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2022年上半期、“マイベストエンタメ”を教えて!TVディレクター 原田和実の3選

  • 2022.7.9

映画や音楽、本はもちろん、配信動画や舞台、TVにラジオ…。1日が24時間じゃ足りないほど、コンテンツが溢れている現代。目利きの人たちが「面白い!」と感じた作品はどんなものなのか。編集部が気になるあの人に、2022年上半期に触れて良かった「マイベストエンタメコンテンツ」を教えてもらいました。SNSを中心に反響を呼んだ『ここにタイトルを入力』を手がけたTVディレクター・原田和実の3選は?

【1】
ARuFa、恐山の匿名ラジオ/#307
『あれ!?もしかしてARuFa、こっそりピカチュウ飼ってない?』

顔を隠したARuFaと恐山の二人が「ない話」を卓越した妄想力と驚異的なユーモアで「ちょっとありそうな話」くらいにまで解像度を上げて話す、究極の悪ふざけトーク。毎週欠かさずに聞いていますが、2022年上半期個人的ベスト回が、この#307。「ポケモンを飼っていたら」という一度は想像する夢の話を、現実世界に落とし込みすぎてしまった2人の、共感度が高すぎるあるあるの数々は圧巻。音声のみの掛け合いで「ピカチュウを飼ってないか友達に探りを入れる」というコントパッケージに包んでいるので、いちいち想像力がかき立てられてしまいます。確かにバリヤードには敬語使っちゃうな…。

【2】
シベリア少女鉄道の演劇
『どうやらこれ、恋が始まっている』

僕がものづくりを始めたキッカケになった劇団(のようで劇団っぽくない団体)の、1年半ぶりの新作公演。客として何を差し置いても観に行きたい気持ちと、制作者としてあまりの面白さに嘆いてしまうので観に行きたくない気持ち、その間で揺れ動きながら毎回劇場に向かうのですが、今回もアホみたいに笑った後には清々しいほどの絶望が待っていました。とんでもない力技で舞台の見せ方を途中でひっくり返してしまうギミックの巧みさと、来場者特典すらオチになっている観劇体験を全て笑いに振り切った設計は「何を見せられているんだ」というエンタメの極地だと思います。

【3】
魚豊の漫画
『チ。―地球の運動について―』(全8巻)

15世紀、天動説が世の中の常識だった時代。天動説・地動説をめぐって振り回される人間達の、ある種「真理」が主人公とも言える群像劇。知的好奇心に逆らえない人間の美しさと儚さを、ありったけの表現力と熱量で描き切っていて全身が震えました。死を前にしても感動を繋げていくことを選ぶ描写は、世の中に認められるかわからない漠然とした不安を抱えながらも、新しいものを生み出さずにはいられない表現者の根本すら肯定してくれているようにも感じられ、心が救われました。ちょっとだけ死ぬのが怖くなくなった、僕のバイブルです。

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