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「そんな偉そうなことを、どの口がいうか」って(笑)。ヨシタケシンスケさんも、自分の子には評価してもらえない!? 【だいすけお兄さんのパパシュギョー!・5(後編)】

  • 2022.9.14
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表現のハードルを下げられるのが、僕の絵本

ヨシタケ 僕の絵本ってこんな絵なので、お子さんが「これなら自分の方がうまくない?」って、絵を描くことのハードルを下げる効果があるみたいです。お手紙とかに描かれている絵が、みんな上手なんですよ。で、それはすごくうれしいことなんですよね。「こんなんでいいんだったらできるよ」って、表現することのハードルを下げられるのが。 僕もずうっと絵が下手と言われて、「人に見せるのは恥ずかしい」という思いがあったから、よくわかるんです。「描くのは好きだけど見せるのは嫌い」っていう気持ちが。大人は「これ何が描いてあるの?」とか、「もうちょっとこうした方がいいね」とか、余計なことをつい言いたくなるんですよね。でも、「描きたいときに描いて、誰にも見せないで捨ててもいいんだよ」「何も言ってほしくなかったら、言わないでおくよ」っていう選択肢をあげてもいいのかもしれない。逆に、「これ、なんだかわかんないじゃん」みたいにお互い一緒に笑い合えていたら、それも楽しいだろうし。 単純に「絵を描く」とか「それを見て意見を述べ合う」ってことにも、実はいろんな着地点があって、お互いが一番楽しい方法を選べばいいっていうことが、今ならわかるんです。自分がそれを言える立場に今いることが、すごく幸せだなと思いますね。

だいすけ 「選択できる」という気持ちって、大事ですよね。夫婦間でも、親子間でも。「自分で選べるんだよ」って子どもに教えてあげられて、選択肢が増えて、生きやすくなるのは、すごくいいことだと思います。

ヨシタケ そう。そうすると、世界の見え方が変わるはずなんですよ。「やらなきゃいけない、でもできてない」だけじゃなくて、「やらなくてもいい」っていう。まあ、そのリスクやペナルティもひっくるめた上で、でも選んでいい、大人じゃなくて自分が決めていいっていうことは、言っていきたい。大人にも、子どもにも。なんとかおもしろおかしく、説教くさくない方法で、「ま、こんなのもあるんだけどねえ~」って、サラ~ッと提案できたらと思います。

だいすけお兄さんが絵本作家のヨシタケシンスケさんと対談。「大人じゃなくて、自分が決めていい」と子どもに伝えたい。きっと世界の見え方が変わるはず。【だいすけお兄さんのパパシュギョー!・5(後編)】の画像1
『ものは言いよう』(白泉社)より
だいすけお兄さんが絵本作家のヨシタケシンスケさんと対談。「大人じゃなくて、自分が決めていい」と子どもに伝えたい。きっと世界の見え方が変わるはず。【だいすけお兄さんのパパシュギョー!・5(後編)】の画像2

自分がありのままに生きるための「ものは言いよう」

だいすけ ヨシタケさんが好きな言葉ですよね、本のタイトルにもなっている、「ものは言いよう」。

ヨシタケ ああ、そうですね。

だいすけ 本当にその言葉に集約されているというか。どういうふうにして行きたいか、その中に答えは必ずあるはずだから。自分が納得して選択できることが、その人がありのままに生きていける世の中を作っていくんじゃないかなあって思いますね。

ヨシタケ そう、選択肢が増えてしばらく経つと、それが市民権を得ていくというか。やっぱり「ものは言いよう」で、言葉って意外といい加減なもので、それぞれの人が自分のルールで勝手に使っているだけであって。 違うルールで使っている言葉に一喜一憂する必要は、本当はないんですよね。「お前、それ、逃げてるだけじゃないか」って言われても、その「逃げる」って言葉だって、否定的な意味で使う人と肯定的な意味で使う人がいるんだよ、その言葉の使い方は、人に強制できるものでもないんだよ、ってことですよね。自分は自分なりの言葉の使い方、言葉の意味づけを考えていくしかないし。 できるだけ人を傷つけない配慮も必要だけれども、とは言え、その配慮ができる人って意外と少ないんだよねえ、だから傷つくことも多いけど、まあそこはね、ある程度しょうがないんだよねえっていう。

