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ティモンディ前田裕太「ガラスにはなれない僕」【僕のあまのじゃく#59】

  • 2022.9.18
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僕のあまのじゃく#59

ティモンディ前田裕太さんの人気コラム【前田裕太の乙女心、受け止めます!】がリニューアル。

◁◁

ガラリと雰囲気を変えて、毎週変わるお題に沿って、前田さんに自由に言葉を紡いていただくフリースタイルエッセイ【僕のあまのじゃく】をお楽しみください♡

前田裕太(まえだ・ゆうた)
PROFILE:1992年8月25日、神奈川出身。グレープカンパニー所属のお笑い芸人ティモンディのツッコミ、ネタ作り担当。愛媛県の済美高校野球部に所属した同級生・高岸宏行が相方で、2015年1月に結成。2人の野球経験を活かした『ティモンディベースボールTV』の登録者数は23万超え。ar web連載『僕のあまのじゃく』では、フリースタイルエッセイを毎週お届け中。

テーマ:ガラス

普段何となく目にするガラス。
窓ガラスに使われてたりコップに使われてたりするけれど、その材料は、実は珪砂と呼ばれる砂であって、成分で言えば、公園の砂と同じ。

この珪砂をドロドロに溶かすには1700度以上の高温にしないといけないのだけれど、それだと大変だから、溶ける温度を下げるためにソーダ灰を加え、水に溶けないように石灰を加えて、混ぜてドロドロに溶かした物を、ゆっくり冷やすことで透明のガラスができる。

公園の砂が、高熱で熱せられることで、あんな綺麗なものに変化するなんて、ロマンチックではないだろうか。

ドロドロに溶けて、ゆっくり冷ますことで、透明度の高い、澄んだ物質になっていくのを見ると感動すら覚える。

まるで芸人みたいではないだろうか。

そこら辺にいる、借金をしながらライブに出て、目も当てられない生活をしている芸人は、公園の砂と同じようなものだ。

それが、自身の努力だったり周囲の熱で色々な成分と混ざって、高温になって、最終的に形作られた時には、作品と言われるような形に形成されている。

公園の砂だって、努力次第では、みんなの視線を集めるものに変わることだってできるのだ。

だから、芸人はみんなこぞってライブに出て、より面白いネタを作るように日々励んでいる。

いつか綺麗なガラスになることを夢見て、オーディションに受かるためにネタを磨く。

ご飯を食べれるようになったという点では、僕たちコンビは、ようやく公園の砂からガラスに変化できたようにも思えるけれど、なんだかそこに違和感がある。

その正体を考察すると、おそらく、他の芸人と違って、ネタで世の中に出た訳ではないからなのだろうと思う。

大体の人たちは、ネタ番組で注目を集めたり、M1で結果を残して、世の中が、こんな素敵なガラスがあったのか、と注視する。

僕らの場合は、そうではない。

ゴットタンとアメトークのオーディションに通って、ネタをやることなく、そのままテレビに出させてもらったのだ。

だから、なんだか違和感を感じるのだろう。

調べると、どうやらガラスには色々な種類があって、透明でガラスに見えるようなものでも、アクリルと呼ばれるものをガラスの代用品として使っているものもあるらしい。

きっと僕らはアクリルなんだろう。

肩書きは芸人ではあるものの、その原材料は、なんだか他の芸人と比べると違いそうだし。

ひな壇で色々な芸人と並んでいると、ぱっと見では同じように見えるけれど、作られ方も違うように思える。

ガラス評論家からしたら、僕たちは偽物だと言われても仕方ないだろう。

だから、そう言われないようにこれからも努力していくのだけれど、アクリルはアクリルで、ガラスにはない良さがある。

ガラスに比べて耐久性なんてアクリルは10倍以上あるし、ガラスだけではなくて、他の素材にも使うことができる。

いや、これはただのアクリルの紹介なのだけれど。

ただ、こんなふうに、今までの成り立ち、ここまでの到達の仕方は他のコンビと異なっていても、それにはない良さも見つけていきたい。

加えて、ガラス評論家達を黙らせるような結果も、今後は残していこうと思う。

これだけの熱があったら珪砂もドロドロに溶けるわ。

ー完ー

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