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質の良い睡眠をはじめる。まずは深い眠りに入る条件を観察する

  • 2022.9.7
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加藤淳一 イラスト

教えてくれた人:稲葉俊郎(医師)

深い眠りに入る条件を観察する

眠りの時間をおろそかにしている人って、案外多いのでは?
「それは大きな間違いなんですよ。実は、眠りこそが人生の主体なんです」と医師の稲葉俊郎さんは言う。

人生の主体?一体どういうことなのだろう。

「人間には外の世界を検索するための“五感”が備わっていますよね。起きているとき、意識は外に向いて、人とコミュニケーションしたり、社会を作ったりしながら生活しています。

しかし、そこだけに重きを置いていると、自分の皮膚の内側に命があることを忘れてしまう。命がなければ人生はありませんよね。命とは眠りの時間に育まれるのです。まずは発想を変えることが、質の良い眠りのためのはじめの一歩です」

現実と夢の間にあるぼーっとした状態がカギ

本来、人間は起きている時間(外界)と寝ている時間(内界)を行き来するリズムの波が、うまく調和するようにずっと続いているのだという。それが崩れると、どうもイライラしやすくなるなんてことが起き、精神が不安定になるんだそう。

稲葉さんいわく、「内界のバランスが不安定なときは土台が崩れているので、うまくいきっこありません」とのこと。

「私たちは普段、お金や人間関係のわずらわしい、情報化された大変な世界で生きていますよね。でもそれは一時の旅みたいなもので、どんな人も必ず、眠りという生命の巣へと戻ります。内界と外界の2つの世界はまったくの別モノです」。

そんな別モノである外界から内界へと戻っていくには、それなりの準備が必要なことがわかるだろう。“今から内界の世界へ戻りますよ”と、夜になったら戸締まりをするように、自分の体に“お疲れさま”と。

いつもみたいにスマホを見ながら崩れ落ちるように寝るのではなく、自分の内側に意識を向けていく時間をあえて作るということだ。例えば、薄暗くしたバスルームでお湯にゆっくり浸かったり、クラシック音楽を聴いたり。

「人は、外界と内界の間にいる時間が一番心地いいんです。時間や空間、肉体などの制約から解き放たれた、夢に近い状態です。この“無我夢中”と呼ばれる状況を意識的に作る練習が必要なんです。これを続けると、驚くほど眠りの質が変わります。

そして、深い眠り、良質な眠りができたら、目覚めとともにその理由を検証してみてください。
すると、自分にとっての無我夢中の状態へと誘われたパターンが見えてきます。あとは再現して実験を繰り返すだけです。常に最上の眠りに就ければ、毎日の眠りが楽しくなりますよ」

稲葉さんに聞いた、無我夢中の状態となり眠りの質を高めるヒントを上で紹介。あなたにも効く方法が見つかるかも⁉

眠りのコツをつかめるかも?試してみたい4つの方法

加藤淳一 イラスト
旅に出て、普段と違う就寝環境で眠ってみる。/「旅先では、なぜかよく眠れるものです。温泉に浸かったり、自然に触れたりしてリラックスすることもありますが、普段と異なる環境へ旅することは、人間関係やお金なんかのわずらわしい外界を忘れ、内界へと帰っていく旅でもあります」
加藤淳一 イラスト
電車に乗ってうたた寝してみる。/「電車に揺られるとどうしてこうも眠くなるのでしょう。皆さんもきっと一度は体験したことがありますよね。そう、頭がカクッとなったこの状態こそが“無我夢中”の状態。この感覚を覚えておくことが最上の眠りを生む訓練にもなります」
加藤淳一 イラスト
日中、クラシック音楽やアートを鑑賞する。/「音楽やアートの鑑賞というのは、外界の中にありながらも内界を見つめる、そんな時間だと思うんです。夜の時間も、心が落ち着く絵を一つ寝室に飾ってみるのもいいかもしれないし、心安らぐ音楽を聴くのもぜひ試してみてほしいです」
加藤淳一 イラスト
寝る前に、ろうそくの火をじっと見つめる。/「不眠症の患者さんにも効果があったのがこの方法。薄暗くした部屋の中で小さな火が揺らめくのを眺めていると、ぼーっとしてきます。外界と内界の間にいるということですね。お風呂の中でキャンドルを焚くのも一理あるなと思います」

profile

稲葉俊郎(医師)

いなば・としろう/1979年生まれ。東京大学医学部附属病院勤務を経て、2020年軽井沢へ移住。軽井沢病院の副院長を務め、信州大学などで教鞭を執る。執筆、アート分野でも活躍中。

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