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エリザベス女王、全身1色コーデの理由は? ワードローブでたどる女王さまの足跡

  • 2022.9.19
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今月8日、96歳の生涯を閉じたイギリスの女王、エリザベス2世。25歳で王位を継承してから70年余にわたり女王の務めを果たし、英国民のみならず世界中の人々から敬愛されてきた。

伝記や写真集などエリザベス女王にかんする本は数多あるが、本作『女王さまのワードローブ イギリス国民に愛されつづける女王エリザベスの物語』(BL出版)は、エリザベス女王の人生を「服」を通して時代とともにたどる絵本だ。2021年に英国で出版され、22年に邦訳版が出版された。

誕生の時の由緒あるベビードレスにはじまり、王室に代々伝わる宝冠や伝統的なドレス、女王としてのよそおいや帽子コレクションなどが美しいイラストで紹介されているほか、子どもの頃や戦時中の暮らしなど、国民とともに歩んできた女王の足跡が、時代のエピソードとともに綴られている。

華麗なドレスも「仕事着」

戴冠式で身につけた聖エドワード王冠や王笏のほか、ティアラやブローチなど王室に代々伝わる宝飾品のページは乙女心をくすぐる。

女王が式典でよく身につけていた大英帝国王冠には、南アフリカのカリナン鉱山で発見された史上最大の原石をカットしたうちの一つで、カリナンIIと呼ばれるダイヤモンドが中央に据えられ、3000個近い宝石が散りばめられている。重さは約1キロあり、エリザベス女王は93歳になった時、頭にのせるのをやめたそうだ。

また、エリザベス女王といえば、レモンイエローやショッキングピンク、オレンジや赤など、鮮やかな1色で統一された全身コーディネートが印象的だ。これは、身長160㎝の女王が人混みの中でも見つけやすいようにと考えてのことだという。

きらびやかに見えるが、女王にとって装いは、着飾ることよりも重要な意味を持っていた。本書には、エリザベス女王の半生を描いた人気ドラマ「ザ・クラウン」のコスチュームデザインを担当したミシェル・クラプトンさんが、こんなまえがきを寄せている。

<どんなに美しいドレスも、スーツも、それは女王にとっては「女王という仕事」をするための服でもあります。そんな「仕事着」にも、女王は、自分の装飾品(たいてい家族からプレゼントされたものですが)を使って、自分らしさやメッセージを加えます。しゃれた帽子もお好きなようです。こういった小物選びは、女王の個性やユーモア、温かさ、家族への愛情などを伝えているように思います。>
――「絵本の発行によせて」より。

絵本とはいえ、アートとしても読み物としても楽しめる。華麗なドレスや凛としたスーツに身を包み、世界を照らし続けたエリザベス女王。その生涯とイギリスの歴史、世界の国々とのかかわりを楽しく学べる一冊。

■著者プロフィール

文:ジュリア・ゴールディングさん
イギリス、ロンドン郊外で生まれる。ケンブリッジ大学で英文学を学び、卒業後ポーランドで外交官として働く。そののちオックスフォード大学で英国ロマン派文学を学び、博士号を取得。『キャットと王立劇場のダイヤモンド』(キャット・ロイヤルシリーズ 静山社)でウォーターストーンズ児童文学賞、ネスレ子どもの本賞金賞などを受賞。ほかに『キメラの呪い』(コニー・ライオンハートシリーズ 静山社)などがある。

絵:ケイト・ヒンドレーさん
イギリスのブリストル在住。ファルマス・カレッジ・オブ・アートでイラストレーションを学び、印刷デザイナーとして働きながら、絵本やグリーティングカードの制作をしている。はじめての絵本The Great Snortle Huntはケイト・グリーナウェイ賞のロングリストに選ばれた。ほかにYou must Bring a Hatなどの絵本のほか、読み物のThe Royal Rabbitsシリーズのイラストも手がけている。

訳:前沢 明枝(まえざわ・あきえ)さん
翻訳家。アメリカのウェスタンミシガン大学で英米児童文学を、ミシガン大学大学院で言語学を学ぶ。現在は大学で翻訳と英語を教えている。おもな著書に『「エルマーのぼうけん」をかいた女性ルース・S・ガネット』(福音館書店)など。訳書に『家出の日』(産経児童出版文化賞推薦 徳間書店)、『野生のロボット』(福音館書店)などの読み物のほか、絵本では『ぼくだって とべるんだ』(ひさかたチャイルド)、「ミスター・ベンのふしぎなぼうけん」シリーズ(朔北社)、『ビバリーとしょかんへいく』(文化出版局)など多数。

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