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「Jリーグでプレーしたい思いは今も変わらない」石田雅俊が明かしたKリーグで“突き抜けたい”理由【一問一答】

  • 2022.8.12
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Kリーグ2(2部)の大田(テジョン)ハナシチズンに在籍する日本人MF石田雅俊は現在、韓国で4年目となるシーズンを戦っている。

2019年のKリーグ進出以降、4シーズン通算で1・2部合計99試合35ゴール11アシストを記録(8月12日時点/入れ替え戦含む)。昨季にはKリーグ2で日本人初の年間ベストイレブンに選ばれるなど、毎シーズンで着実に結果を残してきた。

そんな石田の活躍もあり、近年はKリーグでプレーする日本人選手が急増している。

例えば、石田の市立船橋高校時代の同期である磐瀬剛(安山グリナース)は、石田が古巣の安山に掛け合ったことでKリーグ進出が決まった。また今季だけでも、開幕前には天野純(蔚山現代)や佐藤優平(全南ドラゴンズ)、夏の移籍市場では齋藤学(水原三星ブルーウィングス)や小川慶治朗(FCソウル)など、Jリーグで実績のある日本人選手が次々と海を渡っている。

こうした日本人Kリーガーの増加傾向を、長く韓国でプレーする石田はどう見ているのか。来季にプロ10年目の節目を迎えるにあたり、Jリーグ再挑戦の思いも含めて今後のキャリアについても併せて話を聞くと、石田は率直な思いを語った。

石田との単独インタビュー一問一答後編は以下の通り。

(写真=姜亨起/ピッチコミュニケーションズ)インタビュー中の石田雅俊
「優平さんのプレーから学ぶことは多い」

―今季Kリーグは1部に4人、2部に5人と、例年以上に多くの日本人選手がプレーしています。石田選手は2019年から韓国でプレーして、早くも4年目となりますが、近年日本人選手が増えていることに驚きを感じますか。

「1つしかないアジア枠を日本人に使うことは普通というか、理にかなっていると思います。でも、全南(チョンナム)ドラゴンズの佐藤優平さんや蔚山現代(ウルサン・ヒョンデ)の天野純さんのように、日本でキャリアのある選手、大きな結果を残している選手がKリーグに来てプレーしていることがすごく不思議に思います。優平さんとはリーグ戦で何度か対戦していますが、優平さんのプレーから学ぶことはとても多いですし、やはり日本でキャリアを積んだ選手は違うなと感じます。

Kリーグではよく“日本人選手は技術的”という見方をされますが、どうなんでしょう…。今はJリーグでも全員が激しく戦って、走ってプレーするというのがトレンドとしてありますよね。僕もJリーグに友達が多いのでよく試合を観ますが、激しさの面では正直そこまで変わらないと思います。Jリーグもかなり激しい印象がありますし、Kリーグはどちらか言えば攻守がぶつ切りな試合が多い。Jリーグは攻守の切り替えを強く意識しているので、テンポ良く試合が進むことが多いですが、Kリーグは要所の強度こそ高いものの、どちらかというとテンポがゆったりしている印象はあります」

―こうした日本人Kリーガーの活躍から、石田選手にも「良い日本人選手はいるのか」と相談されることが増えたのではないでしょうか。

「多少はありますね。韓国で僕の面倒を見てくれるエージェントがいますが、“良い日本人選手はいないか”と聞かれることはよくあります」

―では、日本人選手がKリーグで結果を残すために必要なこと、最低条件などはありますか。

「結局、その選手のキャラクターによるので、こういうタイプの選手が生き残れるというのはないですね。よくテクニックが上手い選手、ボランチの選手が活躍できるなんて声もありますが、全然関係ないと思います。各々が自分の持ち味を発揮して、“外国人選手”としてチームメイトの韓国人選手以上のレベルを示せれば生き残れるというか、評価されると思います。それはKリーグに限らず、どの世界でも同じことだと思うので、あまりタイプや条件は関係ないと思います」

(写真提供=韓国プロサッカー連盟)全南の佐藤優平と挨拶する石田雅俊

―天野選手が所属する蔚山現代のように、Kリーグでも後方からボールを繋いで得点を狙うスタイルのチームが近年見られるようになりました。石田選手自身もこれまで4年プレーしてきて、Kリーグ全体的なサッカースタイルの変化は感じられますか。

「感じることはありますが、そもそも1部上位のチームは選手一人ひとりの上手さがありますよね。正直、2部でボールを繋いで得点を狙うようなチームはあまりなくて、僕もそこは求めていないですし、割り切って常にやっています。

