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クラシックの曲名って、なぜ分かりにくいの?

  • 2022.8.19
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クラシック音楽は「難しい」というイメージがあるかもしれない。でも、実はとっても面白い!

8月12日に発売された『教養としてのクラシックの名曲100 作品・楽器・作曲家のポイントがわかる!』(日本文芸社)は、大人の教養として押さえておきたい珠玉のクラシック名曲100曲を厳選し、知っておきたい基本と語りたくなる魅力をまとめた入門書だ。

「交響曲」「協奏曲」「管弦楽曲」「独奏曲」「歌劇・バレエ音楽」などから人気の名曲を掲載。これらの違いからしてわからない、という初心者はもちろん、クラシックファンが手にすると、ますます曲に対する知識と理解が深まる。つい誰かに話したくなるうんちくが満載だ。

著作権の元祖はベートーヴェン

クラシックを小難しくしていることの一つに、曲名がある。「交響曲第7番 イ長調 作品92」だの、「交響曲第8番 ロ単調 未完成 D.759」など、番号や記号が多くて素人にはわかりにくい。

本書では、こうした曲名の読み方についても、ていねいに教えてくれる。

たとえば、ベートーヴェンの「英雄」。正式な名称は、「交響曲 第3番 変ホ長調「英雄」作品55」という。

「第3番」は、その作家が書いた3曲目の交響曲という意味で、「作品55」は、その作曲家の曲のうち55番目のもの、という意味だ。ただし後者は、55番目に書かれた曲とは限らない。のちに、全作品を整理した際につけられた通し番号、分類用の番号の場合もあるという。

ちなみに本書によると、自作の曲を今日でいう著作権で守ろうとしたのは、ベートーヴェンが最初だそうだ。

さらに本書では、作品のポイントや作曲された時代背景、演奏するにあたり使用される楽器、作曲家の生涯について、1作品につき1見開きで簡潔にまとめられている。

全100曲のうち、一部のラインアップを紹介しよう。

4.「第5番運命」「第9番合唱付き」に続き、初心者を飽きさせない「交響曲第7番 イ長調 作品92」(ベートーヴェン)5. 通常4楽章ある交響曲を2楽章でやめた「交響曲第8番 ロ単調 未完成 D.759」(シューベルト)21. ソロ演奏と指揮の「弾き振り」もこなした天才の「ピアノ協奏曲第23番 イ長調 K.488」(モーツアルト)25. 演奏の聴き比べの入門としておすすめ「ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 作品64」(メンデルスゾーン)42. オペラ・ブッファの第一人者が描いたシンデレラの歌劇「チェネレントラ」(ロッシーニ)43. 上演に4日間かかる?楽劇「ニーベルングの指輪」(ワーグナー)47. チェレスタの響きが愛らしいバレエ音楽「くるみ割り人形」(チャイコフスキー)48. 河の一生を絵画的に描き、祖国愛をこめた交響詩「モルダウ」(スメタナ)70. 考え抜かれ変化に富んだ練習曲「平均律クラヴィーア曲集」(バッハ)82. 背景となった詩の美しさと曲想の明確さで人気の「バラード 第3番 変イ長調 作品47」(ショパン)87. 歴史上初めてピアノのリサイタルを開いたとされるリストの「ピアノ・ソナタ ロ単調」(リスト)88. ヴァイオリンの新しい奏法を網羅してみせた「24の奇想曲(カプリース)」(パガニーニ)

「くるみ割り人形」や「モルダウ」など聴いたことがある曲も、うんちくを知ればより楽しめる。また、曲名からはわからないけれど、これ知ってる!という曲もあるだろう。

このほか「作曲家年表」や「クラシック音楽最盛期19世紀のヨーロッパマップ」、「演奏会を支えるさまざまな仕事」「はじめてのクラシックコンサートの選び方」といったコラム、「紹介しきれなかった名曲10選」なども掲載している。

■目次

序章 クラシック音楽の楽しみ方 新しいものを希求してきた音楽第1章 交響曲の名曲 クラシック音楽の"頂点"第2章 協奏曲の名曲 変化する色彩、多楽章を楽しむ第3章 管弦楽曲の名曲 楽器の音色に、心はずませる第4章 器楽曲・歌曲・室内楽曲の名曲 クラシック音楽の楽しみ方紹介しきれなかった名曲10選

クラシック音楽のハードルをぐんと下げてくれる入門書。大人の教養としてクラシックの名曲をおさえておきたい!という方にもおすすめ。ぜひ音楽を聴きながら、楽しんで。

■監修:山本友重(やまもと・ともしげ)さんプロフィール

東京都交響楽団コンサートマスター。1969年名古屋生まれ。4歳よりヴァイオリンを始める。菊里高等学校音楽科を経て東京藝術大学音楽学部卒業。すばる弦楽四重奏団として第2回パオロ・ボルチアーニ賞コンクールで3位。大学在籍中より各地音楽祭、アンサンブルに多数参加しながら、若干22歳で東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団のコンサートマスターに就任。8年務めた後、2000年から東京都交響楽団のコンサートマスターに就任、現在に至る。アンサンブル∞(無限)主宰。福岡アクロス合奏団メンバー。

■著者:多田鏡子(ただ・きょうこ)さんプロフィール

株式会社ラルゴ音楽企画代表。1955年北海道生まれ。成蹊大学在学中よりジャズボーカリストとして音楽活動を開始。音楽ライターとしてクラシック音楽中心に執筆する他、プロデューサーとして、ジャズレーベル・スタジオトライブレコーズを運営、またホール・コンサート、ライブなどの企画運営、ラルゴボーカル教室主宰、作詞・作曲、ライブ活動など幅広く音楽に携わっている。主な著書に、『わかりやすいクラシック音楽の聴き方』(実業之日本社)、『新オペラ鑑賞事典』(有楽出版社)、『医師とトレーナーがボーカルの悩みを解消する 本』(共著、リットーミュージック)、『持ち歩き音楽記号事典』『持ち歩き楽譜がやさしく読める本』(日本文芸社)などがある。

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