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「出産育児一時金」が増額で…逆に費用が増えるカラクリとは?

  • 2022.8.28
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政府は2023年度から出産育児一時金の増額を発表しました。一方で、かえって出産費用が増えることも懸念されています。本記事では出産費用が増えるカラクリを解説します。

■42万円もらえる出産育児一時金とは

出産育児一時金は子どもを出産した人に対して(国民)健康保険から支給される給付金です。支給額は原則として1児につき42万円(一部、40万8,000円の場合あり )です。

これは正常分娩には保険が効かないためで、出産に要する経済的負担軽減を目的に、1994年に創設されました。ちなみに創設時は、当時の国立病院の平均分娩料を根拠とした30万円でした。その後、出産費用の増加につれて、出産育児一時金も35万円、38万円、42万円 と順次上がっています。

■現状では42万円でまかなえない

出生数の減少、高齢出産の増加による入院長期化等を背景に、出産費用は増加する一方です。厚生労働省によると、2020年度の公的病院での出産にかかる費用の全国平均額は45万2,000円。

公的病院に限らない調査(※)では、最も多いのが「51万円~60万円(30.4%)」で、「61万円~70万円(21.6%)」、「43万円~50万円(15.2%)」と続きます。一方、42万円以下だった人は、なんと調査対象の約7%でした。

※子どもと家族のための緊急提言プロジェクト事務局「出産費用に関するWEB調査の結果(2022年4月調査実施)」

■出産費用負担増加のカラクリとは?

正常分娩は自由診療で、料金は医療機関の裁量に任されています。それもあり、エステや豪華な食事など、より快適・安心な出産サービスにかかる料金や入院予約金といった、本来の分娩費用以外の料金を徴収する施設が増えています。

もともと出産育児一時金は分娩費用をもとに金額設定されているため、差額分はますます増える傾向にあります。

■出産費用はますます増加する?

より快適・安心な出産サービスの提供は、少子化、高齢出産といった社会事情を味方に付けた結果かもしれません。

授かった子を安全に産みたい思いと、経済的余裕を見込んだ料金設定と考えられます。そうであれば、一時金が増額されればさらに値上げされる懸念もあります。妊娠・出産に関する医療制度自体の改善を期待したいものです。

文・續恵美子(日本FP協会認定CFP(R))
生命保険会社にて15年勤務した後、ファイナンシャルプランナーとしての独立を目指して退職。その後、縁があり南フランスに移住。夢と仕事とお金の良好な関係を保つことの厳しさを自ら体験。生きるうえで大切な夢とお金のことを伝えることをミッションとして、マネー記事の執筆や家計相談などで活動中。

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