ステラ・マッカートニー、両親とファッションの思い出。

フランス、イタリア、アフリカ、イギリス……さまざまな国籍やルーツを持つ6人のデザイナーが、プライベートなファミリーポートレートを公開。子ども時代の思い出や、家族から受けた影響について教えてもらった。

Stella McCartney[ステラ・マッカートニー]

「自分のスタイルや人格形成において、私は両親の影響を強く受けています。子どもの頃、ふたりのツアーに同行することが多かったからかもしれません。新しい街で、毎日素晴らしい出会いがあり、スコットランドの自宅の農場に戻れば、豊かな大自然の中での暮らしが待っていました。ファンキーで、自由で、素敵なギャップに満ちた子ども時代でした。 

両親は菜食主義者であり、人権問題や環境問題にも熱心でした。両親の倫理観を身近に知るようになり、そうした価値観をファッションの仕事をするうえで、必然的に大切にするようになりました。 

子どもながらに素敵だなと思っていたのは、両親が服をシェアしていたことです。ママがパパの服を着ることもあったし、その逆もありました。両親のスタイルはいま見ても新鮮で、ブランドのユニセックスライン、ステラ シェアードコレクションの原点でもあります。ママの花柄のシャツを着たパパの写真を見つけた時、『なんてクールなの！』と衝撃を受けたことを覚えています。ビートルズ時代のポール・マッカートニーの服装は、いまでも私の創作のインスピレーション源です。母のまっすぐさや、真摯に物事に向き合う姿勢も素晴らしい誇りに感じています。だからこそ私の母は、時代を先取りできたのだと思います。たとえば、母は髪を切る時、髪の毛をパッと持ち上げてハサミでぱっつりとまっすぐに切っていました。また、ヴィンテージと新品の服、サンローランと手頃で遊び心のある服などをミックスして、自分なりのファッションを楽しんでいました。いまでも、私のコレクションのムードボードには、必ず母の写真が含まれています」

子どもながらに素敵だなと思っていたのは、両親が服を共有していたこと。

ロンドン生まれ。1995年にセントラル・セント・マーチンズを卒業。97年よりクロエのクリエイティブディレクターに就任。その後、自身の名を冠したファッションハウス を設立。2001年10月にパリで最初のコレクションを発表した。菜食主義者で、デザインにレザーやファーを一切使用しない。すべてのコレクションを通じてサステナビリティにコミットしており、責任を果たす、誠実でモダンな企業であり続けることをブランドの精神としている。

＊「フィガロジャポン」2022年7月号より抜粋