自分のなかで常に言い聞かせている言葉があって、攻撃時、つまり自分たちがボールを持って、相手がブロックを敷いている状態のときこそしっかり我慢すること。それと、攻守の切り替えの瞬間と守備が最も重要だと常に考えています。守備では前線からボールを奪う勢いでプレスに行って、特に守備から攻撃に切り替わる際のセカンドボールでは絶対に負けないというのを心掛けています。

Kリーグ2では、自分たちがボールを保持している状況でくさびを入れて、そこからパスを繋ぐようなプレーをすることは難しいです。絶対にできないわけではないですが、その回数自体が少ない。なので、僕は攻守の切り替えで絶対に負けないことを意識していて、それができなければ活躍もできないと思っています。そこの割り切りがとても大事ですね。

正直、僕が中盤まで下がってボールを触ろうと思えば触れます。ただ、それは僕の“得点を取りたい”という目的からは反した行為になります。中盤でボールを散らして攻撃のテンポを作ることはできますし、試合中にもっと存在感を放とうと思えば放てます。でも、僕の最大の目的は得点を取ることなので、中盤まで下がること、ボールを散らして攻撃のテンポを作ることなど、これらすべては自分の目的から反した行為になります。

そのプレーをすればするほど“目的”の得点からは遠ざかるので、攻撃時は我慢して、なるべく高い位置で良いポジションを取る。味方から良いパスが来ることはそう多くないですが、そこも我慢する。つまり、攻撃時は我慢しながら良いポジションを取り続けて、守備と切り替えの瞬間のチャンスをモノにするという意識を常に持っています。これはKリーグでプレーするようになってからというより、僕がここ1~2年で意識するようになったことで、その意識でプレーをすると、点を取れるようになった感覚があります」

「森保さんは現実的」

―Kリーグでプレーする身として、現在の韓国代表についてどう見ていますか。6月にはブラジル代表とも対戦しましたが、1-5で敗れていました。

「その試合ではブラジルの地味な強さを感じました。ブラジルもパス回しやポジショニングなど、そこまでオーガナイズされているようなシステムではないですが、結果的に5点決めていますし、ポスト直撃の場面もあったので、不思議な強さを感じました。

当然、フィジカルの強度が高いこともありますが、90分終わってみるとやっぱり強かったんだなって。韓国代表としても、試合運びの部分ではある程度できていましたし、前半なんかはゴールも決めて、“良い勝負なんじゃないか”って一瞬思いましたよね。それでも、あっさり追加点を決める辺りにブラジルの強さを感じましたね。

韓国代表に限った話ではありませんが、パスサッカーや後方からボールを繋ぐサッカーというのは当然リスクがあるわけで、勝てるサッカーではないことが多いですよね。圧倒的に強いのであればまた違いますが、そういうパスを繋ぐチームがリーグ戦で優勝しているのも最近はあまり見ないので。

韓国代表としても、あまり完成度が高くない状況で繋ぎに行ったりしていて、自信を持ってプレーできるのであれば良いですが、そこが中途半端になると厳しくなると思っています。チームとして割り切っていることや約束事があるかにもよりますが、そのスタイルで勝つことは決して簡単ではないと思います」

―では、日本代表についてはどのように見ていますか。

「攻撃の選手も含めて全員がきっちりハードワークしていますよね。そこで規律を持ってプレーできる選手が試合に出ていますし、日本代表ともなれば全員がプラスアルファで自分の持ち味も発揮しているので、やっぱりレベルが高いと思います。

森保さんは結構現実的というか、勝率が高いサッカーというような印象があります。しっかりと規律を守って、守備はコンパクトにして守る。攻撃もシンプルで、スピードのある選手を裏に走らせるような戦い方で。そういうのを見ても、現実的で勝ちやすいサッカーなのではないか、という印象はありますね」

「“消えた市船の石田が…”って感じですよね」

―石田選手も2014年のデビューから今年でプロ9年目。来年には10年目を迎えます。年齢的に中盤の世代となってきたなかで、チーム内でも立場の変化は感じますか。

「それは感じますね。大田も若い選手が多いですし、可愛い後輩もたくさんいるので。僕も言葉では完璧に伝えられないですが、プレーをしながら気になった部分があれば、“ここはこうしたら必ずもっと良くなるよ”、といったアドバイスはなるべく伝えてあげるようにしています。

