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連載エッセイ|#ijichimanのぼやき「蕎麦」

  • 2022.7.22
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信頼できるメディアはTVなのかSNSなのか。子どもがやりたいのは野球なのかサッカーなのか。コロナ禍にやるべきは感染対策か経済活動か。日本人は二項対立の構造に持っていくのが好きな印象だけど、どっちかしか選べないならそれぞれが好きな方選べばいいし、そもそもどっちかしか選べないわけじゃないことの多いわけで、それなら両方やればいいと思う。

連載エッセイ|#ijichimanのぼやき

第37回「蕎麦」

信頼できるメディアはTVなのかSNSなのか。子どもがやりたいのは野球なのかサッカーなのか。コロナ禍にやるべきは感染対策か経済活動か。日本人は二項対立の構造に持っていくのが好きな印象だけど、どっちかしか選べないならそれぞれが好きな方選べばいいし、そもそもどっちかしか選べないわけじゃない方が多いわけで、それなら両方やればいいと思う。

Photographs and Text by IJICHI Yasutake

うどん派か蕎麦派か。これもひとつの二項対立。結論的には僕はどっちも好きだけど、取り入れ方は変わってきた気がしている。若い頃、うどんは昼めしに食べてたけど、蕎麦はなんだかお腹にたまらない感じがあって、おやつまたは深夜に小腹空いた時のチョイスだった。ところが最近は、昼めしでお腹いっぱいにすると午後は脳が眠くなるし、体も重たくなるので、腹八分目に留めたいと思い、昼めしでも進んで蕎麦に行くようになっている。

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蕎麦と言えば、詳しくは知らないけど、「砂場」「更科」「藪」が江戸時代から続く御三家。子どもの頃に「かんだやぶそば」に連れてってもらったのを覚えている。当時は“老舗のいい店なんだろうな”くらいの感覚だったけど、その感覚はやっぱり覚えていて、御三家の中でいちばん好きである。立ち食い蕎麦なら、かんだやぶそば近くの「六文そば」も雰囲気好きだし、ニュー新橋ビルのスパイシーなカレーが美味しい「丹波屋」も三十代の時によくお世話になった。若い頃に夜中から朝方に行った目黒駅前にあった「田舎」の閉店はとても残念。大人の蕎麦だと、大学生になって初めて恵比寿「松玄」に行った時、刺身や天ぷらつまんで蕎麦で〆る酒の呑み方に妙に大人の世界を感じたのをよく覚えている。最近では、昼から気軽に呑める銀座の老舗「そば所よし田」で牡蠣そばに魅了された。

何にしても、蕎麦は季節性を感じられるのも良い。牡蠣そばもそうだし、冬なら白子そば、夏になるとインスタを席捲するスダチそば。うどんやラーメンとのいちばんの違いはそこかもしれないし、年を重ねてきたから尚のこと四季や風情を感じられる蕎麦に傾倒しつつあるのかもしれない。

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1.かんだやぶそば:東京都千代田区神田淡路町2-10

創業は明治13年(1880年)。近くの「まつや」と共に神田の歴史を紡いできた老舗蕎麦屋。冬は牡蠣そば、春は若竹そば、秋は松茸そば、聞くだけで涎が出てきそうな旬の蕎麦たちの中で、夏に登場するのがじゅんさいそば。これほど季節を感じられる蕎麦ありますかね。そもそも僕は幼稚園の頃からじゅんさいのトゥルトゥルが好きだったので、じゅんさいそばと聞いたら飛びつかざるをえない。

僕の中では、スダチ蕎麦よりもこっちの方が夏って感じで好きです。帰り際の「ありがとう存じます~」を聞くと、ほっこりする。

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2.よし房凛:東京都文京区根津2丁目36-1 コーポ吉田 1F