だいすけ しょうがないんだよねえ(笑)。

ヨシタケ そうそう(笑)。その「しょうがないんだよねえ」っていう部分を、どうにかおもしろおかしく、「ゼロにできないんだよねえ」って、伝えられればいいんですけど。

だいすけお兄さんが絵本作家のヨシタケシンスケさんと対談。「大人じゃなくて、自分が決めていい」と子どもに伝えたい。きっと世界の見え方が変わるはず。【だいすけお兄さんのパパシュギョー!・5(後編)】の画像3

偉そうなことを言っても、うちの子には評価してもらえない(笑)

だいすけ ヨシタケさんのお子さんは、もう中学生……。

ヨシタケ もう中3です。

だいすけ 中3、いろんなことがわかる年頃ですよね。絵本作家として、またパパとして、どういう存在でありたいという思いはありますか。

ヨシタケ いや、今まで一所懸命ハードルを下げてきたので、回収したい気持ちでいっぱいなんですけど、なかなかそうはならなくて(笑)。下げても下げても下げきれないっていうか。なんか本当に、「その口がこういう偉そうなことを、本で言うのか」っていう、家族からの圧がすごいです(笑)。

だいすけ アハハハハ。

ヨシタケ 「あんな家でぶす~っとしてた父親が、こんな偉そうなことを、どの口が」みたいな。やっぱり家族だからこそ、正当に評価してもらえないんですよ。

だいすけ あ、そうなんですね(笑)。

ヨシタケ これは、どっかの知らないおじさんが描いてる絵本だからこそ「へえ~」っておもしろがれるわけであって。家であれだけお母さんに怒られてたお父さんが描いたものだと思うと、子どもにしてはね、普通に受け取れないですよね。やっぱりそれぐらい、家族は違うもんですね。

だいすけ 違うもんなんだっていうことですね。なるほど~。

ヨシタケ 他人のお子さんはどれだけ喜ばせられても、自分の子は喜ばせられないっていうのは、みんな一緒だと思うんですよ。だいすけお兄さんもそうかもしれない。

だいすけ そうですね、いつか悪口言われるんですよね、きっと。

ヨシタケ そうなんですよ。もうそれは家族だから、人の子とうちの子は違いますね。今日言いたいことは、それに尽きます(笑)。

だいすけ 多分これ、世の中のお父さんが聞いたら、みんな「ですよねえ!」ってなりますよ ね(笑)。

だいすけお兄さんが絵本作家のヨシタケシンスケさんと対談。「大人じゃなくて、自分が決めていい」と子どもに伝えたい。きっと世界の見え方が変わるはず。【だいすけお兄さんのパパシュギョー!・5(後編)】の画像4
プロフィール
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横山だいすけ よこやまだいすけ/NHK Eテレ「おかあさんといっしょ」の歌のお兄さんを2017年3月まで最長9年務める。「子どもに良質の音楽を届けたい」という目標のもと、舞台、ラジオ、TVなど幅広く活躍。NHK Eテレ「すイエんサー」(毎週火曜19:25~19:50)他出演多数。YouTubeチャンネル「だいすけお兄さんのわくわくスクール」も配信中。 Web:yokoyamadaisuke.com/ Blog:ameblo.jp/daisuke-yokoyama/ Twitter:@daisuke_minna Instagram:@daisuke_youtube

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ヨシタケシンスケ よしたけしんすけ/絵本作家。『りんごかもしれない』(ブロンズ新社)で絵本デビュー、MOE 絵本屋さん大賞6冠他受賞多数。『ヨチヨチ父 とまどう日々』(赤ちゃんとママ社)『あつかったら ぬげばいい』(白泉社)など多数の作品があり、子どもから大人まで幅広い世代に人気を得ている。

インタビュー/原 陽子 撮影/大森忠明 スタイリング/吉岡ちさと(だいすけさん) ヘアメイク/安藤千浪(だいすけさん) だいすけさん衣装/ノルディックセーター40700 円(COOHEM)、チェックカーゴパンツ25300円(BLUE BLUE) / 全てHOLLYWOOD RANCH MARKET 、靴/スタイリスト私物

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