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「グレーゾーンは発達障害より楽」は間違い。グレーゾーンにしかない"困難"とは

  • 2022.9.11
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「発達障害」や「グレーゾーン」といった言葉が広く認知されるようになった。もしかしたらうちの子も? あるいは、私自身も? と思っている方もいるかもしれない。

一方で、「グレーゾーンは発達障害よりも程度が軽いもの」という認識がないだろうか。確かに、「グレーゾーン」は発達障害というほどではなく診断には至らないケースを指すので、ある意味でそれは間違っていないのかもしれない。しかし、だからといって「グレーゾーンは発達障害よりも楽」と考えるのは早計だ。実はグレーゾーンは、診断のつく発達障害者よりも生きづらいという研究がある。

発達障害の程度だけでは語れない、"グレーゾーンならではの生きづらさ"が解説されている本がある。精神科医の岡田尊司さんによる『発達障害「グレーゾーン」 その正しい理解と克服法』(SBクリエイティブ)だ。

岡田さんは精神科医として、実際に数多くのグレーゾーンのケースに向き合ってきた。岡田さんが指摘する"グレーゾーンならではの生きづらさ"は、以下のようなものだ。

障害レベルでないため、特別な配慮や支援もなく、難しい課題にも取り組むことが求められるし、健常者と対等に競わされる立場にも置かれやすい。グレーゾーンのケースは、ある部分では能力の高いケースも少なくないため、その人にかかる期待も大きくなる。生きづらさや困難が減るどころか、期待値の高さとのギャップに苦しむことになりやすいのだ。
それだけでなく、グレーゾーンにはグレーゾーン特有の生きづらさが生じ、それは障害レベルの状態とは質的に異なる困難さだとも言える。あとでも見ていくように、グレーゾーンのケースには愛着や心の傷といった問題が絡んでいることが少なくない。(本文より)

支援がなく健常者と同じ環境に置かれるからこその困難、さらに愛着やトラウマの問題。「症状の程度が軽いから大丈夫」では片付けられないことがよくわかる。岡田さんは、診断がつくかつかないかよりも、一つ一つの特性への理解を深めて対処することが重要だと説いている。

本書で解説されているグレーゾーンは、以下の8タイプだ。

1.同じ行動を繰り返す人たち「こだわり症・執着症」
2.空気が読めない人たち「社会的コミュニケーション障害」
3.イメージできない人たち「ASDタイプと文系脳タイプ」
4.共感するのが苦手な人たち「理系脳タイプとSタイプ」
5.ひといちばい過敏な人たち「HSPと不安型愛着スタイル」
6.生活が混乱しやすい人たち「ADHDと疑似ADHD」
7.動きがぎこちない人たち「発達性協調運動障害」
8.勉強が苦手な人たち「学習障害と境界知能」

グレーゾーンは、診断のつく層よりもずっと数が多く、またそれぞれの特性によってバリエーションも膨大だ。自分や我が子が「そうかも?」と疑っている方は、ぜひ本書で、グレーゾーンの中にあるさまざまな特性を知ってほしい。あなたの助けになる情報がきっとあるはずだ。

■岡田尊司(おかだ・たかし)さん
1960年、香川県生まれ。精神科医、作家。医学博士。東京大学文学部哲学科中退。京都大学医学部卒。京都大学大学院医学研究科修了。長年、京都医療少年院に勤務した後、岡田クリニック開業。現在、岡田クリニック院長。日本心理教育センター顧問。パーソナリティ障害、発達障害治療の最前線に立ち、現代人の心の問題に向かい合っている。著書に『アスペルガー症候群』(幻冬舎)、『愛着障害』(光文社)、『母という病』(ポプラ社)、『パーソナリティ障害』(PHP研究所)などベストセラー多数。小説家・小笠原慧としても活動し、作品に横溝正史賞を受賞した『DZ』、『風の音が聞こえませんか』(ともに角川文庫)などがある。

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