【福島県版学びのススメ】福島県教育総務課堀家健一課長の教育コラム

８月５日号リビング福島・郡山より

暑い日が続きます。先日は、ビニールプールを出して娘たちを遊ばせました。酷暑の中での水遊びは心地よく、半日近く遊び、夕方にはすっかり肩に日焼け痕ができていました。その日の午前中にはJAの農産物直売所に行き、新鮮なキュウリやトマト、桃などを買ってきて食べました。新鮮な（そして驚くほど安い！）野菜たちでしたので、特に加工はせずに丸かじり。みずみずしさと野菜のうまみが口の中に広がります。爽やかな香りと優しい甘さの果物も食べて、お昼からはプールで存分に遊んで、子どもたちにとっては大満足の一日になったようです。改めて福島に来て、自然の豊かさとその恵みを、五感全てを通して感じることができる有り難さを知った一日でした。

妻は近頃、海外の男性ヒップホップグループに御執心です。動画サイトでミュージックビデオを再生しては、正座をして見入ったり、娘たちと一緒に踊ったり。私も家事の際のBGMとして気に入っており、CDを買おうかという話になりました。最初に買ったアルバムも良かったのですが、気に入っている曲が入っていない。そこで、その曲が入っているCDを探したところ曲数が少ない割に非常に高価なものでした（後で分かったのですが、写真集など付録が付いているため高かったのです）。妻の友人も同じアーティストのファンなのですが、その方は楽曲をデータで購入したそう。わが家もデータで買うかどうか検討したのですが、結局、少々高価でもCDアルバムを購入したいなという結論になりました。媒体があることで、パソコンだけでなく、車のオーディオはじめいろんな形でデータを取り込むことができますし、わざわざパソコンを立ち上げなくとも、プレーヤーで聞くこともできる。興味がある友人や親戚がいれば貸すこともできる。昭和生まれの我々夫婦は「やっぱりCDがいいよね」と意気投合したのでした。 データ配信やサブスクリプションによる楽曲試聴もそれはそれで良さがあります。通販で購入すると送料も届くまでの時間もかかります。保管する場所も必要です。それでも、上述のとおり、リアルな物にはリアルにしかない良さがあります。AIをはじめとするICTの進歩の著しい近年だからこそ、デジタルの良さも認識しつつ、リアルでしか味わえない価値を再確認する必要があると思っています。

これは学校教育も同じです。GIGAスクール構想による１人１台端末の整備など、学校現場でも急速なデジタル化が進んでいます。当然、これからの時代の学びの在り方を考えると、デジタル技術を上手く活用していくことが必須になります。しかしながら、学校教育は生身の教師と子どもたちとの全人格的な関わりの中で成長が促される営みでもあります。いくらAIが進歩しても、さまざまな論点について話し合ってお互いが納得する結論を導くことや、いろんな人の心情に配慮しながら物事を進めることは人間にしかできないことです。こうした人間ならではの力をしっかりと育むためには、リアルとデジタルを上手く組み合わせた形に学校の在り方を変革していく必要があるのです。

福島県教育委員会では「学びの変革推進プラン」の中に「福島ならでは」の教育の充実を標榜しています。豊かな文化と歴史を有し、自然にも恵まれている本県。東日本大震災や原子力災害、廃炉や処理水の問題など、リアルな課題も山積しています。こうしたさまざまなリアルをしっかりと子どもたちが受け止めて学びにつなげていけるよう、「福島ならでは」の学びの充実に取り組んでいきたいと考えています。