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会社員は知らないと大損するiDeCo10月の変更点…お金のプロが「これは加入しない手はない」と断言するワケ

  • 2022.9.28
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10月からiDeCoの制度が変わる。どのような変更内容なのか。経済コラムニストの大江英樹さんは「これまで加入のハードルが高かった会社員が、より入りやすい制度になります。税制上の優遇が大きく入らない選択肢はないだろう」という――。

iDeCoの運用リポート
※写真はイメージです
加入者が急増中のiDeCo、制度変更でさらに増える見込み

老後の資産形成を自分でおこなう手段として最も優れていると言われるiDeCo(個人型確定拠出年金)へ加入する人が増えてきています。2022年7月末時点での加入者数は約256万人となり、2年前に比べると約64%、100万人も加入者が増えているのです。これに加えて来月(10月)からはiDeCoの制度が大きく変わることで、一段と加入者が増加することが見込まれます。

では具体的にどのように変わるか? ということですが、最も重要な変更ポイントは「企業型確定拠出年金に加入している人でもiDeCoに加入することができるようになる」ということです。厳密に言うと、今までも法律上は「企業型とiDeCo」の同時加入は可能でした。しかしながら、それができるようになるためには、二つの条件が必要だったのです。一つは「企業型における会社が出す掛金の上限を引き下げること」、そしてもう一つは「“iDeCoと同時加入できる”と規約を変更すること」です。

詳しく話をするとややこしくなりますが、要点だけ言えば、これまでは上記二つの変更をすることで一部の従業員にとっては不利になるという現象が起こり得たのです。したがって、法律としては実施可能でも現実には実施することはかなり難しかったというのがこれまでの実情でした。したがって、会社勤めで企業型確定拠出年金に加入している人は事実上、iDeCoにはなかなか加入できなかったわけです。

会社員にとって一気に加入のハードルが下がる

ところが、今回の制度改正で前述した「会社が出す掛金の上限引き下げ」と「規約変更」の手続きが不要となりましたので、これまでとは比較にならないぐらい、iDeCoに加入しやすくなります。なにしろ、iDeCoの加入者は256万人ですが、企業型の加入者は780万人もいます。その人たちの多くがiDeCoを利用するようになると相当なインパクトでしょう。

そこで、まだiDeCoを利用していない人にとって、10月以降はいよいよiDeCo加入の決断をする時期がやってきました。ただし、「加入の決断」と言いましたが、ここでは“2種類の決断”があります。一つは、「iDeCoに加入するかどうか」の決断、そしてもう一つは「企業型のマッチング拠出とiDeCo加入のどちらを選ぶべきか」という決断です。具体的にどういうことなのかお話しましょう。

“入らない”という選択肢はない

まずは最初に「iDeCoに加入するかどうか」の決断ですが、これに関しては、ほとんどの人にとっては、“入らない”という選択肢はないと私は思います。評論家やFPの人が「iDeCoとNISA、どちらを優先すべきか」という問いに対して「NISAを優先すべき」と言う人がたまにいます。その理由が「iDeCoは60歳まで引き出せないから」というのですが、それはiDeCoの目的や制度の意味を全く理解していないと言って良いでしょう。

そもそもiDeCoは単なる貯蓄や投資ではありません。60歳以降にリタイアした後、収入が途絶えた後の生活をまかなうための老後の備えがその目的なのです。であるならば、何があっても引き出せないというのは、老後資金をこしらえる上ではむしろ大きなメリットと言っても良いのです。実際によく勉強している投資ブロガーの人たちはみんな「iDeCoの最大のメリットは60歳まで引き出せないことだ」と言います。ですからiDeCoで積み立てをするにあたって、自分で無理のない金額を考えることは大事ですが、「やらない」という選択肢はないだろうと思います。

老後資金の計画
※写真はイメージです
積立額の20%が戻ってくる

実際、iDeCoは個人で老後に備える「年金制度」の一つだからこそ、多くの税優遇があるのです。仮に30歳から60歳まで30年間、毎月2万円ずつ積立てを続けた場合、積み立てた累計金額は720万円になりますが、仮に3%で運用できた場合、税引き後の手取り金額は1051万円になります。ところがiDeCoの場合、運用益は非課税ですから同じ利回りで計算するとその金額は1165万円となり、税金の分だけでも114万円も手取りは多くなるのです。