根津のよし房凛は、ここ最近食べた蕎麦では一番インパクトがあった。根津はもともと蕎麦の有名人気店が多い。数年前に根津に行った時それを思い出して、他にも「蕎心」「鷹匠」など行ってみたい店があったけど、その時居た場所から一番近いという理由だけで選んだのが、「よし房凛」だった。その時食べたのは牡蠣そば。ぶりんぶりんの大きな牡蠣がたっぷり入っていて、ツユには牡蠣のダシがいい具合に乗っている。主張がほどよく、いやらしさはない。細打ちで端正に揃えられた蕎麦は、風味が豊か。何よりコシが良くて、ちょっとザラツキもあって、味が深い。うっとりする蕎麦である。

ここは、蕎麦の刺身や蕎麦味噌の春巻き、揚げ蕎麦搔きなど、職人技で蕎麦を存分に使い倒してくるメニューが絶品らしいから、次回は酒が呑める体制をしっかり整えて、夜に行ってみたい。とにかく必ずや再訪したい店なのだけど、最近はいつ行ってもなかなかの行列を成していると聞いている。

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3.板蕎麦香り家:東京都渋谷区恵比寿4丁目3-10 中出センチュリーパーク 1F

うどん山長の系列店なので、お店に特段の歴史性や文化性はない。けれど、個人的に大学の頃夜中によく行った店で思い入れが深い。ネットを見ると今は22:00とか23:00あたりに閉店するみたいだけど、当時は水商売の人たちが店をはねた後(仕事終えた後)に食べに行く店と教えてもらって、おーそれは信頼度高いと言って、24:00~27:00によく通ったものだった。

初めてここの蕎麦を見た時、蕎麦としては未曾有の太さだった。元々麺は蕎麦に限らず細麺が好きなので好みに合うかちょっと心配だったけど、太い分もっちりしていて香りも濃く、それでいて喉ごしが良くてスルッと入っていく。今訪れても蕎麦屋のわりにZ世代が多くて、今も尚繁盛しているのが、個人的には嬉しい。

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4.よりみち:東京都目黒区南3丁目8-8

いつからあるのかわからないけど、環七沿い、中原街道と目黒通りのちょうど中間くらいの南の交差点にずっと昔からある、立ち食い蕎麦の名店。開店は朝6:00だそうで、7:00頃に目の前を通ると、環七沿いに必ずトラックやバン、タクシーが数台停まっている。「タクシー運転手がおすすめするラーメン屋」は一時期美味しいラーメンを担保する枕詞に使われてたけど、まさしくドライバーをトリコにし続けているわけで、信頼度は高い。よりみちは何よりその佇まいがいい。

TVの野球中継を見ながらいただく蕎麦は絶品。僕が立ち食い蕎麦で頼むのは、必ず春菊天そばをベースに+αをトッピングする。ツユは立ち食いらしく濃いめの見た目だけど、意外にもあっさりしつつ、ダシはきいていて甘め。これぞファストフードとして生まれた蕎麦の原点。楊枝を加えて、暖簾をくぐって、店を出た後も立ちのぼる蕎麦とダシの香りが余韻を楽しませてくれる。

ファストフードとして昼にもおやつにも美味しくヘルシーに楽しめるし、つまみながら呑んだ〆にも楽しめて、散々呑んで食ってした後の夜中の〆にも良い。なんなら、朝いちばんの食事にだって重たくない。こんな万能な食事はあるんだろうか。老若男女問わず親しまれる蕎麦は、年を重ねるほど、幅の広さと魅力の深さと神髄を知って、どんどんトリコにされるのである。

伊地知泰威|IJICHI Yasutake
1982年東京生まれ。慶應義塾大学在学中から、イベント会社にてビッグメゾンのレセプションやパーティの企画制作に携わる。PR会社に転籍後はプランナーとして従事し、30歳を機に退職。中学から20年来の友人である代表と日本初のコールドプレスジュース専門店「サンシャインジュース」の立ち上げに参画し、2020年9月まで取締役副社長を務める。現在は、幅広い業界におけるクライアントの企業コミュニケーションやブランディングをサポートしながら、街探訪を続けている。好きな食べ物はふぐ、すっぽん。好きなスポーツは野球、競馬。好きな場所は純喫茶、大衆酒場。
Instagram:ijichiman

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