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夫は気付いてもいない?洗濯にまつわる「名もなき家事」とは!?夫よ、妻の苦労をわかっていますか?

  • 2022.9.30

「洗濯」というと洗う、干す、畳むの工程だけをイメージしていませんか。いえいえ、そうではありません。洗剤の補充や洗濯機の掃除、アイロンがけ、天気予報のチェックも洗濯に含まれる家事の1つです。日常に埋もれた「名もなき家事」は、妻ひとりに負担が偏りがち。洗濯を深掘りすると、いかに複雑な仕事かがわかります。夫婦でじょうずにシェアする方法とは?男性の家事育児参加について詳しい、大阪教育大学教育学部教授、小崎恭弘先生に話を伺いました。

洗濯の「責任者」がママに偏る原因とは

「多くの男性にとって、『洗濯』は、もっともわからない家事の1つではないでしょうか」と語るのはパパの育児参加について詳しい、大阪教育大学教育学部教授、小崎恭弘先生です。干す、畳むなど洗濯の一部を手伝う男性は多いようですが、洗剤の買い出しから服を畳んでしまうまで、1から10まですべてを把握する「責任者」を男性が担っている家庭は少ないようです。

その原因の1つが料理などの家事と違って、スタートからゴールまで時間がかかるということ。

「1人暮らしでもしない限り、子育て家庭の洗濯をパパがメインでする、という話はほとんど聞いたことがありません。かかる時間が長いからでしょう。だから経験が少なく、基本的な知識がないという男性が多いんだと思います。でも日常生活には欠かせない家事。そこにアンバランスが生じています」(小崎先生)

え、気付いてもいない!? パパたちの驚きの感覚

では男性はタオルや服がきれいになって畳まれて収納されているのを、当たり前と思っているのでしょうか?

「いやいや、違うんです。洗濯に限らず、家事に消極的な男性の場合、関心がないから女性がやってくれているということに、気づいてさえいないことが多いんです。知らない間に洗濯ができてる、という感覚です。いつの間にか洗濯物が干してある、畳んである、朝ごはんができている、掃除が済んでいる。これはやっぱり責任感の問題です。家事育児が自分事とは思っていないと、そうなってしまうんですよね」

小崎先生自身、育休をとって初めて洗濯の段取りがわかるようになったといいます。

「ゴールまで責任もって自分でやって初めてわかることが多いものです。中途半端な介入だと一部分しかわからない。わかろうとしない。育休で洗濯の責任を持つまで、僕は何も考えずに洗濯を手伝っていました」

小崎先生が解説!名もなき家事〜洗濯編〜のリアル

そんな洗濯にまつわる「名もなき家事」について、小崎先生の解説とともにお届けします。

ケース1:洗濯機を使いこなす

ピッとスイッチを押すだけで済む全自動洗濯機。最も簡単な作業のように思えますが、使い慣れていない人にとっては意外とハードルが高いようです。ドラム式か縦型かだけかではなく、今は多機能の洗濯機が開発され、ユーザー側のこだわりも強まる傾向に。使いこなすまで経験が必要です。

小崎先生から

「洗剤を洗濯機のどこに入れるかわからない。多機能なので設定がわからない。そういう男性は多いと思います。何事も経験なので、そういう男性には経験の機会を与えてあげてほしいです」

ケース2:洗剤を把握する

洗濯の必需品「洗剤」。洗濯洗剤といってもさまざまです。粉末、液体、ジェルボール。柔軟剤や漂白剤を使う家庭も多いのでは。仕上がりや香り、価格などを考慮して買うものです。しかし、これも初心者にはハードルが高いそうで……。「柔軟剤買ってきてと夫に頼んだら“柔軟剤入り洗濯洗剤”だった!」と嘆くママもいます。

小崎先生から

「調味料と洗剤って、種類が多いですよね。売り場にズラーっと並んだ中から、いきなり選ぶのはなかなか難しい。柔軟剤や漂白剤となるともっと難しい。パパが違ったものを買ってくることがないよう、メーカー名や商品名、大きさなど具体的な情報を予め共有しておくとスムーズです」

ケース3:洗濯物を仕分けする

何を一緒に洗うのか、洗わないのか。こだわりをもつママも多いのでは。マット類と衣類を洗い分ける、色物を洗い分けるなど、これも名もなき家事の一つ。洗濯機に対して洗濯物が多すぎる、少なすぎるの判断も必要です。