この運用益非課税はNISAでも同様ですが、NISAにはないけどiDeCoにあるのは自分が積み立てた金額の全額が所得控除されるという税優遇です。前述の例の場合、仮に年収を500万円とした場合、30年間で税金が戻ってくる金額は累計でおよそ144万円になります。これは1年あたりにすると4万8000円ですが、積立額は年間で24万円ですから20%が税として戻ってくることになるわけです。仮に投資がよくわからない、投資が恐いという人ならiDeCoを定期預金で運用してもこの20%分が付くわけですから、これはきわめて有利と言って良いでしょう。

それに人生における支出は人によってさまざまですが、老後の生活だけは誰にとっても等しくやってきます。だからこそ自分で備える老後のためにはiDeCoは最強の手段であり、金額はともかくとして、これをやらないという選択肢はないだろうと考えています。

企業型のマッチング拠出かiDeCo加入か

次に二つ目の決断ですが、それは「企業型のマッチング拠出とiDeCo加入のどちらを選ぶべきか」ということです。

これについては少し説明が必要です。そもそも企業型確定拠出年金の大原則は「会社がお金を出す」ということです。なぜなら「企業型確定拠出年金」というのは会社の退職給付制度の一つだからです。ところが中には、会社の出す掛金に上乗せして従業員が個人で掛金を出すことが制度として認められている会社もあります。この「従業員が個人で掛け金を出すこと」をマッチング拠出というのです。

今回の改正で企業型に加入している人もiDeCoに加入することができるようになったとは言うものの、マッチング拠出をやっている人はiDeCoを利用することができません。つまりマッチング拠出をするか、それともiDeCoに加入するか、のどちらかを選ばないといけないのです。これが二つ目の決断です。

積み上げられたコインの上に立つ、シニアカップルのミニチュア人形
※写真はイメージです
ポイントは会社の掛け金

企業型確定拠出年金における掛金の上限額はその会社がどのような退職金制度を採用しているかによって異なりますが、ここではわかりやすくシンプルにするために上限金額が最も高い5万5000円、そしてiDeCoの掛金上限額はこの場合2万円となるので、この数字を前提として考えてみます。

マッチング拠出には2つのルールがあります。①会社が出す掛金以上の金額を従業員が出すことはできない。②会社の掛金と従業員の掛金の合計額がトータルの上限金額(この場合は5万5000円)を超えてはならない、というルールです。

一方、この場合のiDeCoの掛金ルールも次の2つです。①iDeCoの掛金は2万円を上限とする。②会社の掛金とiDeCoの掛金の合計額がトータルの上限金額(5万5000円)を超えてはならない、となります。どちらも②の場合は同じ条件です。したがってマッチングかiDeCoかのどちらを選ぶかは、①の状況がどう変わってくるかによります。

仮に若い社員などでまだ会社の掛金が少ない場合、例えば掛金が2000円とかであれば、マッチング拠出も2000円しか出せませんがiDeCoなら2万円まで出せます。一方、会社の掛金が2万円を超えて2万7500円までの間ならiDeCoが2万円までしか出せないのに対してマッチング拠出は会社の出す金額に応じて2万7500円まで出すことができます。ここからわかることは、会社の掛金が2万円までならiDeCoを選ぶ方がより多くの金額が積み立てられるし、2万円を超えるとマッチング拠出の方がより多くの金額を利用できるということです。

もちろん、どちらが有利とは一概には言えず、自分の出せる金額と利用可能額を考えてどうするかを決めればいいわけですが、使える枠はフルに使うという前提で考えれば前述のような基準を参考にしながら、自分で判断をするのが良いでしょう。

10月からの新しい制度がスタートするにあたって、一度自分の老後に向けた資産形成を始めるきっかけとしてiDeCoの活用を考えてみてはいかがでしょうか。

大江 英樹(おおえ・ひでき)
経済コラムニスト
大手証券会社に定年まで勤務した後、2012年に独立し、オフィス・リベルタスを設立し、代表に。資産運用やライフプランニング、行動経済学などに関する講演・研修・執筆活動などを行っている。近著に『定年前、しなくていい5つのこと』(光文社新書)など。

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