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『からっぽのにくまん』【今日の絵本だより 第314回】

  • 2022.9.2

kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。 こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。

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『からっぽのにくまん』 まつながもえ/作 白泉社 1320円

暑さも少しずつおさまって、秋の気配をあちこちに感じるようになりましたね。 コンビニにもそろそろ、にくまんが並び始める頃。 今回はこのタイミングにちょうどぴったり、できたてほやほや(ほかほか?)の新刊、『からっぽのにくまん』をご紹介します。

ここは、とあるにくまん屋。 眠そうな目をした料理人が、にくまんの皮に中身を包んでいます。 ところが、うっかりひとつだけ中身を詰め忘れたまま、作業を終わりにして休憩室に行ってしまいました。 からっぽのにくまんは、 「ちょっと まって!」 と、せいろから出て料理人を追いかけます。 「たのむよ! ぼくにも なかみを つめてよ!」 とお願いしても、料理人はすっかりお昼寝モードで、全然聞いてくれません。 せいろに戻って、他のにくまんたちに中身をわけてもらえないか、手を合わせてお願いしても、誰もわけてくれません。 「うわーん! だれか ぼくの なかみを つめてよ~!!」 と、からっぽのにくまんはお店を飛び出します。

「ぼく はやりの ピザまんに なれるかも しれないぞ」 と思ってピザ屋を訪ねても、お断り。 「ぼく にんきの あんまんに なれるかも しれないぞ」 と考えて和菓子屋を訪ねても、やっぱりお断り。 からっぽのにくまんは、お店を訪ね歩く内に、おなかがペコペコに。 だんだんしぼんで、小さくなって……。

『からっぽのにくまん』は第10回MOE創作絵本グランプリで、応募総数957点の中から選ばれたグランプリ受賞作。 生まれたてのにくまんが自分の足で、自分の中身を探しに行く冒険は、まるで「はじめてのおつかい」を見守る気分。 「がんばれー!」と、親子で手を振って応援したくなります。 ドキドキハラハラからの、大満足。 小さなにくまんの大きな冒険の、愉快で幸せなゴールを、ぜひ裏表紙まで見届けてくださいね。

選書・文 原陽子さん はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。

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