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本当に怖いところなのか?長年の疑問を解決すべく「青木ヶ原樹海」をトレッキング!

  • 2022.9.21
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富士山の裾野に広がる「青木ヶ原樹海」。その名を聞くと「怖い」とか「一度足を踏み入れたら、戻ってこられない」とか、負のイメージが浮かびませんか? 正直なことをいうと、筆者もそう思っていた一人。しかし「散策ができる」と知り、「行ってみたい!」という気持ちが押し寄せました。長年抱いていたイメージは一体どう変わるのか。実際に散策してみると、そこには驚きの景色が広がっていたのでした。

 

 

安心して樹海を歩くには

JR中央本線「大月駅」からバスに揺られ、向かった先は、「西湖ネイチャーセンター」。ここは、樹海についてのギャラリーや、今まで絶滅したと思われていた奇跡の魚「クニマス」を間近で見ることができる「クニマス展示館」が併設された施設です。

散策ができるとはいえ、相手は樹海。初心者にとっては不安だらけです。そんなときに心強い存在なのが、「富士河口湖町公認ネイチャーガイド」さん。樹海を深く知るガイドさんと一緒に巡るツアーに参加すれば、安心して散策を楽しむことができます。そのツアーの発着が「西湖ネイチャーセンター」というワケ。

今回の樹海散策は、約5キロ。スニーカーなどの歩きやすい靴に、手が空くようにリュックを背負い、長袖長ズボンに帽子という装備で挑みます。

本格的な散策の前に、「西湖ネイチャーセンター」でもう一つ体験できることがあります。それが「西湖コウモリ穴」への入洞。

「西湖コウモリ穴」とは、富士山の噴火で溶岩が流れ出てできた溶岩洞穴で、総延長350m以上と富士山麓の溶岩洞穴の中では、最大級の規模。この洞穴は冬も温かいため、コウモリの越冬の場として最適なのだとか。

入口でヘルメットが渡され「そんなに危険なの!?」と一瞬怯んでしまいますが、洞穴内は、頭をぶつけてしまいそうなくらい天井が低い場所もあり、「ああ被っていてよかった……」と実感する瞬間が多くあります。

まるで迷路のように支洞がつづき、気分は探検家。太い縄のように固まった「縄状溶岩」で足元がゴツゴツしていたり「鍾乳石」を間近で見ることができたりと、迫力満点です。

ちなみに肝心のコウモリですが、基本的には見ることができません。というのも、越冬のために集まるため、洞穴内を見学できる季節にはいないのだとか。ホッとしたような、残念なような……。

西湖コウモリ穴

住所:〒401-0332山梨県南都留郡富士河口湖町西湖2068

入場料:一般(高校生以上)300円/小・中学生 150円

開/3月20日~11月30日

休/詳しくは問い合わせを

いざ! いよいよ樹海へ

「西湖コウモリ穴」の探検が終わったあとは、いよいよ散策へ。ルートは地図上の2番~9番を通って「竜宮洞穴」を目指し、そこから参道を通ってまた「西湖ネイチャーセンター」へと戻ってきます(画像の赤丸部分)。

樹海の中に入るとトイレはないので、すべての準備を済ませてから出発です。

この先には、長年「怖いところのはず」と恐怖に感じていた樹海が広がっています。異様な雰囲気が漂っていて、時には、木々をかき分けて前に進むような場所もあるだろうと、覚悟を決めつつ一歩踏み出してみると……。

「あれ……歩きやすい!!」

そうなんです。遊歩道が整備されており、視界良好! 木々をかき分けて進む場所など全くありません。

周囲を見渡すと、樹木が鬱蒼と生い茂り、緑深い森がどこまでも広がっているため「そうそう、この感じ!」と、イメージ通りではあるのですが、木々の間から差し込む木漏れ日がとても美しく、緑と青空のコントラストは神聖なパワーを感じるほど。思い浮かべていた負のイメージは一瞬で崩れ、自然の力強さに圧倒されながら、一歩一歩前へと進んでいます。

