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書店では売っていない。博物館でしか買えない9冊の限定本

  • 2022.8.29
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遠野市立博物館の限定本『オシラ神の発見』、宮崎県総合博物館の限定本『宮崎の土人形~佐土原人形の世界~』、広島市郷土資料館の限定本『広島の競馬場』

博物館では、常設展示物をまとめた「展示案内」や、特別展の内容をまとめた本、独自に企画した本などを出版している。これらの本は、地域性が非常に高い。そのためいい意味で読む人を選ぶ。必要ない人にとっては、全く興味をそそられない内容の可能性もある。逆を言えば、少しでもその地域について知りたいと思えば、これ以上ない有益な本なのだ。

例えば、斜里町立知床博物館が出している『地名探訪 しゃり』では、斜里町の土地につけられているアイヌ語地名を写真や地図と共に説明。オタモイという地名が「砂浜の入り江」を意味するようにアイヌ語地名は地形を表すことが多い。しかし開発などで地形は変わり、地名が意味する地形がなくなってしまったところも。

それらをまとめ出版し、多くの人の手元に残すことは記録と記憶を次世代につなぐ、非常に意義のあることと言える。つまり地域性の頂点のような本なので、いい意味で一般の書店に並ぶような内容ではないということ。ただ、こういう本が手に入るのが、博物館の面白いところでもあるのだ。

ちなみにこの『地名探訪 しゃり』は斜里町にテーマを絞った『郷土学習シリーズ』の一冊で、このような内容の本が20巻も出ている。深掘りがすぎる良書だ。また、もう一つに専門性が高いことも博物館の本の特徴に挙げられる。『地名探訪 しゃり』もそうだし、徳島県立博物館の『祖谷─その自然とくらし─』では時代別の全国の焼き畑の分布のデータを提示するなど、多くの人には直接関わりがなさそうなデータが掲載されている。どの本も専門性は高いが、一般の人でもわかる言葉で書かれているので理解はたやすい。

博物館の本でなら、現地に行かなくても何度でも、裏付けのある歴史や文化に出会える。そして大抵、重版はない。一度刷ってそれがなくなれば終わりだ。「今度買おう」が通用しない。出会った瞬間に買った方がいい。博物館の本は一期一会だ。

『遠野物語と河童』遠野市立博物館

遠野市立博物館の限定本『遠野物語と河童』

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『遠野物語と河童』遠野市立博物館

全国各地に河童の伝説が残されている。本書では全国にある河童のミイラや手形などがカラー写真で掲載。遠野の河童が全国的に有名になった経緯なども記されており、伝説だけではなく、実態として残る河童を知ることができる。

『藁のちから』遠野市立博物館

遠野市立博物館の限定本『藁のちから』

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『藁のちから』遠野市立博物館

かつて人々は藁の恩恵を受け生活していた。エジコで育ち、ミノやワラジをまとい、夜は藁布団で眠った。表題の通り藁の力で生かされていた。そんな藁の品種や利用法が記される。信仰対象でもある藁人形の紹介ページは見応え十分。

『祖谷ーその自然とくらしー』徳島県立博物館

徳島県立博物館の限定本『祖谷ーその自然とくらしー』

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『祖谷ーその自然とくらしー』徳島県立博物館

徳島県の祖谷地方は標高1,500mを超える山々に囲まれた土地。本では植生や生物、そこで暮らす人々の文化が記される。平らな耕地がない山村で斜面を切り開き、いかにして換金作物を作ったのかなどを知ることができる。完売。

『斜里・知床の近代化遺産』『地名探訪 しゃり』斜里町立知床博物館

斜里町立知床博物館の限定本『斜里・知床の近代化遺産』
斜里町立知床博物館の限定本『地名探訪 しゃり』

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『斜里・知床の近代化遺産』斜里町立知床博物館

1979年の『知床の蝶』から98年の『斜里・知床の近代化遺産』まで年に1冊のペースで全20巻が出版されている。斜里町の自然や文化、歴史を知るためにはこの上ない資料。

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『地名探訪 しゃり』斜里町立知床博物館

北海道の斜里町について学べる郷土学習シリーズ。斜里町の自然や文化、歴史を知るためにはこの上ない資料。

『干潟の恵み〜カキとノリの物語〜』広島市郷土資料館

広島市郷土資料館の限定本『干潟の恵み~カキとノリの物語~』

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『干潟の恵み〜カキとノリの物語〜』広島市郷土資料館

広島湾沿岸で古くから養殖されているカキとノリの広島での歴史が記されている。養殖方法や道具の移り変わりを当時の写真と共に掲載。読了後はカキやノリについて語れるほど詳しくなれる。

『オシラ神の発見』遠野市立博物館

遠野市立博物館の限定本『オシラ神の発見』

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『オシラ神の発見』遠野市立博物館

桑の木などで作られた御神体にオセンダク(着物)を着せた、柳田國男著『遠野物語』にも登場するオシラサマ。遠野のみならず、東北各地でよく見られる民間信仰の一つだ。地域ごとの信仰形態や形の違いが一冊にまとめられている。

『宮崎の土人形〜佐土原人形の世界〜』宮崎県総合博物館

宮崎県総合博物館の限定本『宮崎の土人形~佐土原人形の世界~』

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『宮崎の土人形〜佐土原人形の世界〜』宮崎県総合博物館

粘土を素焼きにして色をつけた土人形。京都・伏見の土人形が最古といわれるが、宮崎県にも約400年の歴史を持つ佐土原人形があり、その歴史や制作過程はもちろん、全国の土人形も紹介されている。

『広島の競馬場』広島市郷土資料館

広島市郷土資料館の限定本『広島の競馬場』

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『広島の競馬場』広島市郷土資料館

現在の日本には中央、地方合わせて25の競馬場が存在している。広島にもかつて深川競馬場や広島競馬場などが存在したが今は見ることができない。そんな今はなき競馬場の盛況だった頃の様子を窺うことができる貴重な本と言える。

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