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「日本が100人の島だったら?」と例えることで経済の仕組みが理解できた

  • 2022.9.5
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経済を分かりやすく理解するためのヒントとは?
経済を分かりやすく理解するためのヒントとは?

経済って分かりにくい…。なぜなら、「難しい経済用語や謎の数字が出てくるから」「話のスケールが大きすぎるから」「自分の暮らしとの関係がよく見えないから」。今回紹介する、「東大生が日本を100人の島に例えたら 面白いほど経済がわかった!」(ムギタロー著、井上智洋監修、望月慎監修/サンクチュアリ出版)は1人の東大生が、日本や世界のお金の動きを、「100人の島で起きた出来事」としてまとめ、分かりやすく解説した本です。

言葉を使うとは

「チンパンジー100匹が無人島に流れ着き、暮らしを始める」「ヒト100人が無人島に流れ着き、暮らしを始める」。2つの暮らしの違いを決定づけるものはなんでしょうか。筆者は「言葉」だと言います。

「ヒトは、『A.私は家を作る』『B.私は水を探す』『C.私は食料を調達する』『D.私はオオカミが来ないか見張りをする』というように『言葉』を使って簡単に役割分担することができます。さらに、手に入れた家や水や食料を『言葉』を使って分配することができます。オオカミが出なかった場合、Dさんは『ただ立っていただけ』ということになります」(著者)

「チンパンジーであれば、ただ立っていただけのDさんに、手に入れた家や水や食料を渡すことはないでしょう。しかしヒトはその仕事の大切さを『言葉』で共有し、理解もできているので、Dさんに水や食料を分配しても不満は出ないのです」(同)

さらにヒトには 「言葉」 があるから、知識を継承することもできます。誰かが何十年もかけて鉄の作り方を発見すれば、次の世代は、何十年もかけて試行錯誤をしなくても、鉄の作り方を「言葉」で学ぶことができます。すると次の世代は、その「鉄の作り方」をベースとして、さらに新しい技術を生み出すことができるというのです。

「何千年もかけて人類が積み重ねた知識を継承してきたから、いま私たちは、 スマホのようなすさまじいテクノロジーを手にしています。もしも無人島で知識ゼロからスマホを作ろうと思ったら、何千年もかかってしまうのです。このようにヒトは言葉によって、『役割分担』をし、『物資の分配』をし、『知識の継承』をしながら発展してきました」(著者)

これがヒトの強みであり、そして、ここから経済が始まっていきます。その単純にも複雑にも見える不思議な仕組みがあると、著者は解説しています。

役割分担とは何か

ここに100人が住む島があります。住民たちは一人ひとりが自給自足しているのではなく、みんなで協力して、役割分担をしながら暮らしています。100人が生きていくために必要なものが3つあります。それは食料・モノ・サービスです。これらを作るために、みんな働いています。

「10人は農家です。彼らは『食料×100』をつくることができます。『食料×100』があれば、島の100人は飢えずに生きていけます。40人は職人です。建物・家具・服・日用品などのモノを作っています。40人の職人がいれば、生活必需品×100 を作れます。50人はサービス業です。髪を切ったり、荷物を運んだり、お笑い芸人としてみんなを笑わせたりするなどして、島をより良い環境にして、100人が楽しく生きていくためのサービスを作ります」(著者)

「さて、ここで質問です。『この島にはまだ“お金”がありませんが、この島の100人はお金が無くても生きていけるでしょうか・・・?』答えは生きていけるです。ただし、住民全体が仲のよい家族のような関係だったらの話です」(同)

皆に平等の精神があれば、平等に分け与えることが可能です。住民分足りているなら仲良く分配することが可能でしょう。ただし、100人もいるとなるとそうはいきません。「もっとよこせ」「交換しろ」などの不平不満が高まるのです。このような状況に陥ると、平等に仲良く分配することが困難になってしまいます。

人が多ければ多いほど「バランスよく分配することが難しくなってしまう」と著者は言います。次に住民は何をするのでしょうか。

ルールを整備していく

そこで住民たちはリーダーを選びました。そしてリーダーが「あなたは怠けていたので、イモを1個とボロボロの服」「あなたはよく働いたので、イモを10個と素敵な服、ヘアカットも付けましょう」と決めていくことにしました。しかし、これでもうまくいきません。

「それは、リーダーが良い人だとは限らないからです。住民たちから集めた食料・モノ・サービスを、『自分の得』あるいは『自分が好きな住民にとって得』になるように分配するかもしれません。また、リーダーが良い人だとしても、住民が100人もいると全員の『がんばり度』を正確に把握することはできません」(著者)

100人の島をもっと暮らしやすくするために、住民たちが取り入れようと決めたシステム。それが 「国」でした。100人の島に「国」というシステムを取り入れるため、住民たちはまず基礎となる「国のルール (憲法)」を決めました。「住民のルール(法律)」も必要です。さらに住民たちは「お金」 というアイテムを取り入れました。

「お金」 があることによって、もめることはなくなりました。イモをいっぱい食べたい人はたくさん働いて、たくさんお金を稼いで、たくさんイモを買えばいいだけだからです。ルールとお金によって、「モノやサービスの分配」だけでなく、「役割分担」の問題も解決されました。

本書は、中高生から大人まで、誰でも「経済が分かる」内容になっています。金利、国債、為替、インフレなどの、難しい「経済の仕組み」を「100人の島」で例えることによって、シンプルに理解できます。

コラムニスト、著述家、明治大学客員研究員 尾藤克之

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