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異世界だからこそ際立つ、 恋をすることについて。

  • 2022.8.21
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女の生きざま、夫婦という関係性、ジェンダーの呪い、シスターフッド……。漫画は幅広い社会問題や多様性に切り込み、さまざまな愛のカタチを知ることができる大人の読み物。エッセイスト犬山紙子が、いま読むべき作品を厳選&コメント。

ファンタジーながら、 粘着質な恋愛に共感。

『あげくの果てのカノン』(全5巻)

米代 恭著 小学館刊 各¥607

地球外生命体の侵略を受けた近未来の東京が舞台。高校時代から好きだった先輩と再会するも、彼は既婚者で、世界の英雄で……。SF×不倫という異色の恋愛が描かれた話題作。「主人公はストーカー気質の女の子で、高校時代に好きだった堺先輩のゴミを収集したりしてしまう。 好きな相手のSNSを何度も見てしまったり、ここまでいかずとも、恋をしたら誰もがどこかしら思い当たるところがあるはず。そういう粘着質な恋が集約されていて秀逸な作品」

宇宙人Qとともに、 恋を探っていく大冒険。

『Q、恋ってなんですか ?』(全3巻)

Fiok Lee 著 講談社刊 各 ¥748

人と接するのが得意でない会社員の男性が、ある日、夜の公園で蝶を追いかけるQさんに出会う。実はQさんは生き物を収集しに来た宇宙人で……!?「主人公は、性別がない宇宙人Qとともに地球人の生殖を見つめていくことに。恋ってなんですか?というタイトルどおり、恋を知らないふたりが動物たちの恋を通じて恋ってなんだろうということを探っていく。哲学的な展開が期待でき るストーリーと、丁寧な描写と優しい絵で、大人の女性にも薦めたい」

誰もが九龍に恋をする、 交錯するノスタルジー。

『九龍ジェネリックロマンス』(1〜7巻)

眉月じゅん著 集英社刊 各 ¥660

東洋の魔窟と言われるノスタルジー あふれる九龍城砦を舞台に、30代男女の日常と非日常を通してラブロマンスを描き出すSF作品。「雑多な九龍城の街並みと、恋というものの懐かしい気配が交錯する。汗をかいているだけなのに、美しい肉感的な絵からセクシーさが匂い立ち、確実に恋心がくすぐられる作品。記憶のない主人公が、自分であるためにいろんなことを選び取り、主体性を持って生きていく。自分は自分で作っていくというのが裏テーマにある」

 © 眉月じゅん / 集英社

犬山紙子Kamiko Inuyama1981年、大阪府生まれ。イラストエッセイスト、コラムニスト。ファッション誌の編集者を経て、『負け美女ルックスが仇になる』(マガジンハウス刊)でデビュー。雑誌、テレビ、ラジオなどで幅広く活躍中。madameFIGARO.jpでは「犬山紙子がいま思うこと」を連載中。

*「フィガロジャポン」2022年3月号より抜粋

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