小崎先生から

「男性は、洗濯に責任がないと、なんでもポンポン洗濯機に入れて洗ってしまうかもしれません。洗濯ネットに何を入れるかもさっぱりでしょう。僕も昔、赤の安いTシャツで全ての洗濯物をピンク色に染めて、家族に怒られたことがあります(笑)経験がないとわからないんです。でもそれからは気を付けるようになりました。1度や2度は経験として必要と思ってあげてください」

ケース4:洗濯物を干す

パパの干し方に不満を持つママも。タオルを重ねて干す、厚手のものを配慮せずに干す、タオルをくちゃくちゃのまま干す、すぐに干さないなど……。洗濯物を干すことにも名もなき家事がいろいろ潜んでいます。


小崎先生から

「ただ干せばいいのではなく、ママたちはいかにムラなく素早く乾かすかを考えて干しますよね。それがパパにはわからないんです。僕は洗濯を知るまで、何も考えずに厚手のパーカーを着ていましたけど、いかにフードと首のところが乾きにくいかを知って、気軽に着られなくなりました(笑)それとシワシワの服にアイロンをかける作業が億劫で、シワを伸ばして干すように。洗濯は、アイロンがけもセットで担当してもらうことが大切だと思います」

ケース5:洗濯物を畳む

タオル、パンツ、Tシャツなど、人によって畳み方にこだわりがあるのではないでしょうか。取り出しやすさ、収納のしやすさなど、全体の量などトータルで考えてプロデュースしている「畳む」という作業。伝え方を間違えると、夫婦げんかの火種にもなりそうです。

小崎先生から
「夫の立場から言わせてもらうと、1番腹が立ってしまうのは“畳み直し”ですね(笑)せっかく畳んだのに! と思います。僕は子ども服を2つ折りにしていたんですが、妻は3つ折りにしていました。ところがそれには理由があって、3つ折りだと収納した時に取り出しやすかったんです。きょうだいが多いと、どれが誰の服か把握していないと、収納も混乱します。うちはイニシャルが書いてあったけど、僕はよく間違えて収納していました。書いてあっても間違えてしまうんです。そういうところに生活への意識の差があるなと感じました」

ほかにも
・洗濯機の掃除(フィルター、洗濯槽など)
・ベッドや布団のシーツの取り換え、洗濯
・タオルを交換する
・クリーニングに出す
・裏返っている洗濯物を直す
・ボタンを付け直す
・汚れのひどいものに予洗いをする
・家族の衣類をわけて収納する
・物干しざおを拭く


など、夫が知らないだろう洗濯にまつわる「名もなき家事」はたくさんあるようです。

夫婦が歩み寄ってより自分らしいスタイルを

夫婦の意識の差は「責任感」だと小崎先生は言います。

「とにかくゴールまでやってみないとわからない。パパが育休を取ると、責任を持たざるを得ませんから1番実感できると思います。生活に責任を持つと、洗剤の値段まで気にするようになるでしょう」

細部に渡ってこだわりがありそうな洗濯という家事。夫がすべて妻流に合わせるのではなく、歩み寄って折衷案を考えていく必要性もありそうです。


「全てを合わせるのはしんどいです。夫のやり方を許せる部分も作ってあげてほしいですね。ていねいさに欠けることもあります。ただ、ママたちに理解してもらいたいのは、そうだとしても悪気はないんです。シャツは畳まずにハンガーにかけて収納するというスタイルもあります。シャツをノーアイロンにするという方法もあります。お互いの歩み寄りが必要で、どういうやり方がお互いにとっていいか、話し合うことも大切です」(小崎先生)

取材・文/大楽眞衣子


監修者:保育士 大阪教育大学教育学部学校教育教員養成課程家政教育部門(保育学)教授 小崎恭弘

兵庫県西宮市初の男性保育士として施設・保育所に12年間勤務。3人の息子が生まれるたびに育児休暇を取得。市役所退職後、神戸常盤大学を経て現職。専門は「保育学」「児童福祉」「子育て支援」「父親支援」。NPOファザーリングジャパン顧問、東京大学発達保育実践政策学センター研究員。テレビ・ラジオ・新聞・雑誌等にて積極的に発信をおこなう。「男の子の本当に響く叱り方・ほめ方」(すばる舎)、「育児父さんの成長日誌」(朝日新聞社)、「パパルール」(合同出版)など、著書多数。


著者:ライター 大楽眞衣子

社会派子育てライター。全国紙記者を経てフリーランスに。専業主婦歴7年、PTA経験豊富。子育てや食育、女性の生き方に関する記事を雑誌やWEBで執筆中。大学で児童学を学ぶ。静岡県在住、昆虫好き、3兄弟の母。

ベビーカレンダー編集部

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