僕も色んなことを考えて克服してきたので、サッカーに関する言語化能力はある程度高いと思っています。説得力のあるアドバイスや指摘はある程度できるので、相手の納得がいくように、“そんな考え方があるんだ”と気づきになるような助言をしてあげています」

(写真=姜亨起/ピッチコミュニケーションズ)インタビュー途中、ファンとの記念撮影に応じる石田雅俊

―Jリーグでは京都サンガF.C.、SC相模原、ザスパクサツ群馬、アスルクラロ沼津に在籍しましたが、将来的に日本で再びプレーしたい思いは今も変わらないですか。

「変わらないですね。僕も韓国生活4年目になりますが、一人で過ごしていて“きついな”と感じる部分も正直あって。だからこそ、週末の試合だけは必ず自分が勝つという思いで臨んでいますが、それでも日常生活的には孤独な部分もあります。僕も友達やチームメイトと話すことが好きですし、ご飯にもたくさん行きたいと思っていて、それができるとなると日本のチームになりますよね。

以前も話しましたが、恩師の前でプレーしたい、活躍したい思いはありますし、僕もあと何年サッカーできるかわからない年齢なので。ただ、今はまだ韓国でもう少し結果を残さないといけないとは正直思っていますし、まだ突き抜け切れていない部分があるので、本当の意味で突き抜けることができたら、そのとき日本に帰ろうと思っています」

―「突き抜ける」とは、具体的にどういったことでしょうか。

「ある程度、得点の計算が明確に立つ選手になることですかね。Kリーグ2なら最低20点は取って、そこでミラクルを起こして30点取ってしまうような。それぐらい突き抜けた姿を見せつけたいと思っています。それができなければ、これからもずっとKリーグにいたままかもしれない。その可能性も本当にあると思います。そこで終わってしまったら、それが自分の実力だと思います。ただ、今も常に試行錯誤して、どんな手を使ってでも突き抜けたいという思いは忘れていません。

2~30点取れる自信は50%ないぐらいですかね。サッカーは本当に偶然性が高いスポーツなので。本当に運が良くて、出場時間を多く得られれば可能性はあると思います。ただ、現状の出場時間とか、試合中に味方からパスが来ないこともよくあるので、そういうのが続くと、10点とか15点とかになってしまう。ただ、最低でも10~15点は決められると思うので、それ以上決められるかどうかはちょっとした差だと思います。ただ、正直なところどうなるかはわからないですし、本当に予測できないです」

―今シーズン残りの試合をどう戦っていくのか、意気込みはありますか。

「“こういう形であれば突き抜けられる”というイメージは、頭のなかで完全に整理できているので、あとはそれをとにかくピッチ上で示すとことを意識しています。まだ難しい部分もありますが、頭で理解している以上、あとは身体を動かすだけなので、残りの試合でその部分に挑戦したいと思っています。後半戦のいつかのタイミングで爆発するんじゃないかと思っていて、自分のやり続けてきたことが一気に実ることもあるので、そこを狙っています。

人間は良いことも悪いことも忘れてしまう生き物ですが、僕は昨季の入れ替え戦の悔しさはずっと忘れていません。今もたまに思い出したりをして、意識はしています。だからこそ、チームの昇格は最低限の目標ですし、どんな形であっても絶対に成し遂げなければならないと思っています」

―では最後に、日本のサッカーファンに向けて一言お願いします。

「自分は日本で実績を残してKリーグに来た選手ではなく、“韓国で変に覚醒した選手がいる”って認識を持たれていると思いますが、そのなかでも韓国で孤独ながらにもがいています。

自分は決して派手なプレーヤーではないですが、それでも活躍するような面白いタイプの選手だと自負しています。能力的に相手を圧倒するようなタイプではなく、しっかり自分の考えをプレーに落とし込んで、結果としてかなり活躍している選手、だと。なので、そのことを少しでも注目していただけるとありがたいです。

特に京都や相模原、群馬のときの僕とは、プレースタイルも含めてすべて180度変わったと思うので、当時のファンの方々に気にかけていただければと思います」

―市立船橋高校時代の石田選手の活躍を覚えているサッカーファンも多いと思います。

「確かに、市船時代は少し有名だったので、“消えた市船の石田が…”って感じですよね。その石田がどこに行ったんだって感じかもしれませんが、日本の隣のKリーグで苦しみながら頑張っているので、そんな自分のことを気にかけてくれたらと思います」

(写真=姜亨起/ピッチコミュニケーションズ)インタビュー終了後、写真撮影に応じた石田雅俊

(取材・文=姜 亨起)

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