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元NHKディレクターいわく、「人はみな必ず嘘をついている」。その真意とは?

  • 2022.9.22
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元NHK制作局ディレクターの作家・浅生鴨さんは、自身を「嘘のプロフェッショナル」と称する。浅生さんは小説やエッセイを書いたり、テレビ番組やCMを企画・演出したりしており、どちらも「この世になかったものを創り出す」、つまり嘘をつくのが仕事なのだ。

そんな「嘘のプロ」として、浅生さんはこう断言する。

どんな人でも一日に数回は嘘をついている。人として社会生活を営んでいれば必ずついている。

ドキッとするだろうか? それとも「私は嘘なんてついていない!」と思うだろうか?

言葉を使って生きている限り、僕たちが嘘から逃れることはできないのだ。だから、間違いなくあなたは嘘つきなのである。

誰よりも「嘘」について考えてきた浅生さんが解き明かす、私たちの言葉にひそむ「嘘」とは。浅生さんの著書『ぼくらは嘘でつながっている。 元NHKディレクターの作家が明かす人間関係の悩みが消えるシンプルな思考法』(ダイヤモンド社)で、常識を覆す「嘘」の正体が語られている。

浅生さんが働いていたテレビ局という場所は、「嘘の世界」と「嘘の許されない世界」が入り混じっているところだ。ドラマやバラエティ番組のような「嘘」を作りつつも、ニュースなどの報道番組では「嘘」が許されない。そんな世界で、浅生さんは「嘘」と向き合ってきた。

浅生さんに言わせれば、どんなに「嘘」がないように注意したニュースにも、必ず「嘘」は紛れ込む。なぜなら、現場で起きたことをそっくりそのまま電波に乗せることは不可能だから。放送されるのは、必ず何らかの形で編集された情報だからだ。

こう考えていくと、私たちが何かを伝えようとするとき、「嘘をつかない」というのは不可能なのだ。浅生さんの言う「誰もが嘘つき」とは、こういった意味だ。

嘘が嫌いなあなたは、これを知って悲しくなっただろうか? しかし、浅生さんは決して嘘を否定的には語っていない。

僕は嘘を一方的に悪いものだとか、いけないものだとは思っていない。時と場合によって、あるいは立場によって、嘘は目的を達成するための便利な道具だと考えている。それどころか実は嘘がなければ僕たちは安心して社会生活を送ることができないとさえ思っている。

嘘は私たちにとってとても必要なものなのだ。一方で浅生さんは、近年の社会で嘘が急激に増えていることに危うさを感じている。インターネットには、今日もフェイクニュースやデマ、陰謀論が飛び交っている。同時に、SNS上の「○○警察」など、嘘を嫌悪して過剰に拒絶する動きも高まっている。

けれども、そこで語られている嘘は、僕に言わせればごく狭い意味の嘘でしかない。嘘とはもっと複雑で曖昧で、しかも僕たちの体に染みついているものなのだ。

「嘘」とは何なのかを知れば、私たちを取り巻く無数の嘘との付き合い方が変わるはず。「嘘なんて!」と過剰反応する前に、まずは本書のご一読を。

【目次】
はじめに 僕は嘘のプロである
第1章 この世に「事実」は存在しない
第2章 人はなぜ嘘をつくのか?
第3章 嘘とどう付き合うべきか?
第4章 もしもこの世に嘘がなければ
おわりに 最後に一つ、嘘をつきますよ。

■浅生鴨(あそう・かも)さん
1971年兵庫県生まれ。作家、プランナー。出版社「ネコノス」創業者。早稲田大学第二文学部除籍。
中学時代から1日1冊の読書を社会人になるまで続ける。ゲーム、音楽、イベント運営、IT、音響照明、映像制作、デザイン、広告など多業界を渡り歩く。31歳の時、乗っていたバイクが大型トラックと接触。三次救急患者として病院に運ばれ10日間意識不明で生死をさまよう大事故に遭うが、一命を取りとめる。「死にそうになるのは淋しかったから、生きている間は楽しく過ごしたい」と話す。
リハビリを経てNHKに入局。制作局のディレクターとして「週刊こどもニュース」「ハートネットTV」「NHKスペシャル」など、福祉・報道系の番組制作に多数携わる。広報局に異動し、2009年に開設したツイッター「@NHK_PR」が公式アカウントらしからぬ「ユルい」ツイートで人気を呼び、60万人以上のフォロワーを集め「中の人1号」として話題になる。2013年に初の短編小説「エビくん」を「群像」で発表。2014年NHKを退職。現在は執筆活動を中心に自社での出版・同人誌制作、広告やテレビ番組の企画・制作・演出などを手がける。著書に『伴走者』(講談社)、『アグニオン』(新潮社)、『だから僕は、ググらない。』(大和出版)、『どこでもない場所』『すべては一度きり』(以上、左右社)など多数。
元ラグビー選手。福島の山を保有。声優としてドラマに参加。満席の日本青年館でライブ経験あり。キューバへ訪れた際にスパイ容疑をかけられ拘束。一時期油田を所有していた。座間から都内まで10時間近く徒歩で移動し打ち合わせに遅刻。筒井康隆と岡崎体育とえび満月がわりと好き。2021年10月から短編小説を週に2本「note」で発表する狂気の連載を続ける。

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