CHIMERICA チャイメリカ」(2019年)以来、3年ぶり、2度目のタッグですね。

田中圭さん(以下、田中): 「CHAIMERICA チャイメリカ」は作品自体もすごかったけど、観た方の感想や反響がとても大きかったです。僕も観客として観たかったと思う舞台でした。「もう一回栗山さんと一緒にできないかな」と思っていたところに今回のお話をいただいたので、すごくうれしいです。

――栗山さんの演出の魅力はどんなところに感じますか。

田中: 栗山さんの舞台は、全部が良くて。稽古場での栗山さんの雰囲気って、全然振りかぶらないというか、人への接し方や演出の仕方など、エネルギーを当てるポイントがすごく上手で。まったく偉ぶっていなくて、愛があって。そういうところもすごいなと思います。
特に「CHIMERICAチャイメリカ」では、栗山さんの人としての素敵さや魅力みたいなものが、僕の中でとても強く印象に残っています。

朝日新聞telling,(テリング)

理想は、舞台上で何にもしない男

――本作は、長崎を舞台に複雑な家族の物語を描いた戯曲。1999年に読売文学賞戯曲・シナリオ賞を受賞しています。稽古はこれからとのことですが(取材は8月下旬)、作品に対する印象を教えてください。

田中: 人の性みたいなものや“すごい何か”がこの作品にはあるな、と感じています。それが何かはまだはっきり分からないですが、「奥の方でうごめく『何か』が絶対いるよね」と思わせる作品です。
僕自身が何かを感じられれば、栗山さんがなぜ今、「夏の砂の上」を選んだのかも知ることができると思う。この世界を生きるのが楽しみです。

――ご自身が今、不安に思っていることはありますか?
田中: 今作の舞台が長崎県なので、長崎弁を覚えるのが大変そうだなと思っています。僕は東京生まれの東京育ちなので方言になじみがないので。

――演じる小浦治は造船所での職を失くし、妻に家出されます。今の段階でどう演じたいですか。
田中: 今の段階では、どうも演じたくない。理想を言うと、舞台上で何にもしない男、そこにいるだけで存在することができたら俳優として、すごく素敵だろうなと思うんです。でも、難しいだろうなと思うので、稽古が始まってから考えていきたいです。

朝日新聞telling,(テリング)

今の時代は、ごまかすものがいっぱい

――妻の惠子を演じるのは西田尚美さん、妹に押しつけられる形で一緒に暮らすことになった姪っ子・優子を演じる山田杏奈さんです。お二人の印象は?

田中: 西田さんとは、ここまできちんと一緒にお芝居をしたことは今までありません。ご本人のお芝居の体感は分からないですが、どんな空気感を一緒に作っていけるのかすごく楽しみです。
山田さんは以前ドラマで、少しだけ共演して、その時の印象は「お芝居が力強い子だな」ということ。彼女は今回が初舞台なのですが、あれから経験も経て活躍している中で、今回の役どころは難しいけど凄くいい役。優子をどう生きていくのか――。山田さんの成長を見るのも楽しみです。

――本作は「一見淡々とした日々に漂う、抗いようのない悲哀や心の乾きが滲みだす物語」とのことです。田中さんは感じたことはありますか?

田中: それなりにはあると思いますが、この作品ほどではないです。この物語は昔の田舎の小さな町の話で、自分のことをごまかせるものがないんです。今の時代は、ごまかすものがいっぱいあるので、こんなにシンプルに自分や人と向き合うことって中々ないと思っていて。日々の生活の中で忘れているものというか、「分かってはいるけど、逃げているもの」みたいなものが、この作品にはたくさんあるような気がしています。

朝日新聞telling,(テリング)

――舞台を楽しみにしている方へメッセージをお願いします。

田中: 「夏の砂の上」に“すごい何か”が住んでいるのは間違いないので、一人でも多くの方に、それに気づいていただけるようにしたいと思っています。栗山さんの下で、みんなでがんばりますので、2時間ちょっとの時間を僕らに預けていただけたらと思います。

■根津香菜子のプロフィール
ライター。雑誌編集部のアシスタントや新聞記事の編集・執筆を経て、フリーランスに。学生時代、入院中に読んだインタビュー記事に胸が震え、ライターを志す。幼いころから美味しそうな食べものの本を読んでは「これはどんな味がするんだろう?」と想像するのが好き。

■家老芳美のプロフィール
カメラマン。1981年新潟生まれ。大学で社会学を学んだのち、写真の道へ。出版社の写真部勤務を経て2009年からフリーランス活動開始。

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