「青木ヶ原樹海」は、富士山から流れ出した大量の溶岩流の上に形成された原生林なので、あらゆるところにその形跡を見つけることができます。「西湖コウモリ穴」でも見た「縄状溶岩」や、ぽっかりと開いた「洞穴」など、歩いていて見飽きることはありません。

ひょんなところから、動物の存在も知ることができました。

この木は、「ナツツバキ」といって、その名のとおり椿の仲間で夏には白い花を咲かせます。本来の木の肌は迷彩模様のようになっているそうなのですが、この木は、皮がはがされボコボコ。その理由は、鹿が食べてしまったからなのだとか!

こちらの木には、複数の穴が……。これは、キツツキによるもの。そのまま通り過ぎてしまいそうですが、こうやって知ることができるのもガイドさんがいてこそですよね。

ふと、これだけ自然があふれているのに、鳥のさえずりだけが心地よく響き、蝉の鳴き声が聞こえてこないことに気づきました。これも樹海の神秘。地面が溶岩のため、土の中で長い期間を過ごす蝉の幼虫がいないからなのだとか。

また苔やきのこも多く生息しており、フワフワとした「ヒノキゴケ」など、あまり街中では見かけることがない珍しい苔にも癒されます。

絵に描いたような立派なきのこは、「アカヤマドリ」といって、実は食用。ポルチーニ茸のような味わいなのだとか。

この真っ赤なきのこは「カエンタケ」といって、猛烈な毒をもつ毒きのこ! 正反対なのがおもしろいですよね。

そして一番興味深かったのは、樹海の木々。地面が溶岩のため、根っこを張ることができずに横へ横へと伸びていきます。

根っこ張れずに風などで倒れてしまった木は、そのまま朽ちてしまうことも。しかし、ほかの木の養分となり、そこにまた新たな木が育ちます。これを「倒木更新」と呼ぶそうで、樹海では、よく起こることなのだとか。

むき出しになった根っこや朽ちた木の姿は、一瞬不気味に感じるかもしれませんが、理由を聞けば自然がひたむきに生きる姿そのもの。樹海には生きる力があふれているのです。

思わず背筋伸びる「竜宮洞穴」

樹海散策の最後を飾るのは、「竜宮洞穴」です。この周辺は、今まで歩いてきた場所とは少し雰囲気が変わり、厳かな空気が漂っています。

大きく口の開いた洞穴の中をそっと見下ろすと、奥には祠が。水の神様「豊玉姫命」が祀られており、ここはその昔、富士信仰の巡拝の霊場だったのだとか。

祠の近くまでは降りることができるため、足元に気を付けながら進んでいくと、途中から突然グッと温度が下がります。それも、冷蔵庫の中に入ってしまったかのような、冷気が体を包み込みます。明らかな冷気に、ここが特別な場所ということが分かります。

参拝を済ませ、そっと後ろを振り返ると、また神秘的な景色が目の前に広がります。先ほど見下ろした場所から光が差し込み、神々しさも感じました。

結論! 樹海は怖いところではない

散策中、倒木が道をふさぎ、それを乗り越えないといけない場所がありましたが、基本的には平坦な道が続き、インドアな筆者でも難なく散策を終えることができました。かなり早い段階で、ネガティブなイメージとはかけ離れているという事実に気づき、逆に心が浄化されていくような感覚も。

汗を拭くために、マスクを外したその一瞬の空気のおいしさは、帰ってきてからも忘れることができません。“一生の衝撃的なできごと”として心の中に残り続けることでしょう。

西湖ネイチャーセンター

住所:〒401-0332山梨県南都留郡富士河口湖町西湖2068

営業時間:<通常期間>3月~11月 9:00~17:00

<冬季>12月~2月(毎週水曜・12/29~1/3は休み) 9:00~16:00

[All Photos by koume]

 

 

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