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ポロト湖畔に立つとんがり屋根を目当てに、夏の北海道・白老〈界 ポロト〉を訪ねる

  • 2022.7.28
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ポロト湖畔に立つとんがり屋根を目当てに、夏の北海道・白老〈界 ポロト〉を訪ねる

ポロトは「大きな沼」、白老=シラウオイは「アブの多いところ」、ウポポイは「(大勢で)歌うこと」。「誇りある人間」を意味するアイヌの人々の言葉を舌にのせ、音を愛で、意味するところを思いながら初夏の〈界 ポロト〉を訪れた。

新千歳空港から車で40分ほど。〈ウポポイ(民族共生象徴空間)〉の敷地に沿うように大通りから小路へ進むと宿が姿を現す。回廊からエントランスへ、ロビーラウンジへ、ライブラリーへ、客室へ。白樺の列柱(その数570本以上!)に導かれて歩を進める。

界 ポロト
北海道各地から集められた白樺が宿の内外をリズミカルに彩り、空間をゆるやかに区切る。
界 ポロト
ロビーからライブラリーを臨む。眼下には、焚き火を囲むラウンジ越しのポロト湖。
界 ポロト
ライブラリーにはアイヌの文化と旅にまつわる本が並ぶ。コーヒーやお茶のサービスも。
界 ポロト
アイヌの風習から着想された焚き火の上にもとんがり屋根。
界 ポロト
客室を結ぶ廊下は、森の小路や小川のイメージを継承してなだらかに蛇行する。

アイヌ伝統の技を取り入れたとんがり屋根が目印

1泊2日の滞在の主役はなんといっても温泉だ。とんがり屋根を備えた「△湯」は、入り口に、湯上がり処の大きな窓や天窓にも三角形のモチーフが連続し、男湯、女湯の内湯には三角に切り取られた光が差して、ポロト湖へ続く露天風呂へと誘う。

この独特の形状はアイヌの狩り小屋から着想を得て、伝統的な建築技法である三脚構造・ケトゥンニにならったもの。設計を手がけた建築家・中村拓志が特にこだわったとんがり湯小屋は、宿の、そして街のシンボルにもなっている。

もう一つの大浴場「○湯」には、ドーム天井と丸い天窓、半円形の浴槽。洞窟の中を思わせる静けさがなんとも心地よい。

△湯、○湯、そして一部の客室に備えられた露天風呂の湯は、アイヌの人々が「薬の沼」と呼ぶモール温泉をひいたもの。天然植物由来の有機成分を含んでとろりと滑らか、黒々とした褐色のアルカリ性の単純温泉は、北海道遺産にも指定されている。

界 ポロト
〈界 ポロト〉のシンボル、とんがり屋根の湯小屋。
界 ポロト
男湯、女湯にかけられた暖簾は、アイヌ文様研究者・津田命子によるデザイン。
界 ポロト
△湯の湯上がり処。13.5メートルもの丸太が3本組まれて、天からの光を連れてくる。
界 ポロト
△湯には源泉かけ流しのあつ湯、ぬる湯、露天風呂が設けられている。
界 ポロト
ポロト湖に面した△湯の露天風呂はまさにインフィニティ!

北海道の美を目で、舌で、たっぷり味わう

自然休養林に囲まれ、樽前山に見守られるポロト湖畔に立ち、さらに敷地内にまで湖をひきこんで内外を連続させた〈界 ポロト〉。焚き火を囲むラウンジ、ソファが置かれたライブラリー、庭に張り出す桟橋や半個室に仕切られた食事処、42の客室のすべてから、鳥や虫の声を聞き、湖面の漣と広い空を間近に眺めることができる。

夏の日は暮れるのが遅い。色合いを変え暗さを増していく空を眺めながらの夕食は、北海道の食材の豊かさをあらためて実感する会席料理だ。
近隣の輪果窯で作陶された熊が先付の馬鈴薯海宝盛りを運び、アイヌに伝わる丸木舟をかたどった器で宝楽盛りが供される。イクラ、ウニ、ボタンエビ、鮑、キンキ、牛肉などに続いて、メインは毛蟹と帆立貝と鮭の醍醐鍋。魚介と昆布の出汁に白味噌とトマトをあわせたブイヤベース仕立てで、〆のチーズリゾットにデザートまで土地の美味を食べ尽くす。

2日目の朝食には、アイヌの伝統料理である鮭の具だくさん汁から着想された、鮭とじゃがいものすり流し鍋が登場する。自家製豆腐、かすべの西京漬、イクラやたらこなど、地の食材たっぷりの和食膳で、またもや満腹。

界 ポロト 料理
白老町の窯元・輪果窯の熊が夜の会席の始まりを告げる。じゃがいものすり流しにイクラとウニをのせた先付。
界 ポロト 料理
アイヌ民族が交易に使っていた丸木舟を模した器には、ボタンエビ、ホッキ貝、マグロ、松皮カレイ、ナマコポン酢など、季節のお造り、酢の物、八寸が。
界 ポロト 料理
北海道名産の毛蟹と帆立貝、鮭をたっぷり味わう醍醐鍋。ブイヤベース仕立てがオリジナル。
界 ポロト 料理
朝食は和食膳。鮭とじゃがいものすり流し鍋は、アイヌの伝統料理から着想したもの。

12時のチェックアウトまで、△湯と○湯をはしごするもよし、ライブラリーでアイヌ文化の本を読むもよし、アイヌの人々が魔除けとして身につけたイケマを使ったお守りづくりに参加するもよし。
朝、昼、夜、春、夏、秋、冬、時により気候により季節により、さまざまに表情を変えるこの場所で、自らを自然の一部として生きてきたアイヌ民族の文化に触れ、歴史を思う、かけがえのない体験を。

界 ポロト
□の間。炉をイメージしたテーブルや、アイヌ民族の生活をイメージソースにしたアート作品、壁紙やクッションのデザインにもアイヌ文様が取り入れられている。
界 ポロト
42室のうち露天風呂を備えた特別室は3室。部屋でもモール温泉を楽しむことができる。
界 ポロト 料理
至福の湯上がりビール(1,200円)は10月31日までの提供。スルメイカの天ぷらをアテにオリジナルビールをグビリ。
界 ポロト 料理
8月31日までの夏季限定、ご当地かき氷サービス。メロンシロップをたっぷりかけたかき氷を、客室やラウンジ、桟橋など好きな場所で食べることができる。
界 ポロト 料理
アイヌの人々が身につけていた植物=イケマに、周囲に生えるハーブを合わせ、アイヌ文様をうつした紙を折って魔除けを作るご当地楽。

Information

界 ポロト

住所:北海道白老郡白老町若草町1-1018-94|地図
TEL:0570-073-011(界予約センター)
料金:1泊1名19,000円〜(サービス料・税込み、夕朝食付き)
アクセス:JR白老駅より徒歩約10分、新千歳空港より車で約40分
HP:https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/kaiporoto/

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